① 山口で厄払いを考えるときに知っておきたい基本
「厄年って本当に何か起こるのだろうか」「行ったほうがいいと言われるけれど、正直どう向き合えばいいのか分からない」。そんな戸惑いを抱えたときこそ、海と山と温泉がそろった山口での厄払い旅を選んでみてはいかがでしょうか。山口には、伊勢の神さまをまつる山口大神宮、日本最初の天神さまと紹介される防府天満宮、宇部の総鎮守として親しまれる琴崎八幡宮、白蛇信仰で知られる岩國白蛇神社、静かな禅寺の大寧寺など、性格の違う参拝先が点在しています。
この記事では、厄年の年齢の考え方や、数え年と満年齢の整理から始めて、山口らしい神社・お寺の選び方、当日の流れや服装・持ち物のポイント、厄払いと一緒に楽しめる小さな旅のモデルコース、そして厄払い後の一年をどう整えていくかまでを、できるだけ分かりやすくまとめました。厄年を「怖い年」にするのではなく、「自分と家族を大切にする一年のスタート」に変えていくヒントとして、ゆっくり読み進めてみてください。
山口が厄払いに向いていると言われる理由
山口県は、本州のいちばん西にある県で、日本海と瀬戸内海という性格の違う二つの海に面しています。海からの風が入りやすく、昔から「悪い気を吹き飛ばしてくれそうな土地」と感じる人も多い場所です。内陸側には静かな山あいの集落が点在し、海と山のコントラストがはっきりしているので、「気分を切り替えたいときの旅先」としても向いています。
そんな山口には、長門湯本温泉や湯田温泉など、古くから人々が通ってきた温泉地が多くあります。温泉は、体を温めて血行を良くするだけでなく、「日常から離れて自分を見つめ直す時間」をつくりやすい場所でもあります。厄払いを受ける前に湯に浸かって心身を落ち着かせたり、参拝の帰りにゆっくり疲れを流したりと、心の準備と後片づけの両方をしやすいのが魅力です。
さらに、山口には性格の違う神社やお寺がコンパクトな距離感で並んでいます。伊勢の神さまを祀る山口大神宮、学問の神さまで知られる防府天満宮、宇部の総鎮守として親しまれている琴崎八幡宮、白蛇信仰で全国から参拝者が訪れる岩國白蛇神社、山あいの禅寺として静かな大寧寺など、雰囲気の違う場所を目的に合わせて選ぶことができます。観光情報も整っているので、初めての人でも計画を立てやすく、「厄払いのついでに少し旅を楽しむ」というスタイルとの相性が良いのです。
厄年の年齢一覧と「数え年・満年齢」のかんたん整理
まず気になるのは、「自分は厄年なのかどうか」という点だと思います。厄年の年齢にはいくつかの説がありますが、全国の多くの神社・お寺で使われている“代表的な目安”は次のような表です。ここでは一般的な数え年で書き、あとで満年齢との違いも整理します。
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男性
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前厄:24歳・41歳・60歳
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本厄:25歳・42歳・61歳
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後厄:26歳・43歳・62歳
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女性
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前厄:18歳・32歳・36歳・60歳
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本厄:19歳・33歳・37歳・61歳
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後厄:20歳・34歳・38歳・62歳
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ここでいう年齢は、すべて「数え年」です。数え年とは、生まれた年を1歳とし、その後は元日が来るたびに一つ年を取る数え方です。ふだん私たちが使っている満年齢と少しずれるので、分かりにくく感じるかもしれません。ざっくり言うと、「誕生日がまだ来ていない時期は満年齢+2歳、誕生日を過ぎていれば満年齢+1歳」が、その年の数え年になります。
ただし、これはあくまでも「代表的な考え方」です。地域や寺社によっては年齢が一つ前後していたり、「満年齢で数える」ルールを採用していたりするところもあります。そのため、実際に厄払いを受けたい神社やお寺が決まったら、公式サイトや電話で「厄年はどのように数えていますか」「自分の生年月日だと今年は厄に当たりますか」と確認しておくと安心です。自分流に判断するより、参拝先の案内に従う方が迷いなく動けます。
「厄年だから不安」より「一年のメンテナンス」という発想
厄年と聞くと、「この年に悪いことが起きるのでは」「何かしないといけないのでは」と、不安な気持ちが先に立つこともあると思います。しかし、現代の医学や公的な統計データを見るかぎり、「厄年に当たる年だけ、病気や事故が急に増える」といった形のはっきりした根拠は確認されていません。病気やけがのリスクは、年齢とともに少しずつ高まっていくもので、「ある一つの年だけが極端に危ない」というわけではないのです。
では、なぜ厄年という考え方が長く受け継がれてきたのでしょうか。一つの見方として、「人生や体の節目にあたる年代だから」という説明があります。20代後半、30代半ば、40代前半、60代前後というのは、社会での立場が変わったり、家族構成が変わったり、体力の変化が出やすかったりする時期でもあります。負担が増えて体調を崩しやすくなったり、無理をしてけがをしたりしがちな年齢なので、「気をつけよう」「生活を見直そう」という合図として厄年を意識してきたとも考えられます。
そう考えると、厄払いは「怖い年を避ける儀式」というより、「一年のメンテナンスを始めるきっかけ」として使う方が自然です。体調や生活リズム、働き方、家族との時間、お金や将来のことなどを見直し、「これから一年、どうやって生きていきたいか」を考えるタイミングにできます。山口での厄払いを、「不安を消すための行事」ではなく、「自分の生活を整えるスタートライン」としてとらえてみると、気持ちも少し軽くなるはずです。
山口の神社とお寺の違いをやさしくイメージする
厄払いを受ける場所を選ぶとき、「神社とお寺のどちらがいいのか」と迷う人も多いと思います。ざっくりとしたイメージとして、神社は「八百万の神さまに祈る場所」、お寺は「仏さまやご本尊に祈る場所」と考えると分かりやすいかもしれません。どちらが正解というわけではなく、地域の歴史や人々の信仰の形の違いが表れているだけです。
山口には、そのどちらもバランス良くそろっています。山口市の山口大神宮は、伊勢神宮からおまつりを受けた神さまを祀ることから「西のお伊勢さま」と紹介されることが多い神社です。街中から歩いて行ける距離にありながら、境内は静かな森に包まれていて、厄払いと一緒に気持ちを整えるのに向いています。
防府市の防府天満宮は、日本で最初に創建された天神さまとして知られ、学問の神さまを祀っています。受験生や資格試験に挑戦する人だけでなく、社会人が「学び直し」や仕事運の向上を願って参拝することも多い場所です。
一方、長門湯本温泉の近くにある大寧寺は、山あいにたたずむ禅寺です。川の音や風の音を感じながら境内を歩くと、頭の中が自然と静かになり、自分の心とじっくり向き合う時間を持ちやすくなります。
このように、山口では神社とお寺のどちらでも厄払いに関連するご祈祷を受けることができます。「自分の心が落ち着きそうか」「家族が行きやすいか」といった感覚を大切にしながら選んでみるとよいでしょう。
山口ならではの節目の風習と、家族で話しておきたいこと
山口の各地には、節分や厄年にまつわる、さまざまな昔ながらの風習が伝わっています。たとえば萩周辺の一部地域には、かつて厄年の人が自分の数え年の数だけ豆を紙に包み、深夜に人目を避けて十字路や四つ角に静かに置き、振り返らずに帰る、という習慣があったとされています。今では実際に行う家庭は少なくなっていますが、「厄を道に置いてくる」というイメージは、とても印象的なものです。
また、山口県の中でも、特に下関や長門などクジラ文化と縁の深い沿岸部では、「大きなものを食べると福が来る」という考えから、節分にクジラ料理を囲む家庭があったと紹介されることがあります。これも、現在では地域や家庭によって大きく違いますが、「昔はこういうことをしていたらしい」と知ると、節分の料理を考えるときのヒントになります。
こうした風習を、すべてそのまま真似する必要はありません。大切なのは、「自分たちの家庭では何を大事にしたいのか」を話し合うきっかけにすることです。厄払いに行く前には、家族やパートナーと次のようなことを話しておくと、当日の流れがスムーズになります。
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今年、誰が前厄・本厄・後厄にあたるか
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どの寺社に行くか、移動手段はどうするか
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祈りたい内容(健康・仕事・学業・安全など)をどうまとめるか
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ご祈祷は個別に受けるのか、家族連名にするのか
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参拝の前後で、どこで食事をするか、観光をするか
こうした話を事前にしておくことで、「何となく不安だから行く」のではなく、「家族みんなでこの一年をどう過ごしたいかを確認するために行く」という前向きな意味づけができます。
② ライフスタイル別・山口の参拝スポットの選び方
一人で静かに向き合いたい人に合う場所
一人で厄払いに行きたいときは、人が多すぎず、自然を近くに感じられる場所を選ぶと、心を落ち着けて過ごしやすくなります。山口市の山口大神宮は、市街地からそれほど離れていないにもかかわらず、境内に入ると空気がすっと変わるのを感じる人が多い神社です。高い木々に囲まれた参道を歩き、本殿の前に立つと、日常のざわざわから少し離れた場所に来たことを実感できます。
長門湯本温泉の近くにある大寧寺も、一人で静かに過ごしたい人に向いています。山あいにあり、川の音がよく聞こえる境内は、時間がゆっくり流れているように感じられます。ご祈祷をお願いしても良いですし、本堂で手を合わせたあと、石橋や苔むした石段を歩きながら、自分のこれまでの一年を静かに振り返るだけでも十分です。
一人で行く利点は、誰かのペースに合わせず、自分のタイミングで動けることです。ご祈祷のあと、カフェや宿でノートを開き、「この一年でやめたいこと」「続けたいこと」「新しく始めたいこと」をそれぞれ書き出してみると、心の中の優先順位がはっきりしてきます。厄払いが「不安を消すための行動」から、「これからどう生きたいかを考える時間」へと変わっていくはずです。
家族・親戚で集まりやすい場所の選び方
お正月やお盆、連休の帰省に合わせて、家族や親戚と一緒に厄払いを受けたい人も多いでしょう。その場合は、アクセスのしやすさや駐車場の広さ、境内のバリアフリー具合なども大切なポイントになります。
防府市の防府天満宮は、山陽本線の防府駅からバスや徒歩で行けるうえ、自動車でもアクセスしやすい場所にあります。境内は比較的広く、階段もありますが、ルートを選べば高齢の家族や小さな子ども連れでも参拝しやすい造りです。学問の神さまを祀る天満宮として知られていますが、厄除けや家内安全のご祈祷を受ける人も多く、一度に複数のお願いをまとめることができます。
宇部市の琴崎八幡宮は、宇部の総鎮守として地域の人に親しまれています。車で訪れる人も多く、家族で出かけるのにちょうど良い雰囲気です。お守りの種類がとても多いことでも知られており、それぞれの家族が自分に合ったお守りを選ぶ時間は、ちょっとしたイベントのように盛り上がります。
場所を選ぶときには、「誰が車を運転するか」「どの程度歩けるか」「小さな子どもが飽きずに過ごせるか」といった視点からも考えてみてください。移動だけで疲れてしまうと、肝心の参拝が慌ただしくなってしまいます。無理のない範囲で、「また来年もここに集まろうね」と言える場所を見つけられると理想的です。
仕事運・金運・新しいチャレンジを後押ししてほしいとき
厄年を迎えるころは、ちょうど仕事や将来について悩みが増える時期とも重なりがちです。転職や独立を考えていたり、会社での責任が重くなっていたり、家のローンや教育費で不安を抱えていたりする人も多いでしょう。そんなときは、厄払いと一緒に仕事運や金運、事業の安全を祈願できる神社を選ぶと、自分の中で気持ちの切り替えをしやすくなります。
岩国市にある岩國白蛇神社は、国の天然記念物に指定されているシロヘビをまつる神社です。シロヘビは昔から財運や商売繁盛の象徴とされてきました。境内には白蛇をモチーフにした授与品が並び、金運や仕事運、家内安全などを願って全国から参拝者が訪れています。厄払いのご祈祷と一緒に、仕事安全や商売繁盛の祈願を申し込むこともできます。
ただし、祈願を受けたからといって、自然にお金が増えたり、すべてのトラブルが消えたりするわけではありません。むしろ、「ここで誓ったからこそ、自分でも行動を変えよう」と思えるかどうかが大切です。参拝の日をきっかけに、家計の見直しを始めたり、仕事の計画を整理したり、学び直しの第一歩を踏み出したりしてみてください。神社での祈りが、現実の一歩につながるように意識すると、厄払いの意味がぐっと深まります。
子どもや家族の安全を願うときの候補
自分の厄年よりも、「子どもや家族に何か起きないだろうか」と心配になることもあります。特に、小さな子どもがいる家庭や、高齢の家族がいる家庭では、健康や事故への不安がつきものです。山口の神社やお寺では、厄除けだけでなく、家内安全や交通安全、安産、子育てなど、家族の暮らしに関わるさまざまな祈願を受け付けています。
たとえば琴崎八幡宮では、車のお祓いや交通安全の祈願をお願いする人が多く見られます。通勤や通学、送迎で車を使う機会が多い家庭では、車と家族の安全を一緒に祈ることで、日々の運転への意識も自然と高まります。
岩國白蛇神社でも、金運のほかに家内安全や健康長寿の祈願が行われています。離れて暮らす家族や、体調が気になる親せきのことを思いながら手を合わせる人も多い神社です。
大切なのは、「この祈願をすれば絶対に大丈夫」と考えることではなく、「家族の安全を大切に思っている」という気持ちを自分の行動にも反映させることです。交通ルールをいつも以上に意識したり、体調が気になる家族に定期検診を勧めたりと、日常の中でできることを少しずつ増やしていきましょう。
氏神さまと有名な社の上手な組み合わせ方
山口の町を歩いていると、観光ガイドに載るような大きな神社だけでなく、住宅街や田んぼのそばに、ひっそりとした小さな社を見かけることがあります。こうした地域の神社は、その土地を守る「氏神さま」として親しまれてきました。
厄払いのような大きな節目には、防府天満宮や琴崎八幡宮、山口大神宮、岩國白蛇神社など、広く知られた神社やお寺に足を運ぶ人も多いでしょう。一方で、日常の中の小さな感謝や不安を届ける相手としては、近所の氏神さまが頼りになります。よく言われるのは、「普段の感謝やちょっとしたお願いは氏神さま、人生の節目や旅の記念は有名な社」というような組み合わせ方です。
どの神社が自分の氏神さまなのか分からないときは、市役所の担当課や、地域の神社をまとめている団体、地元の人に尋ねてみると教えてもらえることがあります。
厄払いの旅で訪れた大きな神社と、いつでも行ける近所の小さな社。この二つをうまく組み合わせることで、一年を通して心の拠り所を持つことができます。どちらか一方だけではなく、「日常」と「節目」の両方を大切にしてみてください。
③ 厄払い当日の流れと準備のコツ(山口版)
予約の要・不要と、混みやすい時期の考え方
「厄払いは予約が必要なのか」「当日ふらっと行っても大丈夫なのか」。初めての人が一番迷いやすいポイントかもしれません。山口の寺社でも、予約制のところと、当日受付で順番に案内してくれるところの両方があります。
年末年始や節分の前後、土日や祝日はどうしても参拝者が多くなります。そうした時期に出かける場合は、事前に公式サイトを確認したり、電話で「厄払いを受けたいのですが、予約は必要ですか」「いつ頃が比較的空いていますか」と尋ねたりしておくと安心です。予約が必要な神社・お寺では、時間帯や初穂料の目安、受付場所なども合わせて教えてもらえることが多いです。
逆に、平日や混雑期を外した時期であれば、当日受付だけで対応しているところも少なくありません。その場合でも、「午前と午後のどちらが混みますか」「どのくらいの時間を見ておけばよいでしょうか」と聞いておくと、後の予定を立てやすくなります。遠方から行く場合や、家族の予定を合わせるのが大変な場合は、時間に余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。
また、「厄払いは節分までに必ず受けなければならない」と思い込んでしまうこともありますが、多くの寺社では一年を通してご祈祷を受け付けています。体調や仕事の都合、天候などを総合的に考え、自分と家族にとって無理のない日を選ぶことが何より大切です。
服装・持ち物・初穂料の目安をすっきり整理
厄払いに行くときの服装について、「スーツを着ていかないといけないのでは」と心配する人も少なくありません。実際には、多くの神社やお寺で「清潔感のある普段着」であれば問題ないとされています。とはいえ、あまりカジュアルすぎる服装は避けたいところです。
目安としては、仕事でも着られるようなシャツやブラウス、落ち着いた色のニットやカーディガン、ジャケットなどを選ぶと安心です。ジーンズでも、ダメージ加工が強すぎず、色味が落ち着いていれば受け入れられることが多いでしょう。靴は歩きやすいスニーカーやローファーなどがおすすめです。草履やハイヒールは、石段や砂利道で歩きにくいこともあるので注意が必要です。
初穂料・祈祷料の金額は、神社やお寺によって少しずつ違いますが、個人の厄払いの場合は5,000円〜10,000円程度を目安に考えておくとよいでしょう。事前にホームページで金額が決められていることもありますし、「お気持ちで」とされている場合もあります。封筒には表側に「初穂料」または「玉串料」と書き、裏側や中の紙に氏名と住所を記しておきます。
持ち物としては、包んだ現金のほか、ハンカチやティッシュ、必要であれば数珠などがあれば十分です。小さな子どもと一緒なら、飲み物や簡単なおやつ、静かに遊べるものを準備しておくと安心です。天候が変わりやすい季節は、折りたたみ傘や羽織ものも忘れずに持って行きましょう。
小さな子連れ・帰省ついでに受けるときの段取り
小さな子どもを連れて厄払いに行くときは、大人だけのときとは違った準備が必要です。まず大切なのは時間帯の選び方です。子どものお昼寝や食事の時間を避け、比較的機嫌が安定している午前中の早い時間か、午後の早めの時間を選ぶとよいでしょう。混雑しやすい時間帯を避けることで、待ち時間も短くなり、子どもの負担が少なくなります。
境内は階段や石畳が多く、ベビーカーでは動きにくいこともあります。状況によっては、抱っこ紐とベビーカーを使い分ける準備をしておくと安心です。授乳やおむつ替えが必要な場合は、事前に「小さな子どもがいるのですが、使えるスペースはありますか」と電話で相談しておきましょう。空いている部屋を案内してもらえることもあります。
帰省に合わせて厄払いを受ける場合は、移動時間と渋滞も計画に入れておく必要があります。高速道路や鉄道が混み合う時期は、予定より大幅に遅れてしまうこともあるので、「この時間に絶対間に合わないと困る」という詰め込み方は避けた方が無難です。もしどうしても時間が合わなければ、日を改めて近所の氏神さまで祈祷をお願いするという選択肢を残しておくと、心に余裕を持てます。
子どもにとっては、厄払いも「よく分からない大人の行事」になりがちです。「今日はみんなが元気で過ごせるようにお願いしに行く日なんだよ」と、やさしい言葉で説明してあげると、少しだけ意味を感じてくれるかもしれません。
お札・お守りの受け取り方と、家での祀り方・古いお札の預け方
厄払いのご祈祷を受けると、多くの場合、お札やお守り、記念の品などを授かります。授与品を受け取るときは、片手ではなく両手でしっかりと受け取ることを意識しましょう。袋や包み紙をすぐに開ける必要はなく、そのまま大事に持ち帰って構いません。
家でのお札の扱い方にはいくつかの基本があります。神棚がある家では、神棚の中央や上段に、正面を向けてお祀りします。神棚がない場合は、リビングや寝室など、家族がよく過ごす場所の高い棚の上に、小さな白い紙や布を敷き、その上に立てかける形でもかまいません。向きは南向きか東向きが良いとされますが、部屋の構造上難しいこともあります。無理にこだわりすぎず、「家族が自然と手を合わせられる場所」を優先するとよいでしょう。
お守りは、普段持ち歩くかばんや財布、定期入れ、ポーチなどに入れておくのが一般的です。複数の神社のお守りを持っていても問題はないとされていますが、自分が丁寧に扱える範囲の数にしておくと、雑に扱ってしまう不安が減ります。
一年ほどたち、新しいお札やお守りを授かるときには、古いものを神社やお寺にお返しします。初詣や節分のころには、多くの寺社で古札を納める場所が設けられています。できれば授かった場所に返すのが理想ですが、難しい場合は近くの神社に納めてもかまいません。「お世話になりました」と感謝の気持ちを込めて納めることが大切です。燃えるゴミに混ぜて捨てるのではなく、「いったん預かっていただいていたものをお返しする」という感覚でいると、自然と扱いが丁寧になります。
緊張しやすい人のための心の整え方と、祈りのことばの作り方
初めて本殿に上がるとき、「ほかの人の前で失敗しないだろうか」「自分だけ作法が分かっていないのでは」と緊張してしまう人も多いと思います。そんなときに役立つのが、事前に簡単な心の準備と祈りのことばを用意しておくことです。
受付を済ませて待合室で呼ばれるまでの間に、スマホや手帳を出し、次の二つを書いてみてください。
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この一年で、すでに感謝したいこと
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これから一年、大切にしたいこと
箇条書きでかまいません。書きながら、ゆっくりとした呼吸を続けていると、「うまくやらないと怒られるのでは」という怖さより、「今までをありがとう、これからもよろしくお願いします」という素直な気持ちが前に出てきます。
祈るときの言葉も、難しい言い回しを覚える必要はありません。「家族が大きなけがや病気なく過ごせますように」「仕事を通して、周りの人の役に立てますように」「自分の心と体を大切にして、一年を穏やかに歩めますように」といった、日常の言葉で十分です。
作法については、多くの神社やお寺で、神職さんや寺の方がその場で説明してくれます。分からないことがあれば、その場で聞いて大丈夫です。「多少間違えてしまっても、真剣な気持ちでお参りすればきっと伝わる」と思っておくことで、緊張はかなり和らぎます。
④ 厄払いと一緒に楽しむ山口の小さな旅アイデア
下関・長門エリア|ふぐと温泉でゆったり一泊コース
山口での厄払いをきっかけに、小さな一泊旅行を計画するなら、下関と長門を組み合わせたコースが人気です。たとえば初日は長門湯本温泉に宿を取り、チェックイン後に大寧寺へ向かいます。山あいの静かな境内で厄払いを受け、参拝のあとに境内をゆっくり散策すると、心がすっと落ち着いていくのを感じるかもしれません。
宿に戻ったら、温泉に入って体をあたためましょう。大浴場や露天風呂で一日の疲れを流しながら、「これまでの一年で頑張ってきたこと」「これから一年で大切にしたいこと」を静かに思い出してみてください。湯上がりに、部屋やラウンジでノートを開き、簡単な箇条書きで構わないので、思いついたことを書き留めておくと、後から見返したときに気持ちの変化が分かりやすくなります。
翌日は下関方面へ移動し、唐戸市場などでふぐ料理や海の幸を味わうのも良いですね。関門海峡の景色は、天気によって表情が変わり、「ここからまた新しい一年を始めよう」と気持ちを切り替えるのにぴったりです。時間があれば、海沿いの神社に立ち寄って「無事に旅ができたことへのお礼」を伝えるのもおすすめです。一泊二日でも、厄払いと温泉と海の景色をセットで楽しめる、満足度の高いコースになります。
山口市・湯田温泉周辺|電車とバスで行くリフレッシュ参拝
車を持っていない人や、運転が苦手な人には、山口市と湯田温泉を電車とバスで巡るコースが向いています。山口駅からバスや徒歩で山口大神宮に向かい、静かな森に囲まれた境内で厄払いを受けます。本殿で手を合わせたあと、周囲の木々の間をゆっくり歩いていると、日常の雑念が少しずつほどけていくような感覚を味わえるでしょう。
その後、バスやタクシーで瑠璃光寺五重塔へ移動し、歴史ある塔と庭を散策します。五重塔の周りを一周しながら、「今までの自分の歩み」と「これからの一年」を重ねて考えてみるのも良いかもしれません。
午後は湯田温泉へ向かい、日帰り温泉施設でひと風呂浴びます。温泉に浸かりながら、厄払いで感じたことや浮かんできた思いを整理すると、旅の体験が心の中にしっかり残りやすくなります。湯上がりには、温泉街のカフェでゆったりとした時間を過ごし、「これから一年、自分はどんな生活リズムで過ごしたいか」をノートにまとめてみましょう。
日帰りでも可能なコースですが、時間に余裕があれば一泊して、夜の温泉街を少し歩いたり、翌朝もう一度お礼参りをしたりするのも良い過ごし方です。車がなくても、「厄払い+温泉+散策」のセットを十分に楽しめるルートです。
防府エリア|防府天満宮とまち歩きで「学び直し」の一日
仕事のスキルアップや資格取得、勉強のやり直しを考えている人には、防府天満宮を中心にした一日コースがおすすめです。午前中に防府天満宮に到着し、まず厄払いと学業成就、仕事成就の祈願を受けます。ご祈祷のあと、境内の絵馬掛けに、自分の目標を書いた絵馬を奉納してみましょう。「試験に合格しますように」という結果だけでなく、「毎日30分は勉強を続ける」「月に一つは新しいことを覚える」といった行動ベースの目標を書くと、後から読み返したときにやる気が湧きやすくなります。
参拝を終えたら、門前町を歩き、地元のお店やカフェに立ち寄ってみましょう。防府の中心部は、歴史ある建物と新しいお店が混ざり合っていて、「変わりながら続いていく町」の雰囲気を感じられます。ランチを食べながら、ノートやメモに「これから一年で身につけたいスキル」「挑戦してみたい仕事」「学びたいテーマ」を書き出してみてください。
午後は、防府市内の博物館や資料館、公園などを巡るのもおすすめです。勉強というと机に向かうイメージがありますが、実際には現地で見て体験することも大事な学びになります。帰りの電車の中で、「今日決めたことを明日からどう行動に落とし込むか」という視点でもう一度メモを見直すと、防府での厄払いが、学び直しのスタートラインとして心に刻まれます。
宇部・山陽小野田エリア|琴崎八幡宮と海辺ドライブ
家族や友人とドライブを楽しみながら厄払いをしたいなら、宇部市の琴崎八幡宮と、宇部・山陽小野田周辺の海岸線を組み合わせたコースがぴったりです。午前中に琴崎八幡宮で厄払いを受け、境内の授与所でお守りを選びます。この神社はお守りの種類がとても多いことで知られており、家族それぞれが自分に合ったものを選ぶ時間は、自然と笑顔がこぼれるひとときになります。
参拝後は、宇部空港方面や山陽小野田市の海岸沿いへ車を走らせましょう。海の見える公園や道の駅に立ち寄り、軽いランチをとったり、波打ち際を散歩したりするだけでも、気分転換になります。車の中では、「今年はどんな一年にしたいか」「それぞれが大事にしたいことは何か」を一人ずつ話してもらい、それをノートに書き留めておくと、後で見返したときに良い思い出になります。
夕方には、スーパーや直売所で地元の食材を買い、家に帰ってささやかなごちそうを作るのも良い流れです。厄払いの日を「家族でゆっくり話す日」「お互いの近況をきちんと聞く日」として位置づけられれば、毎年続けていきたくなる行事になります。
岩国エリア|白蛇信仰と錦帯橋を味わう半日コース
広島方面からのアクセスが良い岩国エリアは、日帰りの厄払い旅に向いています。午前中に岩國白蛇神社を訪ね、厄払いとともに金運や家内安全の祈願を受けます。境内には白蛇をかたどったお守りや絵馬が並び、独特の雰囲気があります。白蛇は財運の象徴とされる一方、古い皮を脱ぎ捨てて成長していく姿から、「しなやかに変化していく力」のイメージを重ねる人もいます。
参拝のあとは、錦帯橋方面へ移動し、橋を渡りながらゆっくりと川の流れや山の景色を眺めましょう。四季それぞれの景色が楽しめる場所で、春の桜や秋の紅葉の時期は特に美しく、多くの人が訪れます。橋を渡った先の公園やロープウェーで岩国城に上がれば、町全体を見渡すこともできます。
川のそばのカフェや茶屋で一息つきながら、「今日の参拝で感じたこと」「これからの一年で直したい癖や、チャレンジしたいこと」をメモに残しておくと、家に帰ったあとでも気持ちを行動につなげやすくなります。写真を数枚撮り、スマホのアルバムに「厄払い旅」というフォルダを作っておけば、気持ちが揺れたときに見返せる小さな支えにもなります。
⑤ 厄払いのあと一年をどう過ごすか(山口ライフ編)
帰宅したらまずやっておきたい三つの整理
厄払いを終えて家に戻ったら、「行ってスッキリして終了」にしてしまうのはもったいない話です。せっかく気持ちを整える時間を取ったのですから、その流れを日常の行動につなげていきたいところです。そこでおすすめなのが、帰宅後なるべく早いタイミングで、次の三つを整理しておくことです。
一つ目は、健康の整理です。最近受けていない健康診断や検査があれば、カレンダーを見ながら予約の候補日を決めます。自治体から届いている検診のお知らせを見直し、「今年はこれだけは受けておこう」というものをピックアップしておきましょう。
二つ目は、お金と保険の整理です。家計簿アプリや家計ノートを使って、毎月の固定費がどのくらいかかっているのか、保険の内容が今の家族の状況に合っているかを確認します。細かい数字まですぐに完璧にしようとする必要はありませんが、「何にどれくらい使っているのか」「もしものときにどれくらい備えがあるのか」をざっくり把握するだけでも、将来への不安は少し和らぎます。
三つ目は、暮らしの物の整理です。部屋を見回してみて、「なんとなく置きっぱなしになっている物」「この一年使っていない物」が多いと感じたら、少しずつ減らしてみましょう。洋服や本、書類、キッチンまわりなど、場所をひとつずつ決めて片づけていくと、家の中の空気が少し軽くなり、心にも余裕が生まれます。
この三つをすべて一日で仕上げる必要はありませんが、厄払いの余韻が残っている間に「最初の一歩」を踏み出しておくのがポイントです。
山口の季節行事を一年のリズムに取り入れる
厄払いをきっかけに、一年の中に「心を整えるタイミング」をいくつか作っておくと、気持ちの波に振り回されにくくなります。山口には、地域ごとにさまざまな季節行事や祭りがあります。夏の祭りや秋の例大祭、春の神楽など、内容は土地によって違いますが、人々が「この時期になったら神さまや土地に感謝を伝えよう」と大切にしてきた節目であることには変わりません。
たとえば、美祢市の北河内地区には、昔、集落で火災が起きたことをきっかけに、火伏せと厄除けを願って神楽を奉納するようになったと伝わる例があります。現在は保存会の人たちが中心になって舞いを受け継ぎ、地域の行事として続けています。このように、災害や病気といった身近な不安を、「みんなで祈り、舞い、祭りとして受け止めることで乗り越えよう」としてきた歴史が、山口にはたくさん残っています。
自分の住んでいる地域で、どのような季節行事が行われているのかを調べてみるのも面白いものです。すべてに参加する必要はありませんが、「この行事にだけは毎年顔を出す」「この時期になったらお札を持ってお礼参りに行く」といったマイルールを作ることで、一年のリズムが整ってきます。
カレンダーやスマホの予定表に、「○月○日 氏神さんへ」「○月○日 地元のお祭り」と書き込み、家族と共有しておくと、自然とその日を意識して過ごせるようになります。
近所の社とゆるく付き合う月次の習慣づくり
厄払いで大きな神社やお寺に行くことも大切ですが、日常生活の中で近所の社とゆるく付き合うことも、心を安定させるうえで大きな助けになります。わざわざ時間をかけて遠出しなくても、歩いて行ける距離に小さな神社があるだけで、「しんどくなったときに行ける場所」が確保されます。
おすすめなのは、月に一度だけ、月初めや給料日などの分かりやすいタイミングで近所の神社に立ち寄る習慣を作ることです。参道を歩き、手水で軽く手を清め、賽銭箱の前で二礼二拍手一礼をして、「今月も大きなトラブルなく過ごせますように」「いつも見守ってくださりありがとうございます」と短く伝えるだけで十分です。所要時間は10分もかかりませんが、その時間があることで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
忙しくてどうしても神社に行く余裕がない時期は、家のお札をお祀りしている場所の前で、同じように静かに手を合わせるだけでもかまいません。「今日はちゃんと向き合えなかった」という罪悪感を持つのではなく、「無理のない範囲で続ければいい」と考えた方が、長い目で見ると続きやすくなります。
こうした「小さな習慣」は、目に見える効果がすぐに出るわけではありませんが、気持ちが揺れたときに戻ってこられる“心のベンチ”のような存在になります。
家族やパートナーと厄年を共有するノート術
厄年は、一人だけの問題ではなく、家族やパートナーとの関係にも影響します。誰かが体調を崩したり、仕事で大きな変化を迎えたりすると、家族全体の生活リズムが変わっていきます。そこで役立つのが、「家族厄年ノート」を作る方法です。
ノートの最初のページに、家族一人ひとりの生年月日を書き、その下に「代表的な厄年の年齢」をメモします。そして、各自の名前の下に「自分が厄年に当たる可能性がある年」を書き出しておきます。このとき、「地域や神社によって考え方が少し違うので、最終的には参拝先で確認する」という一文も添えておくと、後で見返したときに誤解が生まれにくくなります。
次のページ以降には、厄年に当たる人ごとに専用のページを作り、今の体調や仕事の状況、心配なこと、周りにサポートしてもらいたいことなどを書いておきます。家族で集まったときにこのノートを開き、「今年は誰が厄年だから、少し体調に気をつけよう」「仕事を抱え込みすぎないように、家事を分担しよう」といった話をするきっかけにしましょう。
こうしたノートは、「厄年が怖いから管理する」というより、「家族みんなでお互いを思いやるための道具」として使うのがポイントです。厄年そのものより、「誰かがしんどくなったときに、一緒に支え合える関係を作ること」の方がずっと大切なのだと気づかせてくれます。
次の節目に向けた「小さな願いリスト」と一年の振り返り方
最後に、厄払いを受けたあとにぜひ作っておきたいのが、「小さな願いリスト」です。大きな願い事だけを書くと、かなわなかったときに落ち込んでしまうこともありますが、生活に密着した小さな願いをたくさん書いておくと、「思ったよりかなっていた」という実感を得やすくなります。
ノートの一ページを使い、「今年中に叶えたいこと」「今年中にやってみたいこと」を10個ほど書き出してみましょう。たとえば、
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年に一回は健康診断を受ける
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家族旅行を一度は企画する
-
月に一冊、本を読む
-
貯金を○万円増やす
-
使っていない物を人に譲るか処分する
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近所の神社に、月に一度はお礼参りに行く
といった内容でかまいません。ポイントは、「少し頑張れば実現できそうなレベル」にすることです。
一年が終わるころにこのリストを開いてみると、「これはかなっている」「これは途中までだけど前進している」といった項目がいくつも見つかるはずです。そのことに気づくと、「この一年も悪いことばかりではなかった」と思えるようになります。もし達成できなかった項目があっても、それは「今の自分に本当に必要な願いだったのか」を振り返るチャンスです。必要なら来年のリストに引き継ぎ、そうでなければ自然に手放してもかまいません。
こうして毎年リストを作り続けると、厄年かどうかに関係なく、「一年ごとの自分の歩み」を振り返る習慣が身についていきます。山口での厄払い旅で感じたことや見た景色を思い出しながら、自分なりのペースで次の一年へと歩みを進めていきましょう。
まとめ
山口で行う厄払いは、単に「悪いことを避けるための行事」ではなく、自分や家族の生活を見直し、これからの一年をどう過ごしていくかを考えるための良いきっかけになります。本州の西端に位置し、日本海と瀬戸内海の両方に面した山口には、海と山、温泉と町、歴史ある神社やお寺がバランス良く揃っています。山口大神宮、防府天満宮、琴崎八幡宮、岩國白蛇神社、大寧寺など、性格の違う参拝先から、自分たちに合った場所を選べるのも魅力です。
厄年そのものが「特別に危ない年齢」と医学的に証明されているわけではありませんが、体調の変化や生活の負担が増えやすい年齢と重なっているのも事実です。だからこそ、「怖い年」として避けるより、「生活と心を整え直すタイミング」として前向きに活用することが大切です。参拝の準備や当日の流れ、服装や初穂料、家族構成に合わせたスポット選びに加え、健康・お金・暮らしの三つの整理、近所の社とのゆるい付き合い、小さな願いリストの作成などを組み合わせれば、一年を通して自分と向き合うきっかけを持ち続けることができます。
山口での厄払い旅が、あなたと大切な人の心を少し軽くし、「これからの一年を大切に生きよう」と思えるスタートラインになりますように。


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