1. 鳥取で厄年を迎えたらまず知っておきたい基本

「そろそろ自分が厄年らしい」と聞いて、何となく落ち着かない気持ちになっていませんか。どの神社やお寺に行けばよいのか、いつ行くのがよいのか、服装や初穂料はどうすればよいのか。調べれば調べるほど情報が増え、かえって一歩目を踏み出しにくくなってしまうこともあります。
この文章では、鳥取で厄払いを考えている人に向けて、厄年の基本的な考え方から、鳥取県内のエリア別に見た神社・お寺・温泉の選び方、当日の流れと準備、そして厄払いのあと一年を穏やかに過ごすための習慣づくりまでを、できるだけやさしくまとめました。宇倍神社や白兎神社、大山の大神山神社本社・奥宮といった代表的な社を紹介しつつ、「家のならわし」「氏神さま」「自分の気持ち」のバランスをどう取るかにも触れています。
鳥取の海や山に囲まれた風景の中で、自分のこれまでとこれからを静かに見つめる時間を持てたなら、厄年は不安だけの年ではなく、「暮らしを整え直すきっかけの年」として記憶に残るはずです。ここで得た情報を参考にしながら、自分にとって無理のない厄払いの形を見つけてみてください。
1-1. 厄年の年齢と数え方を鳥取目線で整理する
「自分は本当に厄年なのか?」という疑問をはっきりさせるために、まず年齢の目安を整理しておきましょう。全国的によく使われる考え方では、男性は数え年で25歳・42歳・61歳、女性は19歳・33歳・37歳が本厄とされることが多いと言われます。さらに、地域によっては女性の61歳も厄年に含めるところがあります。ここで出てくる「数え年」とは、生まれたときに1歳と数え、元日を迎えるたびに一つ年を重ねる昔ながらの数え方です。今の年齢(満年齢)に、誕生日の前なら2歳、誕生日を過ぎていれば1歳を足すと、おおよその数え年になります。厳密に計算しようとすると難しく感じますが、このくらいの感覚でも多くの場合は十分です。
ただし、ここで挙げた年齢はあくまで「日本各地でよく見かける一般的な目安」です。鳥取の宇倍神社のように、女性の42歳を本厄として扱う早見表を出している神社もあります。地元の考え方を大切にしている社では、少し年齢の区切りが違うこともしばしばあります。そのため、「インターネットで見た表と違うからおかしい」と決めつけるのではなく、「この地域ではどう考えるのか」を参拝先の神社やお寺で確認するほうが確実です。公式サイトに早見表が載っていることもあれば、社務所に掲示してあったり、電話で教えてもらえたりします。
大事なのは、「自分の年齢が厄年に当てはまるかどうか」だけではありません。「この数年は、体や生活に変化が多い時期だな」と感じるかどうかも大切です。仕事や家庭の状況が大きく動いていたり、何となく疲れが抜けにくくなっていたりするなら、そのタイミングを一つの節目と考えてお参りをしてもかまいません。厄年の早見表はあくまで目安であり、最終的には「自分自身が今を節目と感じるかどうか」が、行動を決める大きなヒントになります。
1-2. なぜ厄年が気にされるのか:心と体と社会の節目
厄年というと、「不運が続く年」「悪いことが起きやすい年」というイメージが先に浮かびがちです。しかし、神社やお寺の説明をよく読むと、本来の考え方はもう少し落ち着いたものです。厄年とされる年齢を見てみると、男性の42歳や女性の33歳など、仕事や家庭の負担が一気に増えやすい時期が多く含まれています。責任の重い仕事を任されたり、子育てや親の介護が同時に重なったりすることもあるでしょう。体力の変化も出てきて、若い頃と同じ無理がきかなくなる時期でもあります。
こうした時期は、どうしても生活があわただしくなり、心と体の両方に余裕がなくなりやすくなります。その結果として、うっかりケガをしたり、体調を崩したり、人間関係で行き違いが生まれたりすることが増えるかもしれません。昔の人は、経験的にこうした傾向に気づき、「この年頃は慎み深く暮らしたほうがいい」と考えるようになりました。その節目をわかりやすく示すために、「厄年」という考え方が育ってきたと言われています。つまり、厄年は「突然運が悪くなる年」ではなく、「もともと無理が出やすい年だから気をつけよう」という目印のようなものだと考えられます。
鳥取のように家族や地域のつながりが比較的残っている土地では、「今年は厄だから、あまり無理をするなよ」という言葉が、励ましの意味を持って語られることもあります。親や祖父母に自分の厄年の話を聞いてみると、「確かにあの頃はいろいろあったけれど、今思えば乗り越える節目だった」といった話が出てくるかもしれません。そうした話を通して、「厄年=怖い」ではなく、「厄年=生き方を見直すきっかけ」として捉え直してみると、心持ちが少し楽になります。
1-3. 「厄払い」「厄除け」「方位除け」言葉の違いと実務上の捉え方
厄年を調べていると、「厄払い」「厄除け」「方位除け」「厄祓」といった似た言葉が次々に出てきます。一般的な説明では、厄払い(厄祓い)は、すでに身についてしまった災いの原因や穢れを祓い清めてもらう祈願、厄除けは将来起こりうる災いが近づかないように祈るもの、といった違いが語られます。方位除けは、家の新築や引っ越し、転勤などで、よくない方角にあたると言われるとき、その影響がやわらぐよう祈るためのものだとされることが多いです。
ただ、実際の神社やお寺の案内を見てみると、「厄除け祈願」と書いてあっても説明の内容は厄払いとほとんど同じだったり、「厄除・厄祓」と並べて書かれていたりすることが少なくありません。現場では、言葉の違いにこだわるより、「厄にまつわる不安をまとめて祈る」という意味合いで使われていると考えてよさそうです。申込用紙に「ご祈願内容」を書く欄がある場合でも、厄年であれば「厄除」や「厄祓」など、神社側が用意している言葉に合わせて書けば十分です。
また、引っ越しや家の購入を控えていて方角も気になるという場合は、「厄除けと方位除けの両方をお願いしたいのですが」と社務所で相談すると、その神社なりの考え方や組み合わせ方を教えてもらえます。大切なのは、「インターネットで読んだ言葉の違い」にとらわれすぎず、「実際にお参りする場所の案内や説明に合わせる」という姿勢です。わからないことは、紙一枚や電話一本でたずねてしまった方が、結果的にずっと安心して当日を迎えられます。
1-4. 神社とお寺はどう違う?お願いごと別の考え方
厄年のお参りを考えるとき、「神社とお寺、どちらに行けばいいのか」と迷う人も多いはずです。一般的には、神職が祝詞を奏上しておこなう厄祓いは神社、お経や護摩木を焚いて祈る厄除けの護摩祈祷はお寺、というイメージが持たれています。ただ、現実にはその境目はかなりゆるやかです。神社でも「厄除け祈願」として案内しているところがありますし、お寺でも「厄払い」という言葉を使っているところがあります。どちらかが間違いというわけではなく、地域の歴史や信仰の流れの中で自然にそう呼ばれるようになったと考えるのがよいでしょう。
鳥取だけを見ても、さまざまな選択肢があります。神話に登場する白兎神を祀る白兎神社、因幡国一の宮として古くから敬われてきた宇倍神社、霊峰大山の中腹に鎮まる大神山神社本社・奥宮など、由緒ある神社がいくつもあります。一方、三徳山三佛寺のように修験道の歴史を持つ寺院では、火渡りの行事や護摩祈祷を通して厄除けの祈願が行われることがあります(実施内容や時期は年によって変わるため、その都度最新の情報を確かめる必要があります)。
どちらを選ぶかは、「自分や家族が昔からお参りしてきた場所かどうか」「雰囲気が自分に合うか」「通いやすい距離かどうか」といった現実的な条件で考えてかまいません。たとえば、家のならわしでは神社に行くことになっていても、心の中でお寺の雰囲気に惹かれるなら、神社で厄払いを受け、お寺には別のタイミングで護摩祈祷に行く、という組み合わせ方もあります。「正解は一つだけ」と思い込む必要はありません。自分が落ち着ける選択肢を、いくつか組み合わせてみても良いのです。
1-5. 氏神さま・家のならわし・自分の気持ちのバランスを取る
鳥取のように、昔から同じ地区に住み続けている家も多い地域では、「うちはこの神社で厄払いをする」という感覚が自然に受け継がれていることがあります。親や祖父母が「厄年のときは必ずここへ行った」と話す社があれば、その場所は家族の歴史とつながった大切な場所です。こうした「家のならわし」を尊重したい場合は、まずはその神社やお寺に連絡して、厄払いの相談をしてみるとよいでしょう。そこから情報が広がり、ほかの社との関わり方も見えてくるかもしれません。
一方で、進学や転勤、結婚などで鳥取に移り住んできた人の中には、「自分の氏神さまがどこなのかわからない」という状況の人もいます。その場合は、市役所や神社庁の窓口、自治会などにたずねてみると、地域を管轄している神社を教えてもらえることがあります。近所の人に「この辺りの氏神さんはどこですか」と聞いてみるのも一つの方法です。どうしてもわからないときは、自分が「ここだ」と感じる神社に、氏神さまを教えてもらうつもりで相談してみると、次の一歩が見えてきます。
家のならわしと自分の気持ちがぶつかることもあるかもしれません。たとえば、「家では毎回同じ神社だけれど、自分は別の社にも心惹かれている」という場合です。そのときは、「厄払いは家の習慣に従って行う」「お礼参りや日常のお参りは、自分が落ち着く社やお寺に行く」といった形で役割を分けるという方法があります。大切なのは、「いやいや従う」のではなく、「自分なりの意味を見つけながら選ぶ」ことです。家族との話し合いを通して納得できるやり方を見つけられれば、それ自体がすでに厄年を乗り越える力になっていきます。
2. 鳥取県内エリア別・厄払いスポットの選び方
2-1. 鳥取市周辺(東部)で押さえておきたい代表的な社
鳥取市は県庁所在地であり、鳥取砂丘や白兎海岸といった代表的な観光地が集まるエリアです。厄払いの場所として候補に挙げやすい神社も、比較的コンパクトな範囲にまとまっています。その中でも、因幡国一の宮として知られる宇倍神社は、節目のお参りの場としてよく名前が挙がる社です。古くから朝廷や武家の信仰を集め、明治以降は近代社格制度において国幣中社に列せられた歴史があります。明治期の紙幣の図柄として描かれたことから、「お金」や「商売」のイメージと結びつき、商売繁盛や金運上昇の祈願に訪れる人も多くなりました。
宇倍神社の公式な案内では、厄年や八方塞がり、長寿の祝いなどをまとめた年齢早見表が公開されていることがあります。こうした表を見れば、自分や家族がどの位置にいるのか一目で確認できます。ご祈祷の受付時間や、初穂料の考え方などについても案内が用意されていることが多いため、「まずは情報をしっかり知ったうえで決めたい」という人にとって安心感のある社です。鳥取駅からバスや車でアクセスできる距離にあり、混雑状況や道路事情によって時間は前後しますが、移動時間としては「比較的行きやすい部類」に入るでしょう。実際に出かける際には、そのときのダイヤや道路状況を必ず確認しておくことが大切です。
同じく東部エリアには、古事記の「因幡の白うさぎ」で知られる白兎神社があります。白兎神を主祭神とし、海沿いの高台に鎮座するこの神社は、縁結びの神としても全国的に紹介されています。白兎海岸を見下ろす位置にあり、海と砂浜と社の景色が一体になった独特の雰囲気を味わえます。観光として訪れる人も多い場所ですが、厄年の節目に「神話の舞台であるこの場所を選ぶ」という決め方も、鳥取ならではの選択だと言えるでしょう。
2-2. 海とまちに寄り添う小さな社の使い分け
東部エリアには、有名な神社だけでなく、住宅街や港町の高台などにひっそりと鎮まる小さな社も数多くあります。こうした社は、地域の人たちによって代々守られてきた場所で、観光客は少ないものの、日常の中で「ちょっと立ち寄る場所」として親しまれてきました。境内は広くないかもしれませんが、その分、神様との距離が近く感じられるような落ち着きがあります。
海に近い社では、昔から漁の安全や航海の無事を祈る場として信仰が始まったところが少なくありません。荒れた日本海を前にした高台の社は、自然の力と人の暮らしがどのように結びついてきたのかを感じさせてくれます。こうした場所で厄年の無事を祈ることは、「自分も自然の一部である」という感覚を思い出させてくれるきっかけになるかもしれません。一方、住宅街の中にある社は、子どもの成長や日々の安全を願う場として親しまれてきたことが多く、いつもの散歩ルートの途中で手を合わせるのにも向いています。
大きな神社で正式なご祈祷を受ける日は一年の中で何度もありませんが、近所の小さな社なら、仕事や買い物の帰りにふらっと寄ることもできます。「厄払いを受けた神社」と「日常的に通う社」を分けて考えるのも一つの方法です。たとえば、厄払いは宇倍神社で、月に一回の近況報告は家の近くの小さな社で、といった形です。どこか一つの場所だけにこだわらず、自分の生活スタイルに合った「拠点」をいくつか持つことで、厄年の一年を支えてもらいやすくなります。
2-3. 倉吉・三朝など中部エリアは「温泉プラス」で考える
鳥取県の真ん中に位置する倉吉・三朝エリアは、古い町並みと温泉地がほどよく近い距離にあるのが魅力です。倉吉市内には、白壁土蔵群の周辺などに歴史ある社や寺院が点在しており、まち歩きと参拝を組み合わせることができます。午前中に倉吉の社で厄払いを受け、昼食をとりながらゆっくり町並みを歩いたあと、午後から三朝温泉へ向かうという流れは、一日の過ごし方として無理のないプランです。
倉吉駅から三朝温泉方面へは、路線バスが運行していることが多く、代表的なルートではおおむね20分前後で到着する便が案内されています。ただし、経由地の違いや時間帯によって所要時間が変わる便もあるため、「約20分前後」という数字はあくまで一つの例です。実際に出かけるときは、最新の時刻表を確認し、乗りたい時間帯の便がどれくらいかかるのかを具体的に見ておくと安心です。自家用車で向かう場合も、道路状況や季節によって時間が変わるので、余裕を持ったスケジュールづくりを心がけましょう。
三朝温泉は、ラドンを含んだ放射能泉として紹介されることが多く、温泉地として健康増進や保養を目的に訪れる人も少なくありません。ラドン泉に入ることで、微量の放射線を受け、その刺激によって体の働きが活性化する「ホルミシス効果」が期待されると説明されることもあります。ただし、こうした効果は一部の研究で示唆されている側面があるというレベルであり、すべての人に同じような変化が起こるわけではありません。また、温泉は医師による治療の代わりになるものではありません。持病がある人や通院中の人、妊娠中の人は、必ず主治医に相談したうえで入浴方法や時間を決めることが大切です。医療機関での治療を、温泉を理由に中断してしまうことは避けるべきです。
その前提をしっかり押さえたうえで、厄払いのあとの温泉は、心と体をゆるめる時間としてとても役に立ちます。湯上がりに温泉街をゆっくり歩き、「これからの一年は、少しペースを落として暮らそう」と静かに決めるだけでも、厄年の意味が前向きなものに変わっていきます。保養と祈りをセットにした一日を、中部エリアで組んでみるのも一つの選択肢です。
2-4. 米子・大山エリア(西部)は山と海のセットプラン向き
鳥取県西部の米子・大山エリアは、山と海の距離が近く、一日でさまざまな景色に出会える地域です。ここでは、霊峰大山のふもとに鎮まる大神山神社と、米子市内や境港周辺のまちを組み合わせたプランを考えやすくなります。大神山神社奥宮へ続く参道は、自然石を敷き詰めた石畳が約700メートル続く道で、「日本一長いと言われる自然石の参道」として紹介されることがあります。この「日本一」という表現は、観光案内などでよく使われる言い方であり、「そう言われている」という程度のニュアンスで受け止めておくとよいでしょう。
この参道は、苔むした石や古い木々に囲まれ、歩いているだけで日常生活から切り離されたような感覚になります。ただ、その美しさと同時に、雨や雪の日は非常に滑りやすくなるという注意点もあります。足元に不安がある人や、小さな子ども、高齢の家族と一緒に行く場合は、無理をして奥宮まで登らず、麓の大神山神社本社に参拝するという選択も十分に意味があります。参拝そのものよりも、「安全に落ち着いてお参りできること」を優先するのが、厄年の過ごし方としても自然です。
米子市内には、地域の人たちに長く親しまれている神社がいくつもあります。午前中に市内の社で厄払いを受け、午後に大山方面へ足を伸ばして自然の中を歩くコースもあれば、朝に大山へ行き、午後から米子のまちを散策する逆のパターンも考えられます。さらに、時間に余裕があれば、境港に出て港の雰囲気を味わったり、日本海に沈む夕日を眺めたりすることもできます。山と海の両方に触れながら心を整えたい人には、西部エリアがよく合うでしょう。
2-5. 車の有無と家族構成で変わる鳥取の回り方
鳥取県は、現在も自家用車に頼る場面が多い地域です。バスや鉄道もありますが、本数やルートに限りがあるため、日常的には車中心の生活になっている人が少なくありません。厄払いの日程や行き先を決めるときも、「車があるかどうか」「誰と一緒に行くか」によって、現実的な選択肢が変わってきます。
自家用車がある場合は、鳥取市内から白兎神社や宇倍神社、大山や三朝温泉までを一日で回ることも物理的には可能です。しかし、冬季の雪道や山間部の道路状況はとても変化しやすく、一見大丈夫そうに見えても、日陰のカーブなどが凍結していることがあります。特に大山周辺は標高が高く、平地とは天候が大きく違うこともあります。スタッドレスタイヤの有無、チェーンの準備、天気予報や道路情報の確認など、安全面の準備をしっかり整えたうえで、無理のないコースを選ぶことが大切です。
車がない場合でも、鉄道とバスを組み合わせれば、主要な社や温泉地に行くことは十分可能です。鳥取駅から白兎神社前行きのバス、倉吉駅から三朝温泉方面へのバス、米子駅から大山方面へのバスなどがありますが、本数や所要時間は路線によってかなり違います。インターネットの情報だけに頼らず、最新の時刻表を確認し、「行きはこの便、帰りはこの便」と具体的に決めてから動くのがおすすめです。
小さな子どもや高齢の家族と一緒に行く場合は、一日に回る場所を欲張りすぎないことが大切です。寒い季節であればなおさら、移動時間を短くし、待ち時間や休憩時間に余裕を持たせる必要があります。全員が本殿に上がるのが難しければ、代表者だけがご祈祷を受け、ほかの家族は境内のベンチや車の中で待つという形でも十分意味があります。「家族全員で無理なく一日を終えること」が、厄払いの目的のひとつでもあると考えてみてください。
3. 厄払い当日の流れと準備のポイント
3-1. 日取りの決め方と予約・問い合わせのコツ
厄払いの日取りを決めるとき、「年明けから節分までが良い」といった話を耳にすることがあります。これは、昔から一年の始まりにあたる時期に厄を落とし、無事を祈る習慣があったことに由来します。ただし、実際には一年を通して厄除けのご祈祷を受け付けている神社やお寺が多く、「この期間を逃したら意味がない」というわけではありません。むしろ、雪道や渋滞を無理に押して行くより、自分や家族の予定が落ち着いている時期に行くほうが現実的です。
まずは、自分や家族のカレンダーを見ながら、「このあたりなら時間に余裕がありそうだ」という日をいくつかリストアップしてみましょう。そのうえで、参拝先の候補として考えている神社やお寺の公式サイトを確認し、厄払いの受付期間や時間帯、予約の要・不要を調べます。中には、「通常は予約不要だが、年始の混雑期のみ予約制」としているところや、「土日祝日は事前予約を推奨」と案内しているところもあります。サイトに書かれていない場合は、電話で「厄払いをお願いしたいのですが、予約は必要でしょうか」と聞いてしまうのが一番早くて確実です。
予約を入れたあとでも、天候の悪化や体調不良などで予定通りに行けないことはあり得ます。そのときは、早めに連絡を入れて日程を変更してもらえば大丈夫です。神社やお寺側も、一番大切なのは「無理のない状態でお参りしてもらうこと」だと考えている場合が多いので、遠慮せず相談してみてください。「この日でなければ意味がない」と自分を追い込むのではなく、「このあたりのどこかで行ければいい」というくらいの心構えで日取りを決めておくと、精神的にも余裕が生まれます。
3-2. 到着からご祈祷終了までの流れをイメージする
厄払い当日の流れを、事前にざっくりとイメージしておくと、初めての人でも落ち着いて動けます。神社やお寺によって細かな違いはありますが、多くの場所で共通している一般的な流れは次のようなものです。
まず、受付開始時間か予約した時間より少し早めに現地に到着します。冬場は道路の状況が読みづらいこともあるので、「早めに着いて境内を歩きながら待つ」くらいのつもりで出かけるのが安全です。到着したら、まず手水舎で手と口を清めます。柄杓に水をくみ、左手・右手の順に洗い、左手に水を受けて軽く口をすすぎ、最後に柄の部分を洗い流すのが基本的な流れです。完全に覚えていなくても、横にある説明板を見たり、周りの人の動きを真似たりすれば十分です。
次に、社務所や受付に行き、祈願の申込書に住所・氏名・生年月日・数え年・願いごとの内容などを記入します。「数え年がわからない」「どの祈願名を書けばよいかわからない」といった場合は、その場で「ここはどう書けばよいですか」とたずねれば、丁寧に教えてもらえます。ここで初穂料やお布施を渡し、控えの札や番号札を受け取ることが多いです。その後、待合スペースで呼び出しを待ちます。複数の家族や個人が一緒になってご祈祷を受ける場合は、人数がそろうまで少し時間がかかることもあります。
順番が来たら、案内に従って本殿・拝殿または本堂に進みます。中では、神職や僧侶が祝詞やお経をあげ、ご祈祷を行います。途中で立ったり座ったり、頭を下げたりする動きがありますが、前の人や隣の人の動きを見ながら合わせていけば問題ありません。玉串をささげたり、焼香をしたりする場面がある場合もありますが、こちらも同じように、案内に従って動けば大丈夫です。ご祈祷そのものの時間は、だいたい20〜30分程度であることが多く、受付から授与品を受け取って外に出るまでを含めると30分〜1時間ほどかかると考えておくと安心です。時間に余裕を持たせて予定を立てておけば、焦らずにその時間を味わうことができます。
3-3. 服装・靴・冬の鳥取ならではの注意点
厄払いのときの服装は、「清潔感があること」と「動きやすいこと」の二つを意識すると選びやすくなります。男性なら、スーツか、それに近いきれいめのジャケットとパンツの組み合わせが無難です。色は黒や紺、グレーなど落ち着いたものを選ぶと、神聖な場所にもなじみやすくなります。ネクタイは必須ではありませんが、「きちんとしたい」と感じるなら締めて行くとよいでしょう。女性なら、ワンピースやブラウスとスカート、または落ち着いた色合いのパンツスタイルなど、いわゆる「よそ行き」の服装をイメージすれば大きく外れることはありません。露出が多すぎる服や、派手なロゴ・イラストが前面に出ている服は避けたほうが安心です。
靴については、境内の砂利道や石段、坂道を歩くことを想像しながら選ぶと失敗しにくくなります。ヒールが高すぎる靴や薄いサンダルは、歩きにくいだけでなく、転倒の危険もあります。かかとの低い革靴やローファー、落ち着いた色のスニーカーなど、歩きやすくて見た目もきれいな靴が理想です。本殿や本堂で靴を脱ぐ場合も多いので、脱ぎ履きしやすいデザインだとより安心です。
鳥取の冬は、日本海側特有のどんよりとした天気の日が多く、風が強いと体感温度がぐっと下がります。大山周辺や山間部では、平地より気温がかなり低くなることも珍しくありません。厄払いのシーズンを冬場に設定する場合は、コートやマフラー、手袋、耳当てなどでしっかり防寒し、足元も厚手の靴下と滑りにくい靴を組み合わせましょう。インナーで調整して、室内に入ったときに暑くなりすぎないようにしておくと快適です。天候が荒れそうな日は、迷ったら日程変更も含めて検討するくらいの気持ちでいましょう。安全にお参りできることが、何よりも優先されるべきです。
3-4. 初穂料とお布施の目安とマナー(あくまで参考)
厄払いを考えるとき、多くの人が気になるのが初穂料やお布施の金額です。全国の神社やお寺の案内を見てみると、個人の厄除けや厄払いのご祈祷料として、5,000円から1万円程度を一つの目安としている例がよく見られます。とはいえ、これはあくまで「ありがちな範囲」というだけで、実際の金額は社寺によって様々です。3,000円から受け付けているところもあれば、1万円以上と決めているところ、金額の違いによってお札の大きさや授与品の内容が変わるところなど、いろいろな形があります。
そのため、「このくらいが相場らしい」といった情報は参考程度にし、具体的な金額については必ず参拝先の神社やお寺の案内で確認するのが大切です。公式サイトのご祈祷案内に金額が書かれている場合は、それに従えば問題ありません。記載が見当たらない場合は、「厄払いをお願いしたいのですが、初穂料(お布施)はおいくらからになりますか」と電話でたずねてみましょう。金額の質問は失礼にあたるのでは、と心配する人もいますが、実際にはきちんと確認しておく方が歓迎されることがほとんどです。
包み方については、神社の場合、紅白の蝶結びの水引が付いたのし袋を用い、表の中央上部に「初穂料」と書き、下に氏名を書き添えるのが一般的です。お寺でお布施として納める場合は、「御布施」と書くことが多いです。中袋や裏面に住所と金額を記入しておくと、受付での確認がスムーズになります。お札は新札である必要はありませんが、折れ目や汚れの少ないものを選びましょう。当日は、のし袋をふくさやハンカチに包んで持参し、受付で氏名を伝えながら両手で丁寧に渡せば、形式としては十分です。
3-5. 授与品(お札・お守り)と古いお札の扱い方
ご祈祷が終わると、多くの場合、お札やお守り、縁起物などの授与品を受け取ります。これらは、「ここから一定の期間、この神社(お寺)に見守りをお願いしました」というしるしでもあります。家に持ち帰ったら、まずはどこに置くかを決めましょう。お札の場合、神棚がある家庭ではそこへ、神棚がない場合は、部屋の中で人の目線より少し高い場所に祀るのがよく勧められる方法です。向きは、できれば南向きか東向きになるようにします。本棚やタンスの上に白い紙か布を敷き、その上にお札を立てかけるようにすると、簡単ながら丁寧な印象になります。
お札の周りは、なるべくすっきりと整えておきたいところです。物が多く積み上がる場所や、テレビのすぐ横などは落ち着きにくいので避けたほうがよいでしょう。完璧を目指す必要はありませんが、「この一角だけはいつもきれいにしておこう」と決めると、掃除をするたびに自分の心も少し落ち着きます。月に一度くらい、お札の前を軽く掃除しながら、「この一ヶ月、こんなことがあったな」と振り返る時間を持つと、厄年の一年が「ただ過ぎていく時間」ではなく、「確かめながら進む時間」に変わっていきます。
お守りは、日常的に持ち歩くか、身近な場所に置いておくのが一般的です。かばんの内ポケットや財布の中、仕事用の机の引き出し、玄関近くの棚の上など、自分の生活の中で自然に目に入る場所を選ぶとよいでしょう。水に濡れると傷みやすいので、洗濯機や洗面所のすぐそばは避けたほうが安心です。一年ほどたち、次の節目を迎えたと感じたら、お札やお守りは受けた神社やお寺に返納し、お焚き上げをしてもらうのが基本的な流れです。遠方で直接行けない場合は、近くの神社が古いお札を受け付けていることもあるので、事前に確認してみてください。返すときには、「この一年間、見守っていただきありがとうございました」と心の中でお礼を伝えながら預けると、気持ちの区切りもつきやすくなります。
4. 厄払いと一緒に楽しむ鳥取ならではの一日プラン
4-1. 白兎神社と白兎海岸で「神話と海風」の半日コース
鳥取らしい風景の中で厄払いを考えるなら、白兎神社と白兎海岸を中心にした半日コースが分かりやすい選択肢です。白兎神社は、古事記に登場する「因幡の白うさぎ」を祀る神社で、白兎神が大国主命と八上比売命を結びつけたことから、縁結びの神としても知られています。境内には、白兎が傷ついた体を洗ったと伝わる池や、願いを込めて投げる「結び石」を奉納する場所があり、神話世界を身近に感じながら参拝できるのが特徴です。
午前中のまだ人が少ない時間帯に白兎神社に着き、手水で身を清めてから拝殿へ進み、厄払いのご祈祷を受けるか、静かに参拝をします。ご祈祷を受ける場合は事前の受付や確認が必要なので、事前に公式な案内をチェックしておくと安心です。お参りを終えたら、境内をゆっくり歩き、社の周りに広がる風景を味わいましょう。そのあと、参道を抜けて白兎海岸へ出てみると、日本海と砂浜が目の前に広がります。
海辺を散歩しながら波音を聞いていると、頭の中に溜め込んでいた考えごとが少しずつほどけていくように感じるかもしれません。風が強い日や冬場は長時間は難しいかもしれませんが、短い時間でも海風を感じるだけで気分が変わります。散歩のあと、近くの休憩施設やカフェで温かい飲み物を飲みながら、「この一年、大切にしたいこと」「あえて力を抜きたいこと」をノートやスマートフォンに書き出してみるのもおすすめです。厄払いの日が、「怖い日」ではなく「自分の気持ちと向き合った日」として記憶に残りやすくなります。
4-2. 宇倍神社で金運祈願+鳥取市内のしずかな時間
仕事やお金のことが気になる年頃の人には、宇倍神社を中心にした一日プランがしっくりくるかもしれません。宇倍神社は、その御祭神が紙幣の図柄になったことから、商売繁盛や金運の祈願に訪れる人が多い神社です。境内には五円玉を思わせるモチーフや、金運にまつわる授与品も用意されていることがあり、「円(お金)」と「縁(人とのつながり)」をあわせて意識する場として紹介されることもあります。もちろん、お参りしただけで収入が何倍にも増えるという話ではありませんが、「お金との向き合い方を整えるきっかけ」としてこの場所を選ぶことには意味があります。
午前中に宇倍神社で厄払いと金運・商売繁盛の祈願をまとめてお願いし、その後、境内を散策して心を落ち着かせます。鳥居から拝殿までの道を歩きながら、「これまでの仕事で良かったこと」「これから変えたいこと」を静かに思い返してみるのも良いでしょう。参拝を終えたら、鳥取駅周辺や市内のカフェに移動し、家計や仕事の内容を紙に書き出す時間をとってみます。
たとえば、毎月の固定費(家賃やローン、光熱費、通信費、保険料など)と、変動する支出(外食費や娯楽費など)を分けて書き出し、「これは本当に必要だろうか」「これは少し減らせるかもしれない」と考えていきます。いきなり完璧な家計簿を作る必要はありません。一つでも「ここを見直そう」と思えるポイントが見つかれば、それだけで十分です。仕事についても、「今の働き方で続けたいこと」「やめたい習慣」「新しく試してみたいこと」を箇条書きにしてみると、自分の中の優先順位が見えてきます。こうして具体的に言葉にしたうえで、数か月後にもう一度宇倍神社を訪れ、「あの日決めたことを、少しずつ実行しています」と報告すれば、厄年の一年がより意味のある時間として積み重なっていきます。
4-3. 倉吉の社と三朝温泉でゆるくととのえる保養コース
中部エリアで一日を過ごしたいなら、倉吉市内の社や寺院で厄払いを受け、そのあと三朝温泉で体を休める保養コースが落ち着いた選択肢になります。倉吉の白壁土蔵群周辺には、時間がゆっくり流れているような雰囲気があり、参拝の前後に町歩きをするだけでも気持ちがほぐれていきます。午前中にご祈祷を受け、昼食を取りながら古い町並みを眺めていると、「これまで忙しすぎたかもしれない」と自分のペースを振り返るきっかけになるかもしれません。
午後になったら、倉吉駅や市内から三朝温泉方面のバスに乗るか、車で移動して温泉街へ向かいます。代表的な路線バスでは、倉吉駅から三朝温泉の玄関口まで概ね20分前後で到着する便が案内されていますが、経由地や時間帯によって所要時間が変わるため、具体的なダイヤを確認してから動くことが大切です。自家用車の場合も、ナビゲーションの所要時間は目安と考え、途中の休憩や交通状況を踏まえて余裕を持った行程にしておきましょう。
三朝温泉では、日帰り入浴や宿泊でラドン泉のお湯を楽しむことができます。一般的な案内では、「入る」「飲む」「吸う」という三つの方法で温泉と触れ合えると紹介されることがありますが、実際にどのスタイルを選ぶかは、自分の体調や施設のルールに合わせて判断する必要があります。長湯を避け、こまめに水分を取りながら、のぼせや疲れに気をつけることが大切です。温泉に入ったあと、浴衣や部屋着のまま川沿いや温泉街を歩き、「この一年は、もっと自分をいたわって過ごそう」と静かに決める時間を作ってみてください。体だけでなく心の緊張もほどけていけば、厄年の一年をやさしく乗り越える助けになります。
4-4. 大神山神社奥宮と大山周辺を歩くリセット旅
山の空気が好きな人には、大山を舞台にした一日旅が魅力的に映るかもしれません。大山寺エリアから大神山神社奥宮へ続く参道は、自然石を敷き詰めた石畳が続き、「日本一長いと言われる自然石の参道」として知られています。この道を一歩一歩進んでいくと、足元の感触や木々のざわめき、鳥の声などに意識が向き、日常生活の細かい悩みごとから少し距離を置ける感覚になるかもしれません。参道は登り坂や段差もあり、決して平坦ではありませんが、その分、奥宮についたときの達成感もひとしおです。
ただし、このコースには注意点もあります。雨の日や雪の日には石が非常に滑りやすくなり、転倒の危険が高まります。冬から春先にかけては、雪が残っている可能性もあるため、天候や気温、路面状況をよく確認し、少しでも不安がある場合は無理をしないことが大切です。登山用に近い滑りにくい靴や、防寒具、必要に応じてストックなどの装備を準備することも検討しましょう。足腰に不安のある人や、小さな子ども、高齢の家族と一緒の場合は、奥宮ではなく大神山神社本社での参拝に切り替えるという判断も十分ありです。
奥宮で参拝を済ませたあとは、大山寺周辺を散歩したり、近くの飲食店で温かいものを食べたりしながら、体をゆっくり休めます。日帰り温泉施設を利用して汗を流せば、一日の締めくくりとしてさらにすっきりした気分になれるでしょう。帰り道に「また体力があるときに来たいな」と思えたなら、それ自体が自分の中の前向きな意欲の表れです。厄年のタイミングで一度大山に足を運び、「身体の声を聞く時間」を持つことは、その後の数年間をどう過ごすかを考える良いきっかけになります。
4-5. 米子・境港エリアで厄払いとご当地グルメを味わう
「せっかく厄払いに出かけるなら、美味しいものも楽しみたい」と感じる人には、米子と境港を組み合わせた一日プランが向いています。午前中に米子市内の神社で厄除けや家内安全のご祈祷をお願いし、そのあと境内を散歩して心を落ち着かせます。どの社を選ぶかは、アクセスや雰囲気、家からの距離などを総合して決めるとよいでしょう。初めて行く神社の場合は、事前に受付時間や初穂料の目安を確認しておくと安心です。
ご祈祷が終わったら、車や電車で境港方面へ向かいます。港に近づくにつれて、海風や潮の匂いが感じられ、気持ちも少し高揚してくるかもしれません。境港の市場周辺や飲食店では、日本海で水揚げされた魚介類を使った料理を味わうことができます。季節によってはカニやイカ、白身魚など、そのときならではの味覚が並びます。ふだんはなかなか食べないようなメニューを選んで、「厄払いの日のご褒美」としてゆっくり楽しむのも良いでしょう。
食事のあと、港の周りを散歩したり、観光スポットに立ち寄ったりする時間をとると、一日の満足度がぐっと高まります。海を眺めながら、「この一年も、大きな事故や病気なく過ごせますように」と心の中で願いを重ねてみてください。帰り道で、今日感じたことや決めたことをスマートフォンのメモに数行だけ書いておくと、数年後に読み返したとき、「あの年に自分なりに区切りをつけたな」と思い出せるはずです。厄払いの一日を、味と景色の記憶と一緒に残しておくことは、未来の自分に向けた小さなプレゼントにもなります。
5. 厄払いのあと一年を心地よく過ごすための習慣づくり
5-1. お札とお守りを暮らしに溶け込ませる置き方
厄払いの当日は印象に残っていても、その後の日々の中で、お札やお守りの存在をだんだん意識しなくなってしまうことはよくあります。とはいえ、お札やお守りを暮らしの中で上手に扱うことで、一年の心構えは少しずつ変わっていきます。まずは、お札の置き場所を決めるところから始めてみましょう。神棚がある家では、そこに新しいお札を迎え入れ、古いお札は返納するタイミングを整えます。神棚がない場合は、本棚やタンスの上など、人の目線より少し高い場所で、落ち着いて祀れるところを探してみてください。
お札を置くときは、南向きか東向きになるように調整することがよく勧められています。すべての条件を完璧に満たすのが難しい場合でも、「できる範囲で一番よい場所」を選べば十分です。下に白い紙や布を一枚敷き、壁にもたれかけさせるように立てておくと、見た目にも落ち着いた雰囲気になります。周りに物を積み上げず、できるだけシンプルな空間に保っておくと、自分の心も自然と落ち着きやすくなります。忙しい日が続いているときこそ、ふとお札の方に目を向け、「そういえば最近ずっとバタバタしていたな」と気づくきっかけになるかもしれません。
お守りは、持ち歩くか、決まった場所に置くかを自分の生活パターンに合わせて決めましょう。通勤かばんやリュックの内ポケットに入れておけば、出かけるたびに自然と存在を意識できます。仕事机の引き出しに入れておくなら、ふと疲れたときに引き出しを開けて「よし、もうひと頑張りしよう」と気持ちを切り替える合図にすることもできます。スマートフォンのストラップなどに付ける場合は、落としたり傷つけたりしないよう、無理のない形かどうかを考えてから選ぶと安心です。「持っていればすべてうまくいく」というより、「これを見ると落ち着く」という感覚で付き合ってみると、日々の中での支えになってくれます。
5-2. 月一回の「近所参拝」で気持ちを整える
厄払いを受けたあと、そのまま何もせずに過ごしてしまうと、「そういえばあの日のことをあまり覚えていない」ということになりがちです。そこで提案したいのが、「月一回の近所参拝」を自分の中の習慣にしてしまうことです。やり方はシンプルで、月に一度だけ、家や職場の近くの神社か、厄払いを受けた神社・お寺に足を運びます。時間は長くなくてかまいません。移動と参拝を合わせても、30分程度で終わるようなイメージで十分です。
当日は、いつものように手水で手と口を清め、拝殿や本堂の前に立って、二礼二拍手一礼の作法で参拝します。そのとき、「今月一ヶ月、こういうことがありました。無事に過ごせたことに感謝します」と報告するつもりで心の中で伝えてみてください。「あれを叶えてください」「これもお願いします」とお願いごとを増やしすぎるより、まず感謝と現状報告を中心にするのがポイントです。そのうえで、「来月はこういうことに気を付けて暮らしたいと思っています」と、短く決意を添えるくらいがちょうど良いバランスです。
こうした参拝を何度か続けていくと、神社やお寺が「困ったときだけ駆け込む場所」ではなく、「自分の歩みを定期的に確認する場所」に変わっていきます。厄年の一年間、「月に一度はここで立ち止まる」と決めておくと、仕事や家庭でどれだけ忙しくても、心のリズムが完全に乱れてしまうのを防ぎやすくなります。鳥取の神社は、季節によって見える風景が大きく変わります。雪の積もった境内、桜の咲く参道、新緑の木々、秋の落ち葉。それらを一年を通して静かに眺めることは、自分自身の変化を受け入れる準備にもつながっていきます。
5-3. お金・健康・人間関係を見直すシンプルな視点
厄年が「人生の節目」と言われる背景には、お金・健康・人間関係といった生活の土台が揺れやすい時期でもある、という現実があります。だからこそ、厄払いをきっかけに、これらの分野を少しずつ見直してみることには大きな意味があります。一度にすべてを変えようとすると疲れてしまうので、「できそうなことから一つずつ」が合言葉です。
お金については、まず毎月の固定費を書き出すところから始めてみましょう。家賃や住宅ローン、光熱費、通信費、保険料、自動車関連の費用、サブスクリプションサービスなどを紙かノートに一覧にしてみます。こうして目に見える形にすると、「なんとなく払っているけれど、実はあまり使っていないサービス」が見つかることがあります。すべてをすぐに解約する必要はありませんが、「来月までに、この中から一つだけ見直してみよう」と小さな目標を決めると、実際に動きやすくなります。
健康に関しては、ここ数年健康診断や人間ドックを受けていない場合、この一年のどこかで受ける予定を立てておくと安心です。結果を見るのがこわいと感じる人もいるかもしれませんが、早めに気づけた方が対策もしやすくなります。運動習慣については、「毎日1時間の運動を始める」といった大きな目標ではなく、「一日10分だけ歩く時間を増やす」「エレベーターを使わず階段を利用する」など、小さな行動から始めるのが長続きのコツです。
人間関係では、「会うと元気になる人」と「会うとぐったり疲れてしまう人」を、頭の中でそっと分類してみてください。疲れてしまう相手との関係をすぐに切る必要はありませんが、「今までより少し距離を置いてみる」「会う頻度を少し減らしてみる」といった小さな調整はできるかもしれません。その分、「会うと安心できる人」と過ごす時間を増やすことも意識してみましょう。厄年のタイミングでこうした見直しをしておくと、その後の数年間がかなり過ごしやすくなります。
5-4. 厄年だからこそ始めたい小さなチャレンジ
厄年には「大きな挑戦は控えたほうがよい」という言い方をされることがありますが、何もしないまま一年を過ごすと、不安だけが大きくなってしまうこともあります。そこで意識したいのが、「大きなリスクを取らない範囲での小さなチャレンジ」です。無謀な賭けは避けつつ、自分の世界を少し広げるような行動を選ぶことで、厄年の一年を前向きな時間に変えることができます。
たとえば、以前から興味があった資格の勉強に挑戦するとしても、いきなり高額な通信講座を申し込むのではなく、図書館で入門書を借りて読んでみるところから始めるのもひとつの方法です。やってみて合わないと感じたら、その時点でやめても構いません。「試してみて合わなかった」という経験自体が、自分のことを知る材料になります。運動や趣味でも同じで、「週に一度だけ、いつもと違う道を歩いてみる」「一日10分だけ、スマートフォンではなく本を読む時間を作る」といった小さな変化からスタートできます。
こうしたチャレンジを始める前後で、厄払いを受けた神社やお寺に再び参拝し、「これからこういうことを始めてみようと思っています」と心の中で報告するのも良いでしょう。上手くいっても、途中でやめてしまっても、その経過を節目ごとに振り返ることで、「あの厄年は、いろいろ試してみた年だった」と前向きに思い出せるようになります。大事なのは、結果よりも「やってみよう」と思った自分を認めることです。その積み重ねが、厄年を通り過ぎた先の自分を支える力になっていきます。
5-5. 次の世代に伝えたい、鳥取流の厄年との付き合い方
これまで自分の厄年のことを考えてきましたが、少し視野を広げて、子どもや孫など次の世代のことも想像してみましょう。鳥取県は現在、全国で最も人口が少ない都道府県とされていますが、そのぶん家族や地域のつながりが比較的残りやすい土地でもあります。人口の順位や数は今後変わる可能性があるので、最新の状況は統計を通じて確認する必要がありますが、「人との距離感の近さ」は、これからも鳥取の特徴の一つであり続けるでしょう。
厄年をきっかけに、家族みんなで神社やお寺に行き、その後一緒に食事をするという行事は、子どもにとっても印象的な思い出になります。「あのとき父や母が厄年で、みんなで神社に行ったな」という記憶は、大人になってから自分が厄年を迎えたときの支えになるかもしれません。そのときに伝えたいのは、「厄年は怖い年だから何もするな」というメッセージではなく、「厄年は、自分や家族の暮らしを見直すための節目だよ」という落ち着いた見方です。
また、神社やお寺へのお参りを「お願いを叶えてもらう場所」とだけ捉えるのではなく、「自分の歩みを報告し、感謝と決意を伝える場所」として伝えていくことも重要です。鳥取には、海や山、温泉など、自然と人の営みが近い場所がたくさんあります。白兎海岸の波、大山の姿、三朝温泉の湯けむりなど、厄払いの日に目にした風景は、あとになって心の中に静かに残っていきます。その記憶が、「どんな年でもなんとか乗り越えてきた」という自信につながっていきます。
自分自身が厄年を経験し、その年をどう乗り越えたかを次の世代に伝えることで、厄年は「ただの不吉な年」から、「バトンのように経験が引き継がれていく年」へと姿を変えます。鳥取の風景とともに、そのバトンを静かに渡していくことができたなら、それはとても豊かな文化の一つになるはずです。
まとめ
鳥取で厄払いを考えるとき、最初に気になるのは「どの神社やお寺に行けばよいのか」「いつ行くのがよいのか」といった具体的なことかもしれません。しかし、厄年の考え方を落ち着いて眺めてみると、それは単に「運が悪くなる年」ではなく、「心や体、生活の変化が大きい時期に、あらためて自分を整えるための節目」だということが見えてきます。厄年にあたる年齢は、仕事や家庭の負担が増えやすい時期と重なっており、その意味でも「気をつけて過ごしたい年」として意識する価値があります。
鳥取県内には、因幡国一の宮である宇倍神社、神話の舞台である白兎神社、霊峰大山に鎮まる大神山神社本社・奥宮など、節目のお参りにふさわしい社がそろっています。さらに、三朝温泉や大山周辺の自然、米子や境港の港町の風景を組み合わせれば、厄払いの一日を「心と体を休める小さな旅」として過ごすこともできます。温泉や自然にまつわる健康効果は、研究で示唆されている側面がある一方で個人差も大きく、医療の代わりになるものではありませんが、「自分をいたわる時間を意識的に作る」という行為自体には大きな意味があります。
何より大切なのは、完璧な作法や難しい知識より、「自分なりに納得できる形で節目を迎えること」です。家のならわしや氏神さまを尊重しつつ、自分の気持ちが落ち着く社やお寺を選び、無理のない日程で厄払いの日を迎える。そして、お札やお守りを暮らしの中で大切に扱い、月一回の参拝や、小さなお金・健康・人間関係の見直し、無理のないチャレンジなどを通して、厄年の一年を少し丁寧に過ごしてみる。そうして積み重ねた時間は、数年後に振り返ったとき、「あの年があったから今の自分がある」と思える支えになるはずです。
鳥取の海や山、温泉やまちの風景に見守られながら、自分と家族のこれからを静かに考える時間を持てたなら、厄年は「不安な年」から「暮らしを整え直すチャンスの年」へと姿を変えていきます。この文章が、その一歩を踏み出すための道しるべになればうれしく思います。


コメント