京都で馬に会う旅 完全保存版:駈馬・競馬会神事・流鏑馬と貴船の絵馬、舞鶴の馬頭観音まで網羅

未分類
  1. 京都と馬の物語(入門)
    1. 「絵馬」の本当の意味とルーツ(貴船の白馬・黒馬の伝承)
    2. 神社の「神馬」とは?(見られるタイミングと基本マナー)
    3. 5月に集中する“馬の神事”をざっくり把握
    4. 参拝&観覧の安全ポイント(ロープ内に入らない等)
    5. 用語ミニ辞典(流鏑馬/競馬神事/駈馬 など)
  2. 目の前で体感したい“馬の神事”カレンダー(春〜初夏)
    1. 藤森神社「駈馬神事」を迫力の至近距離で(5月上旬)
    2. 上賀茂神社「競馬会神事(賀茂競馬)」の古式競馬(5月5日ごろ)
    3. 下鴨神社「流鏑馬神事」で矢が走る森を体感(5月3日ごろ)
    4. 葵祭とのつながりを知る(“前儀”としての位置づけ)
    5. 撮影&観覧ベストポジションと混雑回避術
  3. 貴船神社で「絵馬」をたどる
    1. 白馬・黒馬の奉納伝承を知る(雨乞い・晴乞い)
    2. 絵馬の今と昔(なぜ“馬の絵”になった?)
    3. 水占みくじや境内の見どころ
    4. 貴船エリアの歩き方(季節の注意点・川床の基本)
    5. 叡電で行くモデルルート(貴船—鞍馬の組み合わせ)
  4. 京都府北部へ:舞鶴「松尾寺」の馬頭観音
    1. 西国三十三所29番「松尾寺」で馬頭観音を拝む(唯一の本尊)
    2. 馬頭観音ってどんな仏さま?(役割とご利益)
    3. 境内のみどころ&御朱印
    4. 京都市内からのアクセスと所要時間
    5. 周辺観光(舞鶴赤れんが・天橋立方面と合わせて)
  5. 旅をもっと楽しく:馬ゆかりの寄り道アイデア
    1. 京都競馬場と藤森神社で“勝負運”を願う(相性のいい組み合わせ)
    2. 市内で出会える馬の像や馬頭観音像に会いに行く
    3. 雨でも楽しめる室内スポット(資料館・ミュージアム)
    4. 1日/2日のモデルコース(地図いらずの回り方)
    5. 服装と持ち物チェックリスト(砂ぼこり&日差し対策)
  6. まとめ

京都と馬の物語(入門)

京都 馬 午 神社仏閣

「神社仏閣×馬」という視点で京都を歩くと、見慣れた街に新しい輪郭が現れる。5月の光を切る蹄音、射礼の緊張、川床の涼気、山寺の静けさ。藤森神社・上賀茂神社・下鴨神社の神事、貴船神社の絵馬の物語、舞鶴・松尾寺の馬頭観音まで、由緒と実務を一つにまとめ、初めてでも迷わない“体感の手引き”に仕立てた。安全とマナー、行き方、季節のコツまで詰め込み、あなたの旅支度を最後まで支える。

「絵馬」の本当の意味とルーツ(貴船の白馬・黒馬の伝承)

神社に奉納する木札「絵馬」は、もともと本物の馬を神さまに捧げた古い儀礼が、時代とともに形を変えたものだと伝わる。旱魃が続けば雨乞いとして黒馬を、長雨が続けば晴れを願って白(赤)馬を奉納したという話は京都の貴船神社でも語り継がれ、同社は「絵馬発祥の地と伝わる」と紹介されることが多い。のちに生馬の奉納は費用や飼養・衛生の負担が大きく、土や木の小さな馬形、さらに板に馬の姿を描く「板立馬」へと簡素化が進み、現代の絵馬につながった。貴船本宮の手水舎近くには白馬・黒馬の像があり、授与所にはこの由緒を映した意匠の絵馬が並ぶ。伝承であることは明確にしつつ、雨も晴れも生活を支えるという感覚を胸に、一文で具体的に願いを書くと気持ちの整理がつきやすい。奉納後は社の焼納に委ね、区切りをつけることで次の一歩が軽くなる。

神社の「神馬」とは?(見られるタイミングと基本マナー)

神に奉仕する馬を「神馬(しんめ)」と呼び、京都では上賀茂神社などに神馬舎が置かれている。神馬の“出社日”や拝見できる時間、見学や撮影の可否は神社ごとに異なるため、当日の掲示・公式発表・係の指示が最優先だ。馬は聴覚・視覚ともに敏感で、フラッシュや大声、突然の身振りは強いストレスになる。ロープや結界の内側に入らない、馬の前後に回り込まない、勝手に触れたり餌を与えたりしない――この三つを徹底したい。まず拝殿で二礼二拍手一礼を行い、“神事の一部を拝見している”姿勢で臨むのが基本。混雑日は導線が調整されることもあるため、機材は最小限にして両手を空けておくと安全だ。結果として自分も他の参拝者も快適に過ごせる。

5月に集中する“馬の神事”をざっくり把握

京都で馬が主役になる行事は、新緑の5月に集中する。下鴨神社の流鏑馬神事は5月3日、走路は約400mで三つの的を順に射る構成(資料によって約500m表記もある)。上賀茂神社の競馬会神事(賀茂競馬)は5月5日、実際の競馳は例年14時頃で、午前から儀礼が段階的に進む。藤森神社の駈馬神事は同じく5月5日、13:00/15:00の二回奉納で小雨決行が通例だ。三者三様に「射る(下鴨)」「競う(上賀茂)」「魅せる(藤森)」と性格が異なるため、“何を見たいか”を明確にして移動計画を先に作ると満足度が上がる。行事は年により導線や開始時刻が調整されるため、必ず直前に公式情報を確認しよう。

参拝&観覧の安全ポイント(ロープ内に入らない等)

安全と信仰への配慮はどの会場でも最優先。結界・ロープの内側に入らない、馬の進路と真後ろに近寄らない、フラッシュや三脚は避ける、通路をふさぐ場所取りはしない――これだけで雰囲気は大きく良くなる。お子さん連れは大人が前に立ち、肩車は控える。砂じん対策にマスク、日差し対策に帽子と日焼け止め、飲み物は多めに。撮影派はレンズフードとクリーニングクロス、予備バッテリーを用意し、風の強い日はレンズ交換を極力避ける。終了直後は人の流れが一気に動くため、退場路を事前に把握しておくと混乱が減る。判断に迷ったら係の指示を最優先にし、「自分がされて嫌なことはしない」を合言葉にすれば外れない。

用語ミニ辞典(流鏑馬/競馬神事/駈馬 など)

流鏑馬(やぶさめ):疾走する馬上から三つの的を射る射礼。矢声、射手の所作、馬の集中が見どころ。
競馬会神事(賀茂競馬・くらべうま):左右の組に分かれ、儀礼を経て走りの優劣を競う古式競馬。勝敗だけでなく采配や装束の美も重要。
駈馬(かけうま):馬上の妙技・曲乗りを奉納する神事。藤森神社が著名。
神馬(しんめ):神に奉仕する馬。出社日・見学可否・撮影可否は神社の指示に従う。
絵馬:願いを書いて奉納する木札。“馬の奉納”が板立馬→絵馬へと変化したという伝承に由来。
葵祭:5月15日の本列(路頭の儀)を中心に、前後の前儀が連なる京都三大祭の一つ。


目の前で体感したい“馬の神事”カレンダー(春〜初夏)

藤森神社「駈馬神事」を迫力の至近距離で(5月上旬)

藤森神社の春季大祭「藤森祭」は毎年5月1〜5日に営まれ、最終日の5日に名物「駈馬神事」が奉納される。馬上逆立ちや横乗り、扇や傘を使う妙技などが次々披露され、参道の馬場を駆け抜けるたびに砂が立ち、歓声が波のように広がる。実施は例年13:00/15:00の二回で、小雨決行が通例。アクセスは京阪「墨染」駅から徒歩約7〜10分、JR奈良線「藤森」駅から徒歩約5分と覚えておくと迷いにくい。見応えのあるのは折り返しや減速帯で、望遠よりも“寄れる単焦点+高速連写”が歩留まり良好な場面が多い。安全面ではロープ際に身を乗り出さない、フラッシュを焚かない、通路をふさがないが鉄則。終演後に神輿や行列が続くこともあるため、案内に従って速やかに移動したい。砂じん対策のマスク、日差し対策の帽子・飲み物は必携だ。

上賀茂神社「競馬会神事(賀茂競馬)」の古式競馬(5月5日ごろ)

宮中の競馬会式に由来すると伝わる「競馬会神事」は、上賀茂神社で毎年5月5日に斎行される。装束姿の乗尻(のりじり)が左右の組に分かれ、儀礼を重ねたのち走りの優劣を競う。午前から段階的に式が進み、実際の「競馳(きょうち)」は例年14時頃。勝敗だけを追うのではなく、采配の合図、騎乗や駆歩の作法、衣紋の美しさに注目すると、古式の品格が立体的に浮かび上がる。アクセスは市バス4系統「上賀茂神社前」すぐ。神馬舎の出社日は別途案内が出るため、併せて確認すると“神馬との出会い”の機会が広がる。写真はコース外周のやや高い位置が全体を見渡しやすい。芝地は直射日光を受けやすく、帽子と飲み物は必携。帰路の混雑を避けるには、北山方面へ歩いて地下鉄に乗り継ぐルートも有効だ。

下鴨神社「流鏑馬神事」で矢が走る森を体感(5月3日ごろ)

世界遺産・下鴨神社の「流鏑馬神事」は毎年5月3日、糺の森の馬場で行われ、葵祭の前儀に位置づけられる。走路は「約400m」で三つの的を順に射抜く構成だが、媒体によっては「約500m」と記されることもあるため、表記の揺れがある点を理解しておくとよい。見やすい位置は“的を通過した少し斜め後ろ”。射手の表情と矢の軌跡、馬の伸びやかなフォームを一度に追える。木の根で足元が不安定な箇所も多いので、滑りにくい靴がおすすめ。開始時刻や観覧導線は年により調整されるため、直前の公式アナウンスの確認を。混雑時は頭上にカメラを掲げて周囲の視界を遮らない配慮が重要だ。矢声が森に響く緊張の時間は、静けさの中にこそ密度がある。

葵祭とのつながりを知る(“前儀”としての位置づけ)

5月の京都は、15日の葵祭本列(路頭の儀)に向け、前後の前儀が連なっていく。下鴨の流鏑馬神事は射礼として、上賀茂の競馬会神事は古式競馬として、いずれも五穀豊穣と都の安寧を祈る大きな流れの一部だ。個別の見どころを楽しみつつも、全体を“ひと続きの祈りの時間”と捉えると、所作や装束、祭具の意味が立体的に見えてくる。行事の合間に両社を歩き比べれば、同じ五月の光の下でも土地ごとの表情が違うことに気づくはず。導線や開始時刻はその年の体制で変わり得るため、地図アプリより現地の案内板と係の指示を信頼して動くのが結果的に早い。

撮影&観覧ベストポジションと混雑回避術

狙いどころは、流鏑馬なら“的の通過後の斜め後方”、競馬会神事なら“コース外周のやや高所”、駈馬なら“折り返し・減速点”。共通の大前提はロープから身を乗り出さないことだ。無理な望遠より、寄れる短め焦点+高感度設定のほうが成功率が高い場面も多い。人波は開始直前と終了直後に密になるため、30〜60分前の場所確保→終盤は早めの撤収準備が快適。帽子・日焼け止め・飲み物は季節を問わず必携。センサー汚れを防ぐため風の強い日はレンズ交換を極力避ける。家族連れは端の見通しが良い位置を選び、肩車は控える。礼節を守れば、会場全体が気持ちよく、写真の歩留まりも上がる。


貴船神社で「絵馬」をたどる

白馬・黒馬の奉納伝承を知る(雨乞い・晴乞い)

貴船神社は水の神を祀る総本宮。朝廷が旱魃や長雨の折に勅使を遣わし、祈雨には黒馬、止雨には白(赤)馬を奉納した――という伝承が広く知られている。のちに儀礼は簡素化され、馬を描いた板=板立馬の奉納が定着し、これが絵馬の原型になったとされる。こうした経緯から、貴船は「絵馬発祥の地と伝わる」と紹介されることが多い。現地では白馬・黒馬の像や案内表示、授与品がこの物語を伝えており、参拝は本宮→中宮(結社)→奥宮の順に歩くのが自然。最後に絵馬を静かに掛け、願いを一文に整えて手を合わせる。雨も晴れも暮らしに必要という感覚に立ち返ることで、日常の優先順位も見直しやすくなる。

絵馬の今と昔(なぜ“馬の絵”になった?)

古代日本では馬が神の乗り物と考えられた。祈りの中心が“生馬”から“馬形”、さらに“馬を描いた板”へ移ったのは、費用や衛生・維持の面で無理が少なく、広く参加できる合理的な姿でもあった。現代の絵馬は願意や干支、社の由緒に合わせた意匠が多彩で、貴船では白馬・黒馬のモチーフが根強い人気だ。書くときは個人情報保護の観点から住所・氏名は簡略にし、願いは一文で具体的に。表裏の指定がある場合は案内に従い、奉納後は持ち帰らず焼納にゆだねる。仲間と願いを共有すると、帰り道の会話も自然と前向きになり、何を大切にしたいかが見えてくる。定番の絵馬も起源を知れば、ただの観光アイテムではなく“心のメモ”になる。

水占みくじや境内の見どころ

貴船名物「水占(みずうら)みくじ」は、紙を御神水に浮かべると文字が浮かび上がる仕掛け。水の社ならではの清らかな体験で、案内は多言語にも対応している。開門時間は季節で変動し、目安として5/1〜11/30は6:00〜20:00、12/1〜4/30は6:00〜18:00の案内が用いられることが多い(年や行事で変わるため最新情報を確認したい)。参道は石段や起伏が多く、雨の日は滑りやすいので溝の深い靴が安心だ。朱色の灯籠が並ぶ階段、本宮の手水舎周辺、奥宮の森は写真映えする定番スポット。朝夕の斜光を狙えば人が少なく、空気感まで写せる。手水で清め、鈴を静かに鳴らしてから参拝すると気持ちが整う。

貴船エリアの歩き方(季節の注意点・川床の基本)

川面に座敷を張る「川床(かわどこ)」は貴船の夏の風物詩。営業は概ね5月1日〜9月30日だが、店により開始日・時間・休業日・雨天時の扱いが異なる。水辺は想像以上に涼しいため、初夏でも薄手の羽織があると快適。床は濡れて滑りやすいので、サンダルよりグリップの良い靴が安全だ。人気店は予約必須で、到着遅延時の連絡方法やキャンセル規定は事前に確認しよう。アクセスは叡山電車「貴船口」駅から京都バスで「貴船」下車、徒歩約5分。繁忙期は復路のバス待ちが長くなるため、時間と体力に余裕を持つ計画が鍵になる。夜間は足元が暗くなるため、早めの行動が安心だ。

叡電で行くモデルルート(貴船—鞍馬の組み合わせ)

出町柳駅から叡山電車で貴船口へ。バスで本宮に上がり、参拝・水占・絵馬奉納を済ませて川床で昼食。奥宮まで歩いたら、いったん貴船口へ戻って叡電で鞍馬へ移動。ケーブルと徒歩を組み合わせ、鞍馬寺や木の根道を散策すれば“水と森”の一日が完成する。叡山電車の一日乗車券「えぇきっぷ」は大人1,200円/小児600円(料金は変更される場合あり)。乗り降り自由で寄り道に強く、撮影時間の調整も容易だ。帰路は出町柳で京阪に乗り換えると市内南部へのアクセスがスムーズ。季節によりライトアップや特別拝観が行われるため、直前の公式情報で時間配分を最適化しよう。坂道と階段が続く区間では、こまめな水分補給と休憩が大切だ。


京都府北部へ:舞鶴「松尾寺」の馬頭観音

西国三十三所29番「松尾寺」で馬頭観音を拝む(唯一の本尊)

舞鶴市の松尾寺(まつのおでら)は西国三十三所の第二十九番札所で、三十三所の中で唯一、本尊に馬頭観音を安置する寺として知られる。山の懐に抱かれた静かな境内は、参道の途中から海と里山の景色がひらけ、京都市街の寺社とは異なる時間の流れを味わわせてくれる。馬頭観音は「迷いを断つ力」を象徴する尊格で、古くは畜産や運搬の安全、近年は交通安全や競馬関係者の信仰も集める。お堂の前では深呼吸をしてから一礼し、静かに手を合わせたい。納経や御朱印は現地の案内に従えば難しくない。上り下りが続くため、歩きやすい靴と十分な水分を。天候が変わりやすい山寺では薄手のレインウェアが役立つ。静けさに身を置く時間が、旅の印象をじわりと深めてくれる。

馬頭観音ってどんな仏さま?(役割とご利益)

馬頭観音は観音菩薩が憤怒の相を示し、煩悩や障りを断ち切る“目覚め”の働きを表す。頭上に馬の頭(ばとう)をいただくのが特徴で、厳しい表情は怖がらせるためではなく、弱った心を起こして前へ進ませる慈悲のかたちと受けとめられてきた。牛馬への慈しみ、旅や運搬の安全、心の迷いを断って道を開く力を授ける仏さまとして庶民にも親しまれる。松尾寺でこの尊格を本尊として拝めるのは、三十三所の中でここだけという特別さ。迷いが多いときは祈りを一つに絞り、姿勢を正して短く具体的に願うと、自分の中の優先順位がはっきりする。参拝後、山風に当たって深呼吸すると、緊張がほどけて気持ちが軽くなる。

境内のみどころ&御朱印

山門をくぐると空気がひんやり変わり、鳥の声と風の音が際立つ。本堂で本尊に手を合わせ、御影や御朱印をいただける(拝観・授与の時間は現地の案内に従う)。四季の移ろいは鮮やかで、春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉は格別。参道の石段には苔むした箇所もあり、雨後はとくに滑りやすいので下りは慎重に。境内には休憩できるベンチがあるため、無理のないペース配分を心がけたい。撮影は周囲の参拝者に配慮し、三脚は控えめに。晴れていても山では天気が急変するので、折りたたみ傘とレインウェアの携行が安心だ。静けさに耳を澄まし、建物や仏像の表情を丁寧に味わう時間こそ、ご利益そのものだと感じられる。

京都市内からのアクセスと所要時間

公共交通なら、JR京都駅から山陰本線(嵯峨野線)で福知山・舞鶴方面へ向かい、東舞鶴で小浜線に乗り換え、JR松尾寺駅下車。駅からは徒歩約45〜50分、バス利用時は「松尾寺口」から徒歩約30〜40分が目安となる。いずれも山道歩きが含まれるため、出発は午前中にし、日没前に下山できる逆算が必要だ。車の場合は府道564号などを経由するが、冬期は積雪や路面凍結に注意。道中のコンビニは限られるため、飲み物と軽食は手前の市街地で確保しておくとよい。乗り継ぎの本数が少ない時間帯もあるので、帰りの時刻表まで確認してから出発したい。安全最優先の計画が、現地での時間を豊かにしてくれる。

周辺観光(舞鶴赤れんが・天橋立方面と合わせて)

松尾寺と組み合わせるなら、港町の景色を満喫できる「舞鶴赤れんがパーク」が好相性。歴史的建造物群を活用した施設で、海風が心地よく、カフェや資料展示をゆっくり回れる。さらに時間があれば、北近畿のハイライト・天橋立方面へ足を延ばすのも良い。公共交通派は東舞鶴駅周辺で早めに食事を済ませ、移動をコンパクトにまとめると楽だ。車旅派は海鮮市場で地の魚を味わい、夕暮れの湾を眺めてから帰路へ。山寺の静けさと港町の賑わいというコントラストが、旅の記憶を豊かにしてくれる。時間に余裕があれば、舞鶴湾クルーズや赤れんが博物館まで足を延ばすと、海の京都の歴史の層がより立体的に感じられる。


旅をもっと楽しく:馬ゆかりの寄り道アイデア

京都競馬場と藤森神社で“勝負運”を願う(相性のいい組み合わせ)

藤森神社は“勝運と馬の神社”として知られ、近隣の京都競馬場と組み合わせると“馬づくし”の一日になる。京都競馬場は京阪「淀」駅から徒歩約2分と案内される一方、JRA英語版では“約5分”の表記もあるため、海外ゲストと合流する場合は余裕のある待ち合わせが無難だ。午前は藤森で参拝し、由緒に触れ、午後はパドックで馬の歩様や耳・尾の動きを観察してからレース観戦へ。ビギナーは「落ち着いて歩けているか」「毛づやはどうか」を見るところから始めよう。入場料は原則200円(開催や指定席販売で変動あり)。開催日は帰りの電車が混むため、混雑時間を外すか、駅で1〜2本見送る余裕を。暑い日は日差し対策と水分、寒い季節は風を通しにくい上着を用意すると快適だ。

市内で出会える馬の像や馬頭観音像に会いに行く

白馬・黒馬の像は貴船神社本宮の手水舎近くで出会える。絵馬の物語を視覚的に理解できる格好の手がかりだ。上賀茂神社では神馬舎に白馬の神馬が出社する日があり、案内に従えば拝見できる(出社日・見学可否・撮影可否は神社の指示に従う)。また市内の寺社や霊宝殿には馬頭観音像を安置するところもある。例として千本釈迦堂(大報恩寺)では、国宝「六観音菩薩像」の一体として木造の馬頭観音が安置されており、“石仏”ではない点に注意。撮影の可否は施設ごとに異なるため、受付で必ず確認し、他の参拝者の妨げにならない配慮を心がけたい。静かな堂内では、歩幅と声量を小さくするだけで雰囲気が守られる。

雨でも楽しめる室内スポット(資料館・ミュージアム)

天候が崩れた日は、寺社の宝物館や市内のミュージアムに切り替えるのが賢い。京都文化博物館や京都市京セラ美術館は企画展が多彩で、雨でも快適に過ごせる。社寺の収蔵品公開は日程が限られることがあるため、事前確認が重要だ。館内は照度が低い場合もあり、撮影可の場所でもフラッシュは避ける。濡れた傘は傘袋や傘立てを利用し、床を滑らせないように。歩く距離が短くなる日は、喫茶や和菓子店を挟んで「文化×休息」の一日を作ると、旅の満足度が落ちにくい。雨音に耳を澄ませながら展示を味わうと、晴れの日とは違う集中が生まれる。

1日/2日のモデルコース(地図いらずの回り方)

【1日:市内集中】朝・下鴨神社(流鏑馬期は早め到着)→出町で昼食→午後・上賀茂神社(儀礼〜競馳を観覧)→北山で夕食。時間が許せば社家町も散策。
【1日:南部で“馬”】朝・藤森神社(社域散策と由緒拝読)→伏見の酒蔵や和菓子店→午後・京都競馬場で観戦。帰路は京阪特急で座れる時間帯を狙う。
【2日:洛北&奥座敷】1日目・下鴨→上賀茂→北山泊/2日目・叡電で貴船→川床で昼→奥宮→鞍馬→出町柳。足元に不安があれば木の根道は短縮。
【2日:北部遠征】1日目・舞鶴の松尾寺→赤れんがパーク→舞鶴泊/2日目・天橋立方面→京都市内。移動本数に注意し、帰路の時刻表は早めに確認。
いずれのプランでも、現地の案内と交通本数を優先する“引き算の計画”が失敗しにくい。予定を詰め込みすぎないことが、結果として深く楽しむ近道だ。

服装と持ち物チェックリスト(砂ぼこり&日差し対策)

帽子/日焼け止め/飲み物(こぼれにくいボトル)/マスク(砂じん対策)/歩きやすい靴/ウェットティッシュ/モバイルバッテリー/薄手のレインウェア/絆創膏/小さめのタオル。撮影派はレンズフード、ブロア、クロスを。川床や山寺では気温が急に下がるため薄手の羽織を一枚。荷物はリュックで両手を自由にし、貴重品は内ポケットへ分散。行事の日はゴミを持ち帰る小袋が役に立つ。これだけ整えておけば、急な天候変化や混雑でも落ち着いて動け、結果として“よく見える・よく楽しめる”一日に近づく。靴擦れ対策としてかかとに絆創膏を事前に貼るのも小さいが効く工夫だ。


まとめ

京都で“馬に会う旅”は、迫力の観覧だけでなく、祈りと暮らしの知恵を体で感じる体験だ。藤森の駈馬で躍動を浴び、上賀茂の競馬会神事で古式の品格に触れ、下鴨の流鏑馬で矢が走る森を体感する。貴船では「絵馬発祥の地と伝わる」物語と水占で心を整え、舞鶴・松尾寺では唯一の本尊・馬頭観音に手を合わせる。安全と礼節、そして最新の公式情報の確認――この二つを守れば、初めてでも深く楽しめる。5月の光、装束の色、馬の息づかい。自分の歩幅で重ねた実感こそ、旅の記憶を確かなものにしてくれる。

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