第1章 御岩神社と御岩山の基礎知識

御岩神社のことを調べていたら、「呼ばれた人しかたどり着けない」「宇宙飛行士が見た光の柱」「ブレスレットの効果がすごい」「光る石が眠る5億年前の地層」──そんな言葉が次々と目に入ってきて、ますます気になってきた人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「御岩神社に行ってみたい」「呼ばれている気がする」と感じ始めた人に向けて、ブレスレットの効果や光の柱の話、不思議体験のとらえ方、そして実際の危険性や安全な歩き方まで、できるだけ冷静かつ分かりやすくまとめました。スピリチュアルな話を頭ごなしに否定するのでもなく、何でもかんでも信じ込むのでもなく、「物語」と「現実」の両方を知ったうえで、自分なりの御岩神社との付き合い方を見つけていきましょう。
1-1 御岩神社はどこにある?山そのものが聖域という特別さ
御岩神社は、茨城県日立市入四間町に鎮座する神社です。住所で言うと「茨城県日立市入四間町752」。日立駅から山側へ車でおよそ20〜30分ほど走った先、街の喧騒から少し離れた静かな山あいにあります。
ここが特別なのは、「境内=一つの山」だという点です。一般的な神社は、社殿周辺が信仰の場になっていることが多いですが、御岩神社の場合は、背後にそびえる御岩山そのものが古くから聖なる領域とされてきました。鳥居をくぐって参道を進むと、空気がふっと冷たく変わるように感じる人も少なくありません。それは、木々が密集して日差しがさえぎられ、沢の水音や鳥の声だけが響く、山の環境そのものがつくり出す雰囲気でもあります。
公式サイトや日立市の案内では、御岩山は奈良時代に編纂された『常陸国風土記』に記された「賀毘礼の高峰(かびれのたかみね)」に比定され、縄文時代の祭祀遺跡も見つかっていると説明されています。つまり、この山は千年以上にわたって「特別な場所」として見られてきたわけです。
鳥居をくぐってから拝殿までは、普通の速さで歩いて10分弱。そこから先、山道をさらに登ると中腹のかびれ神宮、さらにその上の御岩山山頂へと続きます。舗装路ではなく根や岩が露出した山道なので、観光地というより「山の中にある信仰の場」というイメージを持っておくと、現地でギャップが少ないでしょう。
1-2 188柱もの神と仏が集う「日本でも珍しい場所」
御岩神社の大きな特徴が、「とにかく祀られている存在の数が多い」ことです。公式の紹介でも、本殿に国之常立神(くにのとこたちのかみ)・大国主神・伊邪那岐神・伊邪那美神などが祀られており、御岩山全体では188柱もの神々が鎮まるとされています。
さらに、御岩神社は神道と仏教が一体となっていた時代の名残を今も色濃く残しています。境内には阿弥陀如来像などの仏像や「南無阿弥陀仏」と刻まれた石碑があり、「神仏習合」という言葉を説明するときの好例としてもよく紹介されます。
つまり、「神様だけ」「仏様だけ」という分け方ではなく、日本人が長い時間をかけて積み重ねてきた信仰のかたちが、そのまま山全体に残っている場所だと言えます。ある人は「一度でたくさんの神様に挨拶できる場所」と表現し、また別の人は「宗教を超えて自分と向き合える場所」と感じています。
この「たくさんの神や仏が共存している」という雰囲気が、御岩神社を「何となく他とは違う」と感じさせる正体の一つでもあります。境内を歩いていると、鳥居・仏像・古い石碑・山の磐座(いわくら)が次々と現れますが、それぞれが時間の層を重ねているようで、歴史の厚みを素直に感じられるはずです。
1-3 パワースポット・ゼロ磁場と言われる理由を現実目線で整理する
御岩神社を検索すると、「日本屈指のパワースポット」「ゼロ磁場」「波動が強い」といった言葉が山ほど出てきます。実際、参拝した人の中には「空気がまったく違う」「頭や身体がビリビリする感じがした」といった感想を書く人も多く、それがさらに“パワースポット感”を高めています。
一方で、「ゼロ磁場」や「波動」という言葉は、科学的に厳密な意味で使われているわけではありません。御岩山周辺で、特別な磁場の異常や放射線が観測されている、という公的なデータは今のところ公開されていません。あくまで「ここに来ると落ち着く」「なぜかスッキリする」といった人の主観的な体験を、わかりやすく表現するための言葉として使われていると考える方が自然です。
ただし、「なぜそう感じやすいか」という理由はある程度説明できます。御岩山は、約5億年前のカンブリア紀の地層からなる「日立変成岩類」が露出している地域で、日本でも最も古いクラスの地層が広がるエリアの一つです。さらに、標高の割に急な斜面や露出した岩場が多く、背の高い杉や広葉樹が密集した森の中を通ることになります。
森の中を歩くと血圧が下がったり、ストレスホルモンが減ったりする「森林浴効果」があることは、国内外の研究で知られています。静かな山の空気、5億年級の岩に囲まれた地形、歴史ある神社の雰囲気。これらが組み合わさることで、「パワースポット」という言葉でまとめたくなるような体験が生まれているのだと考えるとわかりやすいでしょう。
1-4 宇宙飛行士と「光の柱」──最新研究が示す“都市伝説”としての位置づけ
御岩神社について調べていると、必ずと言っていいほど出てくるのが「宇宙から見えた光の柱」の話です。よく語られるストーリーを、かんたんにまとめると次のようになります。
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アポロ14号の宇宙飛行士エドガー・ミッチェル氏が、宇宙から地球を見たとき、一本の光の柱が立っているのを見た
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帰還後、その場所を調べると、ちょうど御岩山のあたりだった
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日本人宇宙飛行士(向井千秋さんなど)も、同じような光を見た
この話は、スピリチュアル系や観光系のブログで繰り返し取り上げられていますが、宇宙飛行士本人の公式な記録やNASAの資料など、一次資料は確認されていません。
そして2025年、日本地質学会の学術大会で「紫外線発光する紅柱石を含む御岩山の変成流紋岩と、御岩山の文化地質学」をテーマにした研究発表が行われました。そこでは、この「光の柱」の話が「御岩山都市伝説」として扱われ、次のようなことが指摘されています。
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1991年2月にエドガー・ミッチェル氏が御岩神社を訪れ、当時の宮司と懇談している
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その出来事をきっかけに、「宇宙から御岩山が光って見えた」という話が膨らみ、都市伝説として広がった可能性が高い
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どのような種類の光を見たとされるのかは、関係者の多くが既に亡くなっているため検証できない
つまり、研究者の立場から見ると、「宇宙から見えた光の柱」は、“事実”ではなく「面白い物語」として位置づけられているわけです。
一方で、この研究では、御岩山の岩石に含まれる紅柱石が紫外線を当てると強く光ることが詳しく報告されています。粗粒〜細粒の紅柱石を多量に含む岩石が山頂部に分布し、紫外線やX線を当てると強い蛍光を発することが確認され、「このように強く発光する紅柱石を多量に含む岩石は、日本では他に報告例がない」とされています。
つまり、
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「宇宙から光の柱が見えた」という話は、今のところ都市伝説として扱うのが妥当
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ただし、御岩山の岩石に“光る成分”が含まれていること自体は、科学的に裏付けられつつある
という、物語と現実がちょうど重なり合う地点に、この神社の魅力があるといえます。
1-5 御岩神社で語られる不思議体験のパターンを冷静に眺める
御岩神社や御岩山の体験談を読んでいると、「不思議なことが起きた」という話がたくさん出てきます。内容は人によってさまざまですが、よく見られるパターンを整理すると、だいたい次のようなものです。
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写真を撮ったら光の筋や球体のようなものが写り込んだ
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参道に入った瞬間、耳鳴りがしたり、頭が重くなったりした
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山を下りたあと、恋愛や仕事で良い変化があった
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ずっと悩んでいたことの答えをふと思いついた
カメラに写り込む光の筋は、「レンズフレア」「反射」「ホコリによる光の散乱」などで説明できるものも多く、御岩神社に限らず、森や逆光の場所での撮影ではよく起こります。
また、耳鳴りや頭の重さは、標高差や急な登りによる血圧の変化、前日までの疲れ、寝不足などの影響も受けやすい症状です。強い緊張や「ここは特別な場所だ」という思い込みによって、体の感覚が過敏になっている可能性もあります。
一方で、「ここに来てから気持ちが固まった」「大きな決断ができた」という体験は、その人にとって本当に大事な時間だったと言えます。環境が変わると、ふだんとは違う視点が持てることがあります。静かな山の中でスマホから離れ、ゆっくり歩きながら自分のことを考える。こうした状況自体が、決断を後押しする“きっかけ”になっていると考えれば、特別な力を信じるかどうかとは別に、とても意味のある時間です。
大切なのは、「不思議体験=すべて超常現象」と決めつけるのでもなく、「全部気のせい」と切り捨てるのでもなく、「そう感じた自分」に丁寧につき合ってみることです。御岩神社は、そのための舞台として、とてもよくできている場所だと言えるでしょう。
第2章 「呼ばれる感覚」はなぜ起こる?心のしくみと付き合い方
2-1 なぜか御岩神社の名前ばかり目に入る理由
「最近やたらと御岩神社の話を聞く」「SNSを見ていると御岩神社の投稿ばかり流れてくる」。こんな状態になると、「もしかして呼ばれているのでは?」と感じる人も多いはずです。
ここには、心理学でよく説明される「カラーバス効果」と「アルゴリズム」の両方が関係しています。カラーバス効果とは、「自分が意識を向けたものが、やたらと目に入りやすくなる」という現象です。たとえば、「青い車が気になる」と思った瞬間から、街中で青い車ばかり見つかるのと同じ仕組みです。
一方、SNSや検索エンジンは、あなたが見た記事・クリックしたページ・滞在時間などをもとに、「この人はこういうテーマに興味がある」と判断し、関連する情報を優先的に表示します。御岩神社について少し調べただけでも、「この人は御岩神社やパワースポットに関心がある」と判断され、似た情報がどんどん表示されるようになります。
つまり、
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少し興味を持ち始める
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それに関連した情報が目に入りやすくなる(カラーバス効果)
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SNSの仕組みも、その情報をさらに増幅する
この二つが同時に起きることで、「呼ばれている感覚」が強まっていきます。
だからといって、「全部ただの気のせい」と片付ける必要もありません。大切なのは、「なぜ今、自分は御岩神社に目が向いているのか?」という“自分の気持ち”に目を向けることです。仕事のこと、家族のこと、将来のこと。何か行き詰まりや迷いを感じているとき、人は自然と「答えを探せそうな場所」にアンテナを向け始めます。その一つとして御岩神社が浮かび上がっている、という見方もできるのです。
2-2 スピリチュアルな「呼ばれる」と心理学的な説明のちがい
スピリチュアルな世界では、「呼ばれた神社に行くと良い」「本当に縁がある場所には、自然と導かれる」といった表現がよく使われます。実際、御岩神社についても「計画していなかったのに急に行くことになった」「何度も予定が変わった末に、ようやく参拝できた」といった体験談があります。
心理学的に見ると、こうした体験の多くは次のように説明できます。
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自分の中に「行きたい理由」がぼんやりある
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それをはっきり自覚していなくても、行けそうなきっかけを無意識に選び取りやすくなる
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予定がうまくかみ合ったとき、「呼ばれた」と感じる
「呼ばれる」と感じること自体は悪いことではなく、「自分の気持ちに素直になれているサイン」とも言えます。ただし、注意したいのは、その感覚にすべてを委ねてしまうことです。
たとえば、
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体調が悪いのに、「呼ばれているから行かなきゃ」と無理をする
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金銭的に厳しいのに、借金をしてまで参拝旅行をする
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家族関係や仕事とのバランスを崩してまで、神社巡りを優先する
このようになると、「呼ばれている」という感覚が、自分の生活を苦しくする方向に働いてしまいます。「呼ばれた気がする」ことと、「今、本当に行くのが自分にとって良いかどうか」は、分けて考える方が安全です。
2-3 サインに振り回されないための考え方
「車のナンバーが『381(サンパイ)』だった」「御岩神社のポスターを一日に何度も見た」「テレビで突然日立市の特集が組まれていた」。こうした出来事を“サイン”と受け取るかどうかは、その人の自由です。ただし、サイン探しに夢中になりすぎると、日常生活の判断が少しずつ揺らぎ始めます。
このとき役に立つのが、「確証バイアス」という考え方です。確証バイアスとは、「自分の信じたいことを裏付ける情報ばかり集めてしまう心のクセ」のこと。御岩神社に行きたいと思っているときは、御岩神社にまつわるサインばかりが目に入りやすくなりますが、その裏で「今は行かない方が良いかもしれない」情報(忙しさ、体力、予算など)は見えにくくなってしまいます。
サインに振り回されないためには、次のような考え方が役に立ちます。
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サインは「背中を軽く押してくれるもの」程度に受け止める
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最終的な決定は、「体調・お金・時間・家族とのバランス」を冷静に見たうえで行う
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行くことだけでなく、「今回はやめておく」「時期をずらす」という選択も尊重する
こうしておくと、「呼ばれたから絶対に行かねば」と追い詰められるのではなく、「呼ばれている気がするから、行ける条件を整えてみよう」という前向きな行動につなげやすくなります。
2-4 実際に行く前にチェックしたい現実的なポイント
「呼ばれている気がする」と感じたときこそ、現実的な準備が大切です。御岩神社と御岩山は、「ちょっとお散歩」のノリで行くにはややハードな面もあります。公式サイトや現地案内で示されている基本的なルールを、まず押さえておきましょう。
主なポイントを表にまとめると、次の通りです。
| 項目 | 目安・注意点 |
|---|---|
| 参拝可能時間 | おおむね 6:00〜17:00 前後(時期で変動の可能性あり) |
| 御岩山登拝の入山時間 | 6:00〜15:00 頃まで、17:00 までに下山するよう案内されていることが多い |
| 拝殿から御岩山山頂まで | 片道およそ60分前後(個人差あり) |
| 往復の所要時間 | 1.5〜2.5時間程度を想定、休憩時間を含めて余裕を持つ |
| 山中での飲食 | 神域のため食事は禁止。水分や飴程度の補給が目安 |
| 天候による規制 | 大雨・積雪・凍結時には入山禁止や制限がかかることがある |
加えて、次の点も確認しておくと安心です。
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自分の体力で、標高差と距離に無理がないか
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滑りにくい靴やレインウェアなど、最低限の装備が整っているか
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一緒に行く人はいるか、単独行なら無理をしない計画になっているか
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日立市までの交通費と、現地での移動費を無理なく出せるか
こうした現実的な条件をクリアしたうえで、「行きたい」という気持ちが残っているなら、そのとき初めて「呼ばれているのかもしれない」と受け取り直してみても遅くはありません。
2-5 ノートに書き出すと「呼ばれた理由」が見えやすくなる
もし「どうしても御岩神社が気になる」「呼ばれている気がして落ち着かない」という状態になったら、一度ノートを開いて、次のようなことを書き出してみてください。
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いつ頃から御岩神社のことを意識し始めたか
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その前後で、自分の生活や気持ちにどんな変化があったか
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御岩神社に行ったら、どんなことをお願いしたいのか
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逆に、「行くことで解決しないこと」は何か
書き出してみると、「実は仕事のことで行き詰まっていた」「家族との関係をどうしたらいいか悩んでいた」など、御岩神社そのものではなく、自分自身の課題が浮かび上がってくることがあります。
そのうえで、「御岩神社に行くこと」が、本当にその課題の役に立ちそうかどうかを考えてみると良いでしょう。たとえば、
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気持ちを切り替えるきっかけが欲しい → 行く意味があるかもしれない
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具体的な問題の解決策が欲しい → まずは身近な人や専門家への相談が先かもしれない
こうやって整理しておくと、御岩神社に行ったときも、「何となくすごい場所に来た」ではなく、「自分のテーマを持って向き合う時間」に変わっていきます。その結果として、「呼ばれた意味」が、自分の中で自然と腑に落ちることも多いはずです。
第3章 御岩神社のブレスレット効果と「光る石」を科学と文化から見る
3-1 御岩神社のブレスレットの今どき事情(種類・値段・授与方法)
御岩神社の授与品の中でも、特に人気が高いのが天然石のブレスレットです。一般に「開運水晶守」などと呼ばれ、水晶をベースにアメジスト・ローズクォーツ・タイガーアイ・翡翠といった石が組み合わされた、4種類のタイプが頒布されています。
サイズはM・Lの2種類が用意されており、手首の太さに合わせて選べます。2024〜2025年にかけての複数の現地レポートでは、「1本2,000円」という初穂料が紹介されており、現在はこの価格帯が主流になっているようです。一方で、「1,600円」としている少し前の記事も残っており、授与品の内容や価格は時期によって変わることがあります。そのため、実際に参拝したときは、社務所の案内を確認するのが確実です。
ここで押さえておきたい重要なポイントが一つあります。御岩神社のお守りやブレスレットは、公式オンラインショップや通販サイトでは授与されていません。メルカリなどのフリマアプリや、ネットオークションには御岩神社のブレスレットが多数出品されていますが、これらはすべて二次流通品、つまり参拝者が持ち帰ったものを転売しているだけです。
神社としては、基本的に「現地で参拝し、その場で授与を受ける」ことを前提としています。どうしても行けない事情がない限り、できるだけ直接足を運び、神社の雰囲気を体感したうえで選ぶことをおすすめします。
3-2 天然石それぞれの意味と、どこまで信じていいのか
御岩神社のブレスレットで使われる天然石には、それぞれ一般的に次のような意味が重ねられています。
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水晶:浄化・調和・全体運
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アメジスト:癒やし・精神安定・直感力
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ローズクォーツ:恋愛運・自己肯定感・人間関係の改善
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タイガーアイ:金運・仕事運・決断力
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翡翠:成功・繁栄・心身のバランス・長寿
これらは、御岩神社特有の意味というより、パワーストーン全般で広く共有されている解釈です。「石に本当にそうした効能があるのか」と聞かれれば、科学的には「証明されていない」と答えるほかありません。
しかし、意味がまったくの空想かというと、そうとも言い切れません。たとえば、淡いピンク色のローズクォーツは、見ているだけでやわらかい気持ちになりやすく、「人にやさしくなりたい」「自分を責めすぎないようにしたい」という願いと結びつきやすい色です。深い緑色の翡翠は、古代から装飾品や護符として使われてきた歴史があり、「身を守る石」というイメージを持とうとする人も多くなります。
つまり、天然石の意味は「心の持ち方とセット」で働く部分が大きいと考えると納得しやすいでしょう。大切なのは、「石がすべてをしてくれる」と依存することではなく、「この石を身につける自分は、こうありたい」と決めるきっかけとして使うことです。
3-3 「ブレスレット効果」を感じやすい人の行動パターン
「御岩神社のブレスレットをつけてから、流れが変わった気がする」という声は少なくありません。恋愛がうまくいった、転職先が決まった、人間関係が良くなったなど、その内容もさまざまです。
ここでポイントになるのが、「プラセボ効果」と「行動の変化」です。プラセボ効果とは、「効くと信じているものを受け取ることで、本当に体調や気分が良くなる」現象のこと。薬の研究でもよく知られている仕組みです。
ブレスレットについても、
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「守られている気がする」
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「自分はもう一歩踏み出せるはずだ」
と感じることで、実際の行動が変わっていくことがあります。たとえば、
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今までなら諦めていたところで、もう一度応募してみる
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人に話しかけるとき、少しだけ自信を持って声をかけられる
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「どうせダメだろう」と思っていた場面で、「やってみよう」と考え直す
こうした小さな行動の積み重ねが、結果として「ブレスレット効果」として感じられることも多いのです。
決してこれは、「全部思い込みだから意味がない」という話ではありません。むしろ、「良い思い込み」をうまく使うことで、自分の行動を前向きにしていける、という視点が大切です。そのうえで、
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体調不良やメンタルの不調が長く続く場合は、必ず医療機関や専門家に相談する
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ブレスレットだけに頼るのではなく、自分の生活習慣や行動も合わせて見直す
といったバランスを取ることが、「効果」とうまく付き合うコツになります。
3-4 御岩山の「光る石」と5億年前の地層──地質学が教えてくれること
御岩神社のもう一つのキーワードが、「光る石」です。実際に御岩山周辺の岩石を調べると、紫外線を当てたときに強く光る紅柱石(こうちゅうせき)を多く含む変成流紋岩が見つかっています。これは、先ほど紹介した日本地質学会の研究でも詳しく報告されています。
ポイントを整理すると、次のようになります。
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御岩山の岩峰は、カンブリア紀の日立火山深成複合岩体に属する変成流紋岩でできている
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その中に、粗粒〜細粒の紅柱石を多量に含む岩石が広く分布している
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一部の紅柱石は、紫外線やX線を当てると強く発光する
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これほど強く発光する紅柱石を多量に含む岩石は、日本では他に報告例がない
紅柱石自体は、宝石として用いられることもある鉱物ですが、通常はそれほど強く光るわけではありません。しかし御岩山の場合、特定の条件で非常に明るい蛍光を示すことがわかってきました。
ここで注意したいのは、「紫外線などを当てたときに光る」という点です。山そのものが常に光っているわけではなく、自然の状態では肉眼で「光っている」と感じることはありません。とはいえ、「この山の中には、特別な性質を持つ鉱物がたくさん眠っている」と知るだけでも、御岩神社の印象は少し変わるのではないでしょうか。
5億年前という想像もつかないほど古い時代のマグマ活動の名残が、今も御岩山の岩に刻まれています。その結果として、「光る石」や「光の柱」の物語が生まれ、人々の想像力を刺激していると考えると、科学と神話がうまく重なり合っているように感じられます。
3-5 ブレスレットや石とのほどよい距離感と付き合い方
御岩神社のブレスレットや、御岩山の「光る石」の話を知ると、「全部欲しい」「全部体験したい」と思うかもしれません。ただ、石との付き合い方で大切なのは、「ほどよい距離感」です。
まず、ブレスレットを身につけるときは、次のような点を意識してみてください。
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毎朝つけるときに、「今日はこんな一日にしたい」と一言心の中で決める
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外したあとは、ポケットではなく専用の小さな袋や箱に入れて休ませる
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壊れたり切れたりしたときは、「守ってくれてありがとう」と一度区切りをつける
また、ブレスレットや石に頼りすぎてしまっていると感じたら、「これはあくまで“背中を押してくれる道具”で、主役は自分自身だ」と意識し直してみましょう。特に、
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ブレスレットがないと不安で外出できない
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良くないことがあると、すぐ石のせいにしてしまう
といった状態になっていたら、一度距離をとるサインかもしれません。
役目を終えたと感じたブレスレットは、御岩神社や近くの神社・お寺で感謝を伝えて納めるか、自宅で白い紙に包んで土に還すなどして、「手放す儀式」をしてもよいでしょう。形式に正解はありませんが、「感謝して手放す」という気持ちが大事です。
第4章 御岩神社は危険?怖い?と言われる理由と安全対策
4-1 御岩山の標高・登拝時間を整理する(まずは事実関係)
御岩山の標高については、資料によって「530m」「492m」「540m」など複数の数字が見られます。登山や観光の案内では、現在は「標高約530m」という表記が主流になっていますが、一部の地図や地質資料では別の数値が使われていることもあります。
これは、どこを基準点とするか、どの測量データを使うかによって標高が微妙に変わるためです。私たちが参拝や登山の計画を立てるうえでは、「おおよそ530m前後の低山だが、コースの勾配は意外ときつい」とイメージしておくとよいでしょう。
拝殿から御岩山山頂までは、一般的に片道およそ60分前後。往復では1.5〜2.5時間を見ておくと安心です。ただし、これはあくまで目安であり、歩き慣れていない人や写真を撮りながらゆっくり歩く人は、もう少し余裕を持った方が安全です。
また、御岩神社では参拝可能時間と登拝可能時間が定められており、多くの場合、
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参拝:おおむね 6:00〜17:00 頃
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御岩山登拝:6:00〜15:00 までに入山し、17:00 までに下山
といった案内になっています(時期や状況により変更の可能性あり)。
これらの数字を見てわかるように、御岩山は「高山」ではありませんが、「なんとなくぶらり」と軽装で歩くには少し厳しい山です。標高だけで「たいしたことない」と判断せず、コースタイムと自分の体力を冷静に見て計画を立てることが大切です。
4-2 「祟り神」の伝承と立速日男命の本当の物語
御岩山が「怖い場所」「祟りの神がいる」と言われる背景には、『常陸国風土記』に登場する立速日男命(たちはやひおのみこと/立速男命)の物語があります。
簡単にまとめると、次のような話です。
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立速日男命は、もともと天から降り、松沢という場所の松の木の枝の上に鎮座していた
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この神は祟りが非常に強く、木に向かって大小便をする者がいると、その人や周囲の人々を病気や災いで苦しめた
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里の人々は困り果て、朝廷に事情を訴えた
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そこで、片岡大連という人物が派遣され、神を丁重に祀りながら「ここは人の暮らしに近く、不浄が多い場所です。どうか高い山の清らかな場所にお移りください」と願った
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立速日男命はこの願いを受け入れ、「賀毘礼の高峰(御岩山の有力候補地)」に移った
この物語からわかるのは、「理由もなく人を祟る恐ろしい神」ではなく、「人間側の振る舞いが不敬・不浄であったために、厳しく反応する神」として描かれている点です。
現代風に言えば、「ルールや節度を守らないと、きちんと叱られる存在」とも言えます。御岩神社や御岩山で「祟り」や「怖い」という言葉が使われるとき、その多くは、
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立ち入り禁止の場所に入る
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神聖な岩や石に登る・座る・荒らす
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山を遊び場のように扱って大声を出す
といった行為への警告を込めた表現でもあります。「恐ろしいから近づくな」というよりも、「敬意を持って接すれば、むしろ頼もしい存在」と受け止めると、伝承の本来の意味に近づくはずです。
4-3 滑落・遭難・体調不良──実際に起こりうるリスク
御岩山について「危険だ」「怖い」という声が出る、もう一つの理由は、実際に滑落や遭難の事例が報告されていることです。山頂付近のやせ尾根や岩場では、写真撮影に夢中になって足元への注意が疎かになり、転倒・滑落につながったとされるケースもあります。
また、雨のあとや冬季には地面がぬかるんだり凍結したりし、滑りやすさが一気に増します。最近では、SNS映えを狙って危険な場所に立ち入った結果、救急ヘリが出動するような遭難事例も取り上げられ、「御岩神社=危険」というイメージだけが切り取られることもあります。
体調面では、
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急な登りで心拍数が上がる
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樹林帯の中で湿度が高く、汗が冷える
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緊張や期待で呼吸が浅くなる
といった条件が重なり、頭痛やめまい、強い疲労感を覚える人もいます。こうした症状は、スピリチュアルな意味を持たせることもできますが、同時に「登山でよく見られる体調変化」としても説明できるものです。
つまり、「御岩神社は危険な場所だから怖い」のではなく、
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自然の山である以上、装備や準備が足りなければ危険が高まる
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マナーを守らない行動が、事故や不快な体験につながりやすい
という、ごく現実的な理由があると考えた方が、対策も立てやすくなります。
4-4 安全に御岩山を歩くための装備とマナー
御岩山を安全に歩くために、最低限意識しておきたい装備とマナーを整理しておきましょう。
装備の基本としては、
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靴底のしっかりしたトレッキングシューズ(スニーカーでも溝が深く滑りにくいもの)
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動きやすく汗を吸いやすい服装(ジーンズより速乾性のある登山向きのパンツが望ましい)
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レインウェア(雨具)は必ず携行
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小さめのリュックに、飲み物・タオル・簡単な応急用品を入れる
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杖(トレッキングポール)を借りられる場合は積極的に利用する
といったところが基本になります。
マナー面では、
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指定ルートから外れない
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ロープが張られている場所や「立ち入り禁止」の表示がある場所には入らない
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神域とされる岩や石に、必要以上に触れたり座ったりしない
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騒がず、他の参拝者や登山者の迷惑にならないように歩く
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ごみは必ず持ち帰る
といった、ごく基本的なルールを守ることが大切です。
写真を撮るときも、「落ちたら命に関わる場所」「人の通行を妨げる場所」から撮らないことを徹底しましょう。どうしても撮りたい構図が危険な位置からしか得られないなら、その写真はあきらめるのが賢明です。
4-5 怖さをあおる情報との付き合い方
インターネット上には、「行ったら大変な目にあった」「祟られた」といった強い言葉で御岩神社を語る記事もあります。こうした情報は、読んでいるうちに不安をあおられ、「行かない方がいいのでは」と感じさせることもあります。
ここで意識したいのは、「強い言葉ほど、ネットでは目立ちやすい」ということです。実際には、「静かに参拝して、何事もなく帰ってきた」という人の方が圧倒的に多いのですが、そうした体験はわざわざ記事になりづらいものです。
怖さをあおる情報に出会ったときは、
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その体験が、どんな状況(天候・装備・行動)で起きたのか
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体調や心の状態がどうだったのか
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「危険な行動」はしていなかったか
といった点を、冷静に読み解いてみてください。多くの場合、「雨の日に無理をした」「軽装で入山した」「立ち入り禁止の場所に足を踏み入れた」といった要因が重なっていることがわかります。
もちろん、「何となく嫌な予感がする」「今は行く気になれない」という直感を無視する必要はありません。それもまた大切なサインです。ただし、「怖い記事を読んだから、恐ろしくなった」という状態と、「自分の感覚として、今は違うと感じる」という状態は、分けて考えてあげると良いでしょう。
第5章 御岩神社を「人生の節目の場所」として味わう
5-1 初めて行く人向け「一日モデルプラン」の考え方
御岩神社は、日帰りでも十分に訪れることができますが、時間配分を間違えると慌ただしくなってしまいます。ここでは、東京方面から公共交通機関とタクシーを利用するケースを想定しながら、「考え方の例」を紹介します。
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朝〜午前:早めに出発し、午前中のうちに御岩神社へ到着
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昼前後:拝殿までをゆっくり参拝(斎神社や三本杉などもあわせて)
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午後:体力と天候に問題がなければ、かびれ神宮まで登拝
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夕方前:余裕を持って下山し、授与所でお守りやブレスレットを選ぶ
初めての参拝で、いきなり御岩山山頂まで無理をして登る必要はありません。かびれ神宮まででも十分に山の雰囲気を味わえますし、その時点で体力や時間に余裕があれば、山頂を目指すかどうかを決めればよいのです。
また、行きの電車や車の中では、ただスマホを見るのではなく、「今日ここに来た理由」「帰り道にどんな気持ちでいたいか」を軽く考えてみると、参拝の時間がより深いものになっていきます。
5-2 リピーター向け:季節ごとに変わる楽しみ方
御岩神社や御岩山は、季節によって印象が大きく変わります。春は山野草や新緑、夏は濃い緑と沢の涼しさ、秋は紅葉、冬は澄んだ空気と静けさ。それぞれの季節に、それぞれの良さがあります。
リピーターとして訪れるときは、毎回「同じ歩き方」をするのではなく、季節に合わせてテーマを変えてみるのもおすすめです。
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春:山野草を探しながら、足元を丁寧に見て歩く
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夏:早朝に参拝し、涼しいうちに御岩山を登る
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秋:紅葉の参道をゆっくり写真におさめる(安全な場所から)
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冬:登拝が難しい日は、拝殿周辺を中心に静かに参拝する
こうして通いながら、自分なりの「御岩神社との距離感」が育っていくと、ブレスレットやお守りも単なる“モノ”ではなく、「あの季節、あの時間に感じた気持ち」を思い出させてくれる存在になっていきます。
5-3 参拝後の変化を現実的に生かすための振り返り方法
御岩神社から帰ってきたあと、ただ「すごかった」「きれいだった」で終わらせてしまうのは少しもったいないかもしれません。帰宅して少し落ち着いたら、次のようなことをノートやスマホにメモしておきましょう。
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一番印象に残った場所や瞬間はどこだったか
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参道を歩いているとき、どんなことを考えていたか
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ブレスレットやお守りを手に取ったとき、何を願っていたか
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帰り道、「これからはこうしよう」と決めたことはあったか
これを書き出しておくと、数ヶ月後に読み返したとき、「自分がどんなタイミングで御岩神社に行ったのか」「その後どう変わったか」が見えやすくなります。結果として、「ご利益があった・なかった」という表面的な判断を超えて、自分の行動や選択の変化に目を向けられるようになります。
そのうえで、たとえば、
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御岩神社に行ったあとに決めたことを、まだ実行していないなら、少しずつ手をつけてみる
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うまくいったことは、「御岩神社のご縁もあったかもしれない」と感謝する
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うまくいかなかったことは、「別のやり方を考えるきっかけをもらった」と受け止め直す
といったふうに、「神社のご利益」と「自分の行動」をセットで考えていくと、信仰と現実のバランスが取りやすくなります。
5-4 御岩神社での体験を誰かに話すときのコツ
御岩神社で不思議な体験をしたとき、それを人に話すかどうか、迷うこともあるかもしれません。話したら笑われるかも、信じてもらえないかも、と不安になる人もいるでしょう。
そんなときは、聞き手を選ぶことも大切です。
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スピリチュアルな話が苦手な人には、「山がきれいだった」「良いリフレッシュになった」といった部分を中心に伝える
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そうした話が好きな人には、不思議な体験も含めて、正直な感想を共有する
また、話すときの言葉も少し工夫してみてください。
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「絶対にこうだ」と断定する話し方ではなく、「自分にはこう感じられた」と主語を自分にする
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相手に信じさせようとするのではなく、「聞いてくれてありがとう」という気持ちで話す
このようにしておくと、自分にとって大切な体験を守りながら、無用な摩擦を避けることができます。御岩神社のような場所での体験は、たとえ他人に理解されなくても、自分にとって意味があるなら、それだけで十分尊いものです。
5-5 それでも「まだ行かない方がいい」ケースとは
最後に、「呼ばれている気がする」と感じていても、「今はまだ行かない方がいい」ケースについても触れておきます。たとえば、次のような状況です。
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明らかに体調が悪く、長時間の歩行が負担になりそうなとき
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生活費や重要な支払いを削ってまで旅費をねん出しようとしているとき
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家族や職場との関係がギリギリの状態で、無断で長時間家を空けようとしているとき
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メンタルの不調が続き、「現実から逃げるためだけに」参拝を考えているとき
こうした場合、御岩神社がどれだけ素晴らしい場所であっても、その旅が人生を良い方向に動かしてくれるとは限りません。むしろ、問題から目をそらすための行動になってしまうと、あとで自分を責める材料になりかねません。
「いつか行きたい場所」を、今すぐ叶えようとしなくても構いません。御岩神社は長い歴史の中で、多くの人を迎え、そして見送ってきました。自分の体調や生活の基盤を整え、「今なら大丈夫」と思えたときに、改めて計画すればいいのです。
その意味で、「まだ行かない」という選択も、御岩神社への敬意の一つの形だといえるでしょう。
まとめ
御岩神社は、茨城県日立市の山そのものが聖域となっている、非常にめずらしい場所です。188柱もの神々と仏が共に祀られ、5億年前の地層が露出する御岩山の上に、古代からの信仰の痕跡が折り重なるように残っています。
宇宙飛行士が見たとされる「光の柱」の話は、最新の地質学の研究では「都市伝説」として整理されていますが、その一方で、紫外線で光る紅柱石を多量に含む変成流紋岩が御岩山に分布していることも明らかになっています。物語と科学の両方が、この場所の魅力を形づくっているのです。
人気のブレスレットは、アメジスト・ローズクォーツ・タイガーアイ・翡翠など、意味づけの豊かな天然石で構成されていますが、その“効果”の多くは、身につける人の行動や心の持ち方とセットで現れてきます。それを理解したうえで、「自分の決意を思い出させる道具」として使うと、より健全な付き合い方ができるでしょう。
また、「呼ばれる感覚」や「不思議体験」は、心理学的にも説明できる部分と、言葉にしきれない部分の両方を含んでいます。だからこそ、現実的な準備──体調・装備・お金・時間──を整えたうえで、自分の内側の声に耳をすませることが大切です。滑落や遭難といった具体的なリスクがあることも忘れず、「敬意と準備」をもって山に入ることが、この場所と良い関係を結ぶ第一歩になります。
御岩神社は、願いを叶えてくれる“魔法の場所”ではありません。しかし、人生の節目に立ち寄り、静かな森の中で自分と向き合う時間を持つには、これ以上ない舞台の一つです。ブレスレットや「光る石」の物語に心を躍らせつつ、同時に現実の自分の生活も大切にする。そのバランスさえ忘れなければ、御岩神社とのご縁は、きっと長く、穏やかに続いていくはずです。

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