第1章 厄年と岐阜の暮らしを整理する
「岐阜で厄払いをするなら、どこへ行けばいいんだろう」「厄年って本当に気にした方がいいのかな」。そんなふとした疑問が浮かんだときに、最初に開いてもらえる一記事を目指して、このページをまとめました。
ここでは、厄年の基本的な考え方や数え年の計算方法、地域によって少しずつ違う年齢のとらえ方から、岐阜市・西濃・中濃・東濃・飛騨それぞれの寺社の特徴、一年を通した厄払いのタイミング、当日の服装や初穂料の準備、そして厄払いの後をどう過ごすかまでを、なるべく暮らしに近い言葉で整理しています。
「どの神社が一番ご利益が強いか」ではなく、「自分にとってどこがしっくりくるか」「どういう一年にしたいか」を考えるきっかけとして、ゆっくり読み進めてもらえたらうれしいです。
厄年はなぜ生まれたのか
厄年という考え方は、昔の人が「人生の節目には、体調の変化や環境の変化が重なりやすい」と感じていたところから生まれたと言われています。今と違い、昔は医療も十分ではなく、感染症やケガで命を落とす人も多くいました。体力が落ちやすい年齢や、結婚・出産・家業の継承などで一気に負担が増える年ごろを「要注意の時期」として意識し、そのときに慎重に暮らそうとしたのが、厄年の元になったと考えられます。
ここで大事なのは、「厄年だから必ず悪いことが起きる」という意味ではない、という点です。厄年の年齢に、事故や病気が統計的に多いというデータがあるわけではなく、医学的な数字から決められたものでもありません。あくまで「昔からの経験則をもとにした生活の知恵」であり、「この年はいつもより気をつけよう」という目印のようなものです。
岐阜の暮らしを思い浮かべてみると、この考え方は今でも役に立ちます。山が多く、冬は道路が凍結しやすく、車での移動距離も長くなりがちです。急な大雨や濃い霧の中で運転する場面もあります。無理をしていると、ちょっとした不注意が大きな事故につながる可能性もあります。
厄年を「怖い年」と考えると、不安だけがふくらんでしまいますが、「いつもより慎重にブレーキを踏む年」「体や気持ちの声をしっかり聞く年」ととらえなおすと、少し見え方が変わってきます。厄払いも、人生が変わる魔法ではなく、「気持ちを整える節目」「改めて身を慎むと決める儀式」として活用すると、今の生活にもなじみやすくなります。
厄年の年齢と地域差・岐阜でのとらえ方
一般的に、よく紹介される厄年の年齢は次のようなものです(いずれも数え年の年齢です)。
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男性:25歳・42歳・61歳
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女性:19歳・33歳・37歳(神社によっては61歳を加えるところもある)
この年齢は、多くの神社で「代表的な厄年」として使われていますが、全国共通の法律や決まりで定められているわけではありません。地域の伝統や寺社の考え方によって、厄年の扱い方に少しずつ違いがあるのが実際のところです。
たとえば、子どもの4歳や13歳を「小厄」として意識するところや、還暦にあたる60歳・61歳前後を特に大事な節目とするところもあります。岐阜の寺社でも、毎年掲示される厄年早見表を見ると、男女とも載っている年齢が少し違っていたり、注意すべき年の書き方に差があったりします。
つまり、「インターネットで見た厄年の表」と「行こうとしている神社の掲示」が違っていても、どちらかが間違っているとは限りません。「その神社での区切り方がそうなっている」と理解するのが現実的です。岐阜で厄払いを受けたいときは、最終的に「その神社・寺院が出している表に合わせる」のが一番すっきりします。
厄年という考え方自体は、科学的なものではなく習慣です。厄年の年齢にぴったり当てはまらなくても、「最近ちょっと無理をしている」「大きな節目が重なって心配だ」と感じるなら、そのタイミングを自分なりの「厄年」とみなして、お参りに行くのも一つの選択です。
数え年の計算方法とラクな確認のしかた
厄年の話にはよく「数え年」という言葉が出てきます。日常生活ではあまり使わないので、混乱しやすいところですが、仕組みはシンプルです。
数え年とは、「生まれた年を1歳とし、元日を迎えるたびに1つ歳を加える」という考え方です。西暦を使うと、次の式で計算できます。
数え年 = その年の西暦 − 生まれた年 + 1
たとえば、1985年生まれの人が2026年に何歳かを数え年で知りたいなら、
2026 − 1985 + 1 = 42 なので、その年の数え年は42歳です。
ふだん満年齢で考えている人にとっては、「今の年齢に1か2を足す」という感覚の方が分かりやすいかもしれません。
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誕生日がまだ来ていない時期 → 数え年 = 満年齢 + 2
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誕生日を過ぎている時期 → 数え年 = 満年齢 + 1
というざっくりした覚え方でも、大きなズレは生まれません。
とはいえ、最近は満年齢を基準に厄年を決めている神社や、「数え年が基本だが、事情に応じて満年齢でも受け付ける」と案内している神社もあります。自分で計算するのが面倒なときは、神社の厄年早見表をそのまま参考にするか、社務所に電話して「〇年〇月〇日生まれなのですが、今年は厄年に当たりますか」とたずねてしまうのが、一番確実で簡単です。
厄払いに行くか迷ったときのチェックポイント
自分が厄年に当たると知ったとき、「行った方がいいのかな」「行かなくてもいいのかな」と迷う人は多いです。その判断材料として、次のような質問を自分にしてみると、考えがまとまりやすくなります。
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行かなかった場合、何か良くないことが起きたときに「やっぱり厄払いに行かなかったからかな」と自分を責めてしまいそうか
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最近、仕事や家族のことで無理をしてきたと感じるか
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これから数年のあいだに、転職・独立・結婚・出産・マイホーム購入など、大きな変化を予定しているか
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親やパートナー、身近な人が厄年のことをかなり気にしているか
いくつかに「はい」と感じるなら、一度どこかで厄払いを受けてみる価値は高いと思います。「神職や僧侶に祈ってもらった」「節目としてきちんとお参りをした」という経験は、その後の一年を過ごすうえで、心の支えになりやすいからです。
反対に、「あまり厄年という考えに振り回されたくない」「時間やお金を、生活習慣の見直しや健康診断に回したい」とはっきり感じる人もいるはずです。その場合は、無理に祈祷を受ける必要はありません。初詣のときに普通にお参りをし、「今年は健康と安全を意識して暮らします」と決めるだけでも、大切な一歩です。
どちらを選ぶにしても、「自分で考えて決めた」と思えることが重要です。その感覚があれば、もし途中で困ったことが起きても、「あのとき自分はこう決めた」と冷静に向き合いやすくなります。
家族や職場とどう付き合うか・伝え方の工夫
岐阜のように、家族や親戚とのつながりが比較的身近な地域では、周囲から厄年について何かしら声をかけられることが多いです。親から「厄年だからちゃんとお参りしなさいよ」と言われたり、職場の先輩から「厄払いはしておいた方がいいぞ」とアドバイスされたりすることもあります。
こうした言葉の裏には、「大事な人に元気でいてほしい」という気持ちがありますが、言われる側はプレッシャーを感じることもあります。そのときには、自分の考えと行動予定をセットで伝えると、話しやすくなります。
たとえば、
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「今年が本厄だから、伊奈波神社で一度厄払いを受けてこようと思ってるよ」
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「ご祈祷まではしないけれど、節分の前に家族で華厳寺にお参りに行くつもりだよ」
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「厄年だからこそ、健康診断と運転に気をつけるようにしてるよ」
というように、「心配してくれてありがとう。そのうえで自分はこうするつもりだよ」と伝えるイメージです。
逆に、自分は厄払いに行きたいのに、家族があまり興味を持たないこともあります。その場合は、無理に全員を連れて行こうとせず、「今回は自分の節目として一人で行く」というスタイルでも構いません。帰ってきてから、「こんな雰囲気だったよ」と写真や授かったお札を見せると、次の機会には家族も興味を持ってくれるかもしれません。
厄年は、健康や仕事だけでなく、人間関係のバランスを見直すきっかけにもなります。相手の心配を受け止めつつ、自分の考えも大事にする。そのちょうど真ん中あたりを探してみる気持ちで、周りとの付き合い方を考えてみてください。
第2章 目的別に選ぶ岐阜の厄払いスポット
岐阜市エリアでお参りしやすい場所
岐阜市周辺で厄払いを考えるとき、候補に挙がりやすい場所の一つが伊奈波神社です。長い歴史を持つ神社で、市内外から多くの人が初詣や厄除けで訪れます。境内には本殿のほかにもいくつかの社があり、厄除け・八方除け・家内安全・交通安全など、さまざまな願いごとに対応した祈祷が行われています。参拝できる時間や祈祷の受付時間は、その年の状況によって変わることもあるので、出かける前に公式の案内を確認しておくと安心です。
岐阜駅に近い市街地であれば、金神社もよく名前が挙がります。金運や商売繁盛、産業の繁栄などを願う人が多く、地元の店舗や企業の人も足しげく通う神社です。毎月最終金曜日に、金色をテーマにした特別な御朱印や授与品が頒布される日が設けられていることがありますが、内容や実施状況は年によって変わるため、必ず最新情報を確認するようにしましょう。
岐阜市内にはそのほかにも、護国神社など落ち着いた雰囲気でお参りできる神社がいくつかあります。仕事帰りや休日の買い物のついででも立ち寄りやすい場所が多く、「遠出は難しいけれど、きちんと祈ってもらいたい」という人には、市内の神社を中心に考えてみるのも一つの方法です。
西濃エリアで歴史と厄除けを味わう
西濃エリアには、厄払いの場として選びやすい神社や寺院がまとまってあります。南宮大社は、美濃国一宮として古くから信仰されてきた神社で、金属や鉱山に関係する人々の守り神として知られています。現在は一般の参拝者に向けても、厄除け・家内安全・交通安全などの祈祷が行われています。杉木立の中に建つ社殿群は重厚な雰囲気があり、静かに気持ちを整えるのに向いています。
谷汲山華厳寺は、西国三十三所観音霊場の最後の札所で、「満願の寺」としても有名です。節分の頃には厄除け祈願や豆まきが行われ、門前には季節ごとの飾りつけがなされることもあります。長い参道には古くから続くお店が数多く並び、歩いているだけで少し昔にタイムスリップしたような気分になります。
千代保稲荷神社、通称「おちょぼさん」も、西濃エリアを代表する参拝スポットの一つです。商売繁盛・家内安全を願う人たちが、県内外から多く訪れます。参拝自体は一日中いつでもできると案内されていることが多く、特に月末から翌月1日にかけては「月越参り」として夜通しにぎわいます。参道には串カツやどて煮などの店が並び、お参りと一緒に食べ歩きを楽しむ人も少なくありません。
西濃エリアは、厄払いだけでなく、門前町の雰囲気や地元ならではの味もまとめて楽しめるのが特徴です。祈りと観光を一度に味わいたい人にとって、選択肢の多い地域だと言えます。
中濃・東濃エリアで静かに心を整える
中濃・東濃エリアには、全国的に有名な観光地というわけではないものの、地域に根づいた神社や寺院が多くあります。関市の関善光寺はその代表的な存在で、厄除けや方位除け、家内安全などの祈祷を行っている寺院です。節分前後には星まつりとして、護摩祈祷や豆まきなどの行事が行われていますが、普段の日は比較的落ち着いた雰囲気で、静かにお参りしたい人にも向いています。
中濃・東濃の各市町村には、小さな山のふもとや住宅街に鎮座する神社もたくさんあります。大きな観光ガイドにはあまり載らないような場所でも、地元の人にとっては大切な氏神さまです。
このエリアで厄払いを考えるときは、まず自分の住んでいる市や町の名前と「厄除け」「厄払い」といった言葉で検索してみると、候補がいくつか見つかります。そのなかで、家族が昔からお参りしている場所や、友人・同僚がよく行っている場所があれば、そこを第一候補にしてみるとよいでしょう。「誰かの体験談がある」という安心感は、初めての厄払いでは大きな支えになります。
飛騨エリアで「祈りと旅」を組み合わせる
飛騨エリアで厄払いをしたい人には、飛騨一宮水無神社など、飛騨地域を代表する神社があります。飛騨一宮水無神社は、飛騨国一宮として古くから信仰を集めてきた神社で、農作物の守り神としてだけでなく、家内安全や厄除けの祈祷も行われています。
水無神社では、個人の祈祷について予約不要の日が多いと案内されている時期もありますが、祭典と時間が重なる場合や、特別な行事のある日には受付方法が変わることがあります。そのため、実際に行く前には、その年の公式情報で祈祷の受付時間や方法を確認しておくと安心です。夏越の大祓や茅の輪くぐりなど、季節の行事が行われる年もあり、飛騨の自然と合わせて特別な体験になります。
飛騨方面へ向かうなら、厄払いを午前中に行い、午後は高山の古い町並みや朝市を散歩したり、近くの温泉でゆっくりする、という一日の組み立ても考えられます。冬は雪の状況によって移動時間が大きく変わるので、時間に余裕を持って行動し、スタッドレスタイヤやチェーンなどの準備も忘れないようにしましょう。
飛騨エリアは、厄払いをきっかけに「ちょっとした旅」を楽しみたい人にとって、特に相性が良い地域です。
行き先を決めるときの考え方
岐阜県内にはたくさんの寺社があり、「結局どこに行けばいいのか分からない」と感じるかもしれません。そんなときは、次の三つの視点から考えてみると整理しやすくなります。
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行きやすさ
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願いごとの内容
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自分の気持ちとの相性
まずは、自宅や実家、職場から無理なく行ける範囲で候補を出してみます。雪や渋滞のリスクも考えると、片道2時間以内くらいを目安にする人が多いです。次に、「家内安全や健康が中心なのか」「仕事や商売に関することを強く祈りたいのか」「交通安全に特に意識を向けたいのか」といった、自分の願いの方向性を整理します。
最後に、候補に挙がった寺社の写真や紹介文を見て、「ここなら落ち着いた気持ちで手を合わせられそうだ」と感じるかどうかをチェックします。初詣などで一度行ったことがあり、雰囲気を知っている場所も安心です。
どれだけ有名な神社でも、自分が居心地よく感じられなければ、落ち着いて祈るのはむずかしくなります。反対に、あまり知られていない場所でも、「ここなら素直になれそうだ」と思えるなら、そこが自分にとっての良い厄払いの場所になります。
第3章 カレンダーで見る一年の厄払いプラン
年始〜節分:スタートダッシュとしての厄払い
お正月から節分までの時期は、全国的に厄払いが集中しやすいタイミングです。岐阜県内でも、伊奈波神社や南宮大社、華厳寺など、多くの寺社に厄年の人やその家族が訪れます。
この時期の特徴は、何と言っても人の多さです。元旦から数日間は、参拝までにかなり並ぶこともありますし、駐車場も混雑しがちです。その分、「みんなで新しい年を迎えた」という一体感を感じやすく、一年のスタートとして気持ちを切り替えやすいという良さもあります。
節分前後は、寺院での行事が増える頃です。華厳寺の厄除け行事や関善光寺の星まつりなど、豆まきや護摩祈祷がセットになった行事が開催されることがあります。こうした行事は年によって日時や内容が少しずつ変わるので、参加したい場合は、事前に寺院の公式情報や地域の案内で最新の予定を確認しておくことが大切です。
年始〜節分に厄払いを受けられなかった場合でも、「その年が始まってから初めてきちんとお参りするタイミング」をどこかで作れれば問題ありません。1月中旬や2月後半など、人出が落ち着いてきた頃を狙って、落ち着いた環境で厄払いを受ける人も少なくありません。
春〜初夏:新生活と体調を整えるタイミング
4月から6月にかけては、新年度・新学期・新生活が重なりやすい時期です。引っ越しや転勤、部署異動、子どもの入学などが続くと、知らないうちに疲れがたまってしまいます。
このタイミングで厄払いに行くメリットは、年始ほどの混雑がなく、比較的落ち着いた雰囲気の中で祈祷を受けられることです。たとえば、ゴールデンウィークを利用して、南宮大社と周辺の公園や道の駅を組み合わせた半日コースを組む。あるいは、新生活の疲れが出始める5月や6月に、伊奈波神社や地元の神社で祈祷を受ける。そんな動き方でも十分意味があります。
この時期は、新しい環境になじむために頑張りすぎてしまい、「疲れているのに休めない」という状態になりがちです。厄払いをきっかけに、「睡眠時間」「食事」「運動」「通勤・通学の負担」などを見直してみると、厄年かどうかに関係なく、その後の一年を健やかに過ごしやすくなります。
夏:夏越の祓と岐阜の夏の行事
6月末から7月にかけて、多くの神社で「夏越の祓」が行われることがあります。境内に大きな茅の輪が設置され、その輪をくぐることで半年分の罪やけがれを祓い、残り半年の無事を願う行事です。岐阜県内でも、南宮大社や飛騨一宮水無神社など、茅の輪くぐりを行う神社がありますが、実施状況は年によって変わるため、事前の確認が欠かせません。
夏の岐阜は、長良川の鵜飼や花火大会、郡上おどりなど、水辺や夜に関連する行事も多い季節です。厄払いと合わせて楽しみたい場合は、昼間に神社で夏越の祓や厄除けの参拝をしてから、夕方以降に鵜飼や花火を見に行く、といった一日の流れをイメージしてみると良いでしょう。
ただし、夏は熱中症のリスクも高まる時期です。行列に並ぶ時間が長くなりそうなら、帽子や飲み物を持参し、無理をしないことが大切です。また、イベントのあとに長距離を運転する場合は、事前に休憩ポイントを決めておくなど、安全面に配慮した計画を立てるようにしましょう。
夏越の祓は、「上半期の厄を落とし、下半期の無事を願う行事」として位置づけられています。厄年に限らず、「上半期は忙しすぎたな」と感じた人にとっても、自分をリセットする良いきっかけになります。
秋〜年末:一年の振り返りとお札・お守りの整理
秋から年末にかけては、一年を振り返りやすい時期です。紅葉シーズンの神社やお寺は、夏や冬とは違った趣があり、心を落ち着かせるにはぴったりの場所です。
厄年の人にとって、秋は「ここまでの一年をどう過ごしてきたか」を静かに振り返るタイミングです。年始や節分のころに厄払いを受けていた場合は、そのときのお札やお守りを持ってお参りに行き、「大きな事故や病気もなく過ごせました」「つらいことはあったけれど、なんとかここまで来られました」と心の中で報告してみてください。うまくいかなかったことがあっても、それを抱えたままここまで来られたこと自体を認める時間になります。
年末には、お札やお守りの整理も意識したいところです。一般的には、役目を終えたお札やお守りは、授かった神社や寺院に返納します。初詣のときや年末の参拝時にまとめてお返しする人が多いです。遠方でなかなか行けない場合は、郵送での返納やお焚き上げを受け付けているかどうかを、公式情報で確認してみましょう。
家の中でも、カレンダーを新しくしたり、要らない紙類を整理したりするのに良い時期です。お札やお守りの場所を少し整え、来年どんな一年にしたいかを軽くメモしておくだけでも、新しい年の迎え方が変わってきます。
忙しい人のための半日モデルコース
「休みが取れない」「仕事や家事が立て込んでいる」という人でも、半日あれば厄払いを予定に組み込むことができます。ここでは、時間の使い方のイメージとして二つのパターンを紹介します。
一つ目は、岐阜市内で午前中に完結するパターンです。朝9時ごろに伊奈波神社に到着するように出かけ、手水で身を清めてから社務所で厄払いの申し込みをします。ご祈祷が終わったら、境内や周辺の道を少し散歩し、お札やお守りを受け取ります。そのあと、近くのカフェや和菓子店に寄り、今日のお参りで感じたことや今年意識したいことをスマホのメモなどに書き出します。昼までには帰宅できるので、午後は日常の予定をこなせます。
二つ目は、西濃方面で午後に動くパターンです。昼過ぎに南宮大社や華厳寺に着くように出発し、祈祷または参拝をしてから、帰り道で道の駅や直売所に立ち寄ります。そこで買った地元の野菜や惣菜を使って、いつもより少し丁寧な夕食を用意すれば、「今日は特別な一日だったな」と自然に感じられます。
どちらのパターンでも、「お参り」と「ちょっとしたごほうび」をセットにしておくのがポイントです。短い時間でも、自分をいたわる要素を入れておくことで、厄払いの体験が「やらなきゃいけない行事」ではなく、「やってよかった時間」として記憶に残りやすくなります。
第4章 当日の準備とマナーを具体的に知る
写真に残しても恥ずかしくない服装と持ち物
厄払いの当日、「どんな服装で行けばいいのか」というのは、多くの人が悩むポイントです。神社や寺院によって細かいルールが決められていることは少ないですが、次の三つを意識すると安心です。
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清潔感があるか
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動きやすく安全か
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写真を見返したときに自分で納得できるか
男性であれば、スーツか、ジャケットとシャツに落ち着いた色のパンツを合わせる格好が無難です。女性であれば、ワンピースやブラウスとスカート、あるいはきれいめのパンツスタイルなど、入学式やちょっとした式典に出ても違和感のない服装をイメージすると分かりやすいと思います。
デニムパンツやスニーカーが絶対に禁止というわけではありませんが、できればラフすぎる服装や、過度に肌を出す服、サンダルは避ける方が良いでしょう。神社本庁などの案内でも、「目上の人に会っても失礼にならない程度の服装」が目安とされています。
靴は、ヒールが高すぎないパンプスやローファー、革靴など、歩きやすく脱ぎ履きしやすいものがおすすめです。境内の石段や砂利道を歩くことも多いので、かかとが細い靴や滑りやすい靴底は避けた方が安全です。
持ち物としては、初穂料を入れたのし袋、ハンカチ、ティッシュ、財布、スマホが基本です。季節によって、夏は飲み物や日よけの帽子、冬はマフラーやカイロを用意しておくと、当日に困りません。準備が整ったら、鏡の前で全身をチェックし、スマホで一枚写真を撮ってみると、第三者の目線で確認しやすくなります。
初穂料・祈祷料の相場と包み方
厄払いを受けるときに気になるのが、初穂料(お寺の場合は祈祷料)です。全国的な傾向として、個人の厄除け祈祷の初穂料は5,000円から1万円程度の範囲に設定されている神社が多く、岐阜の主な神社でもそれに近い金額が案内されていることがよくあります。
ただし、金額は神社・寺院ごとに決められており、「すべての場所でこの金額」という共通ルールがあるわけではありません。中には、3,000円から受け付けているところや、1万円以上からの設定になっているところもあります。
一番確実なのは、行く予定の神社・寺院の公式サイトや案内で、厄除け祈祷の金額を事前に確認することです。もし情報が見当たらない場合は、社務所に電話して「厄払いの祈祷は、おいくらぐらいからお願いできますか」と聞いてしまって問題ありません。「お気持ちで」と書かれている場合は、自分の生活に無理のない範囲で、納めて気持ちよく感じられる金額を選べば大丈夫です。
包み方は、白いのし袋に紅白の蝶結びの水引が付いたものを用意し、表書きに「初穂料」または「玉串料」、お寺の場合は「御祈祷料」などと書き、下に自分の氏名を記入するのが一般的です。文字を書くのが苦手な人は、「御初穂料」とあらかじめ印刷されているのし袋を使うと、緊張しなくて済みます。お札を入れるときは、人物の顔が描かれている面を表に向けてそろえて入れておきます。
支払い方法については、クレジットカードや電子マネーに対応している寺社も徐々に増えていますが、現時点では現金のみのところも多いです。どちらにしても、当日に焦らないように、事前に必要な金額の現金を用意しておくと安心です。
受付から終了までの流れとよくある不安
初めて厄払いを受けるとき、「中でどんなことをするのか」「失礼にならないか」が心配になると思います。寺社によって細かい違いはありますが、大まかな流れは次のような形がよく見られます。
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神社やお寺に到着したら、まず手水舎で手と口を清める
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社務所や受付に行き、住所・氏名・生年月日・願いごとなどを申込用紙に記入する
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初穂料を納め、祈祷の開始時間を教えてもらう
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指定された時間まで待合所や境内で待つ
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案内にしたがって本殿や本堂に入り、指定された席に座る
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神職や僧侶による祝詞や読経、お祓い、玉串奉奠や焼香などに参加する
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終了後、お札やお守りを受け取り、退出する
玉串の持ち方や向き、頭を下げるタイミングなどは、前の人をよく見て真似をすればだいたい分かります。それでも不安なときは、係の人が小声で教えてくれることも多いので、身構えすぎる必要はありません。
予約については、伊奈波神社や飛騨一宮水無神社のように、「個人の祈祷は原則予約不要」と案内している神社もあります。ただし、正月三が日や大きな祭りの日は、受付時間が変則的になったり、団体祈祷を優先したりすることがあります。どの寺社に行く場合でも、「いつ行けば受け付けてもらえるか」「予約が望ましいかどうか」は、前もって公式情報で確認しておくのが安心です。
本殿や本堂の中では、スマホの電源を切るかマナーモードにし、通話はもちろん、写真撮影も控えます。写真を撮っても良い場所やタイミングが案内されていることもあるので、その場合は指示に従うようにしましょう。
お札・お守りの置き場所と返納の考え方
厄払いの後に授与されるお札やお守りは、「どこに置けばいいのか」「いつまで持っていればいいのか」が分かりにくいと感じる人も多いはずです。基本的な考え方は、「目線より少し高く、落ち着いた場所に置く」と覚えておくと分かりやすくなります。
お札については、神棚がある家なら、神棚にお祀りするのが一番分かりやすいです。神棚がない場合は、リビングのタンスの上や、本棚の最上段、玄関の高い位置など、自然と目に入る場所に小さな布や紙を敷いて安置する方法があります。方角は、できれば東または南に向けると良いとされることが多いですが、部屋の構造上むずかしい場合は、あまり神経質にならなくても構いません。
お守りは、願いごとの内容に合わせて持ち歩いたり、家に置いたりします。交通安全のお守りなら車や自転車のハンドル近く、仕事のお守りならカバンや名刺入れ、健康のお守りなら枕元や身支度をする場所などが選ばれやすいです。
役目を終えたお札やお守りは、授かった神社や寺院に返納するのが基本です。年末年始やどんど焼きのタイミングで古いお札を納める箱が設けられることが多く、そのときにまとめて持って行く人もいます。遠方でなかなか行けない場合は、郵送での返納やお焚き上げの受付をしているかどうかを、公式情報で確認してみましょう。近くの神社の古札納め所に、他の神社で授かったお札を納めることができる場合もありますので、その場合は、ひとこと確認をしてから預けると安心です。
なお、「気に入っていて手元に置いておきたい」というお守りがあれば、必ずしも一年で返さなければならないわけではありません。汚れや傷みが気になってきたと感じたタイミングで感謝を込めて返納し、新しいものをいただくという考え方もあります。
一人・夫婦・家族それぞれの過ごし方
厄払いに「誰と行くか」は、その日の印象を大きく左右します。一人で静かに向き合いたい人もいれば、家族やパートナーと一緒に行きたい人もいるでしょう。それぞれの良さを知っておくと、自分に合ったスタイルが選びやすくなります。
一人で行く場合は、自分のペースで動けることが何よりの利点です。混雑を避けて平日の午前中に参拝したり、祈祷のあとに一人でカフェに入り、ノートに思いを書き出してみたりと、「自分の心を整える時間」に集中できます。他の人に気を使わずに済むので、心の中の不安や迷いに向き合いやすくなります。
夫婦やカップルで行く場合は、相手とこれからの生活について話す良いきっかけになります。お互いの仕事の状況や、家族のこと、将来住みたい場所のことなど、日常ではつい後回しにしてしまいがちな話題も、神社やお寺で手を合わせたあとなら落ち着いて話しやすくなります。
家族全員で行く場合は、「家族単位の節目」を意識しやすくなります。子どもの受験や就職、親の還暦や古希など、いろいろな節目と重ねてお参りをすることで、「あのときみんなで行ったよね」と振り返る思い出が増えていきます。小さな子どもや高齢の家族と一緒の場合は、移動距離や階段の多さ、休憩できる場所の有無なども考えて、できるだけ負担の少ない寺社を選ぶと良いでしょう。
どの形が正しいということはありません。その年の自分たちの状況に合わせて、「無理のない行き方」を選ぶことが何より大切です。
第5章 厄払いのあとの「暮らしの厄落とし」
岐阜市内での小さなごほうび時間
厄払いを終えたあと、すぐに家に帰るのではなく、少しだけ寄り道をして自分にごほうびをあげる時間を作ってみましょう。
伊奈波神社や金神社の周辺には、昔ながらの和菓子店や喫茶店、最近できたカフェなど、ゆっくり過ごせる場所がいくつもあります。事前に「岐阜 和菓子」「岐阜 カフェ」などで検索し、気になる店を一つか二つリストアップしておくと、当日に迷わずに済みます。
お店に入ったら、まずは座って深呼吸をし、飲み物や甘味の味や香りに意識を向けてみてください。そのうえで、今日の厄払いで印象に残ったことや、この一年で大事にしたいことを、スマホのメモや手帳に書き出してみましょう。「健康」「家族」「仕事」「お金」「チャレンジしてみたいこと」など、単語だけでも構いません。
書き出したものは誰かに見せる必要はありませんが、数か月後にふと読み返してみると、「あのときはこう考えていたんだ」と自分の変化に気づくきっかけになります。厄払いの記憶も、そのときの空気や味と一緒に残りやすくなります。
温泉や道の駅と組み合わせる楽しみ方
岐阜県内には、温泉地や道の駅がたくさんあります。南宮大社や華厳寺、千代保稲荷神社など西濃エリアの寺社に参拝したあと、近くの温泉や道の駅に立ち寄るのも、おすすめの過ごし方です。
温泉では、長湯をする必要はありません。短い時間でも湯船につかれば、体の緊張がほぐれ、「ここまでよく来たな」と自分をねぎらう気持ちが自然と湧いてきます。露天風呂がある場合は、山や川の景色を眺めながら、「今年はどんなふうに過ごしたいか」をぼんやり考える時間にするのも良いでしょう。
道の駅では、その土地の野菜や果物、味噌や漬物、お菓子などが手に入ります。厄払いの帰りに買ってきた食材で作る夕食は、いつもと同じメニューでも、不思議と少し特別に感じられるはずです。家族へのお土産として、その地域ならではのお菓子を選ぶのも楽しい時間です。
ただし、楽しい予定を詰め込みすぎると、かえって疲れがたまってしまいます。特に長距離を運転している場合は、帰り道に眠くならないよう、休憩のタイミングも含めて余裕を持ったスケジュールにしておきたいところです。
日帰り・一泊のミニ旅にするときのポイント
厄払いを機に、前から行きたかった場所へ「ミニ旅」を計画するのも良い方法です。飛騨方面であれば、飛騨一宮水無神社で厄払いを受けてから、高山の古い町並みや温泉地を回る日帰りコースや一泊二日の旅が考えられます。中濃や郡上方面なら、関善光寺と郡上の街歩きを組み合わせるプランも良さそうです。
旅として計画するときのポイントは、次の三つです。
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移動時間を欲張りすぎない
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行きたい場所を絞る
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天候の変化に備える
移動時間については、片道2時間以内を目安にしておくと、現地での時間に余裕を持ちやすくなります。行きたい場所も、「厄払いをする寺社」「ゆっくりしたい観光地」「食事をする場所」くらいにしぼると、慌ただしくなりません。
また、天候はいつ変わるか分かりません。晴れていれば散策を楽しめる場所に加えて、雨や雪でも楽しめる室内スポットを一か所候補にしておくと、その日の天気に応じて柔軟に予定を変えられます。
ミニ旅の主役は、「自分や家族の節目を大切にすること」です。たくさんの場所を回るよりも、少ない場所でじっくり時間を過ごす方が、「行ってよかった」と感じられやすくなります。
気持ちが沈んだ日にできる簡単な工夫
厄払いを受けても、その後に落ち込む日がなくなるわけではありません。仕事で失敗したり、人間関係でうまくいかなかったり、体調を崩したりすることは、どうしてもあります。そんなときのために、短い時間でできる「心のリセット方法」をいくつか持っておくと、気持ちを立て直しやすくなります。
たとえば、
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家の近所の神社に10分だけ立ち寄り、深呼吸をしてから手を合わせる
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長良川や木曽川など、身近な川の堤防を10〜15分だけ歩き、水の流れを眺める
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部屋の一角(机の上や玄関など)を15分だけ片づけると決めて、タイマーをセットする
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温かいお茶を淹れ、スマホから目を離してゆっくり飲む
といった行動です。どれも特別な準備やお金はほとんど要りませんが、「同じことを繰り返し考えてしまう状態」から一歩離れるきっかけになります。
どうしようもなくモヤモヤするときは、紙に今の気持ちを書き出してみるのもおすすめです。イライラや不安をそのまま書き、書き終えた紙を小さく破って捨てます。この小さな行動も、日常の中でできる厄落としの一つだと考えると、少し心が軽くなります。
厄年が終わったあとも続けたい自分だけの習慣
前厄・本厄・後厄の3年間が終わると、多くの人が「やっと終わった」とホッとします。しかし、厄年の期間に身についた良い習慣をそこで手放してしまうのは、少しもったいない気もします。
そこでおすすめしたいのが、厄年のあいだに始めたことの中から、「これなら無理なく続けられそうだ」というものを、自分だけの習慣として残していくことです。
たとえば、
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誕生日の前後には必ずどこかの神社やお寺にお参りする
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年に一度、厄払いでお世話になった寺社へお礼参りに行く
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大きな決断をするときには、一度近所の神社で静かに手を合わせる
といったルールです。厄年かどうかに関係なく、自分の心と生活を見直すきっかけになります。
岐阜には、伊奈波神社、金神社、南宮大社、千代保稲荷神社、関善光寺、谷汲山華厳寺、飛騨一宮水無神社など、何度訪れても新しい発見がある寺社がたくさんあります。厄年だから、という理由に限らず、「節目のたびに思い出して訪れる場所」として付き合っていけば、心の中に一つの拠りどころが生まれます。
厄年を、「怖い年」とだけとらえると、不安ばかりが頭に残ってしまいます。しかし、「生き方を見つめ直すための時間」と考えれば、その3年間には十分な意味が生まれます。岐阜の四季や寺社との関わりを通じて、自分なりのペースで暮らしを整えていく。その一つのきっかけとして、厄年と厄払いを使ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
岐阜で厄払いを考えるとき、多くの人がまず気にするのは「どこの神社に行けばいいのか」「いつまでに行けば間に合うのか」といったことだと思います。しかし、少し立ち止まってみると、もっと大切なのは「自分はどんな一年を送りたいのか」「何に気をつけたいのか」を考えることだと分かります。
厄年の年齢は、男性25・42・61歳、女性19・33・37歳などがよく知られていますが、これはあくまで昔から伝わる一つの目安であり、地域や寺社によって扱い方は少しずつ違います。数え年や満年齢のどちらを基準にするかも含めて、「最終的には行き先として選んだ寺社の早見表や案内に合わせる」という柔らかい考え方をしておくと、余計な不安を抱えずにすみます。
岐阜には、伊奈波神社や金神社、南宮大社、千代保稲荷神社、関善光寺、谷汲山華厳寺、飛騨一宮水無神社など、それぞれに歴史や役割の異なる寺社があります。どこを選ぶにしても、祈祷の内容や受付時間、行事の日程、初穂料の金額などは年によって変わることがあるので、必ず公式の最新情報を確認し、自分と家族の体調や予定に合わせて、無理のないプランを立てることが大切です。
また、厄払いは一度行えばすべてが解決するものではありません。むしろ、その後の日々の過ごし方こそが重要です。睡眠や食事、運転や仕事の仕方、家族との会話や自分の楽しみ方など、生活のあちこちにある小さな選択が積み重なって、結果として「厄をため込まない暮らし」につながっていきます。
厄年や厄払いを、「ただ怖がるための話」ではなく、「自分と向き合い、暮らしを整えるためのきっかけ」としてとらえ直すことができれば、岐阜で過ごす一年は、今より少し安心で、少し豊かなものになっていくはずです。


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