第1章 山梨で「厄」と向き合うためのやさしい基礎知識

「今年、自分は厄年らしい。」
そんな話を耳にした瞬間、胸のあたりが少しざわっとした経験はないでしょうか。特別な理由はないのに、「何か悪いことが起きるんじゃないか」と落ち着かなくなってしまう。けれど、厄年は本来、「不幸が決まっている年」ではなく、「体や環境が変わりやすいから、少し慎重に過ごそう」という合図のようなものです。
山梨には、富士山を仰ぐ神社や、歴史あるお寺、素朴であたたかい温泉街がそろっています。そこを訪れて厄払いを受ける時間は、自分や家族のこれまでをねぎらい、「ここからの一年をどう過ごしたいか」を静かに考えるための、ぜいたくな休憩時間と言えるかもしれません。
この記事では、山梨で厄払いをしたい人に向けて、エリアごとの寺社の特徴や、温泉やグルメとの組み合わせ方、準備しておきたいこと、厄年の一年を穏やかに過ごすためのコツまでを、できるだけ分かりやすくまとめました。初詣シーズンに限らず、「自分にとっての節目」に合わせていつでも使えるガイドです。不安な一年を少しでも軽くし、自分らしいペースで歩んでいくためのヒントとして、役立ててもらえたらうれしいです。
山梨の風土と「厄」との付き合い方
山梨という土地を地図で見ると、海が一切なく、ぐるりと山々に囲まれていることがよく分かります。南には富士山、北には八ヶ岳と南アルプス、西には身延山や山懐に抱かれた小さな集落。川も、富士川・笛吹川・桂川など、山から流れ出した水が盆地へと集まり、生活を支えています。こうした環境の中で暮らしてきた人たちは、昔から「山の神」「水の神」に対して、感謝と同じくらい畏れの気持ちを持ってきました。大雨や土砂崩れ、干ばつなどの自然災害に対して、祈りと儀礼で向き合ってきた歴史があります。
その流れのなかで、「厄」という考え方も根付いていきました。厄年は、単に不幸が起きる年というより、「体力や環境が変わりやすく、無理をすると崩れやすい時期」として意識されてきました。たとえば、働き盛りの年齢は仕事の責任も増え、体も無理をしがちですし、女性は結婚や出産など大きな節目が重なりやすい年齢があります。そうしたタイミングを「厄」と呼び、「気をつけようね」と声を掛け合うための目印にしてきたのです。
山梨で厄払いを受ける良さは、この「自然と祈りの距離の近さ」にあります。富士山を背にした神社や、渓谷の奥にひっそりとたたずむお寺、温泉街の高台に建つ社。手を合わせたあと、ほんの数分歩くだけで川の音が聞こえたり、温泉の湯気が立ち上るのを眺められたりします。厄をはらう祈祷自体も大切ですが、その前後に自然の中で深呼吸をし、「ここまでよくやってきたな」と自分をねぎらう時間を持てることが、山梨らしい魅力なのです。
厄年と数え年をざっくり確認(2025〜2026年前後と一生の節目)
厄払いの計画を立てる前に、「そもそも自分は厄年なのか?」をゆるく確認しておきましょう。一般的には、数え年で男性は25歳・42歳・61歳、女性は19歳・33歳・37歳・61歳が大きな節目とされています。数え年とは、生まれた年を1歳と数え、元日を迎えるごとに1歳ずつ年を重ねる考え方です。今は満年齢に慣れているので少しややこしく感じますが、多くの神社やお寺のサイトには、毎年の「厄年早見表」が掲載されているので、自分の生まれ年を探せばすぐに確認できます。
また、地域や宗派によっては、4歳・13歳・70歳・77歳・80歳などを節目として、子どもや高齢の人の厄を意識する場合もあります。七五三と同じように、成長や長寿を祝う意味合いが強い年齢です。厄年の年齢は「絶対にこのとおり」という共通ルールがあるわけではなく、「この辺りの年齢は体や環境の変化が大きいから、少し気を付けよう」という目安になっている、と考えると分かりやすいでしょう。
2025〜2026年前後でいうと、たとえば2001年生まれの男性が25歳の本厄、1984年生まれの男性が42歳の本厄というように、よく紹介されています。女性では、2007年生まれが19歳、1992年生まれが33歳、1988年生まれが37歳の厄にあたる、という具合です。ただし、ここでも大切なのは「表に当てはまるかどうか」より、「今の自分が節目だと感じているかどうか」です。仕事や家庭環境に大きな変化があった年、体調のゆらぎを強く感じている年などは、厄年の表にぴったり当てはまらなくても、「山梨に一度行っておこうかな」と思い立ったときが、あなたのタイミングといえます。
山梨の気候とエリアごとの特色から考えるベストシーズン
山梨の気候を一言で説明すると、「内陸らしく夏暑く冬寒い」が基本です。ただ、その中身はエリアによってかなり違います。甲府盆地は、周りを山に囲まれた地形の影響で夏は特に暑く、全国の最高気温ランキングの常連になるほどです。一方で冬は冷え込みが強く、朝方には氷点下になる日も多くなります。晴天率が高く、空気がカラッとしているのはうれしいポイントですが、外で待つ時間が長くなる参拝では、暑さ・寒さの対策が欠かせません。
富士五湖や山中湖周辺などの高地に行くと、同じ山梨でも気温はぐっと下がります。夏でも日陰に入るとひんやりすることが多く、夜は上着がないと寒い日もあるほどです。逆に冬は雪が降りやすく、道路の凍結やチェーン規制がかかることもあります。身延や下部温泉などの南部エリアは、盆地ほどの極端な暑さはないものの、やはり冬は冷え込みます。天気予報を見るときは「山梨県内」とひとまとめにせず、自分が行くエリアの市町村名でチェックするのがおすすめです。
厄払いのベストシーズンは、人によって違います。寒さが得意なら、空気が澄んで富士山がきれいに見える冬〜早春が向いています。桜や新緑が好きなら、3〜5月の春。果物狩りとセットで楽しみたいなら夏〜初秋、紅葉やしっとりした温泉街が好きなら10〜11月が狙い目です。厄払い自体は一年中受け付けている寺社も多いので、「自分が一番リラックスできる季節」を基準に決めてしまって大丈夫です。混雑が苦手な人は、年末年始と節分のピークを避けて、平日にゆっくり訪れるのも良い選択です。
一人・家族・友だちと行くときの心の準備
厄払いというと、「家族みんなで行く行事」というイメージを持つ人も多いと思います。しかし、実際には一人でふらっと山梨を訪れて、静かに祈りの時間を過ごす人も少なくありません。一人旅の良さは、自分のペースだけを大事にできることです。朝早く起きられたら朝いちばんで参拝してもいいし、電車に揺られてゆっくり本を読みながら向かうのも自由。境内のベンチに座って、自分のこれまでのことや、これからの一年で大切にしたいことをメモ帳に書き出してみるなど、心の整理にたっぷり時間を使えます。
家族と一緒に行く場合は、その時間自体が「家族会議」のような意味を持ってきます。誰の厄払いなのかを決めつつ、他の家族も一緒に健康と安全を祈るケースが多いでしょう。小さな子どもがいると、祈祷の時間が長く感じられて退屈してしまうこともあるので、待ち時間に食べられるおやつや、静かに遊べるおもちゃを一つ用意しておくと安心です。帰り道に「今年はどんな一年にしたい?」と自然に話題にできるのも、家族での厄払いならではの良さです。
友だち同士での厄払い旅は、少しカジュアルで、でも心の深い話もしやすい雰囲気があります。たとえば、「午前中に祈祷を受けて、午後は温泉とカフェでゆっくりおしゃべり」という流れにすると、日ごろ話せなかった悩みや不安も、自然と口にしやすくなります。大事なのは、誰と行く場合でも「厄だから怖い」という空気を強くしすぎないことです。「ここまでの自分、お疲れさま」「これからもよろしくお願いします」と、山や川に挨拶しに行くような気持ちで出かけると、旅全体がぐっと明るくなります。
神社とお寺、山梨でどちらを選ぶかの考え方
山梨には、厄除けで知られる神社もお寺も数多くあります。「どちらに行くのが正しいのか」と悩む人もいますが、結論から言えば、どちらを選んでも大丈夫です。基本的に、神社では神さまに、寺院では仏さまに祈りますが、「災いを遠ざけ、心身を整えたい」という願いの根っこは同じです。昔から、その土地ごとに人々が「ここにお願いしたい」と感じてきた場所が残ってきた結果が、今の寺社の姿だと考えると分かりやすいでしょう。
選ぶときには、いくつかのポイントを比べてみると決めやすくなります。一つ目はアクセスです。電車やバスで行きやすい場所なのか、車がないと厳しいのかで、旅の難易度が変わります。二つ目は、一緒に行く人のイメージ。「初詣はいつも神社だから、厄払いも神社がいい」「先祖代々お寺との付き合いがあるから、今回はお寺にしよう」といった、家族の感覚も大切にしたいところです。三つ目は、周辺環境。温泉街の近くが良いのか、渓谷や山の景色が見える場所が良いのかで、自然との距離感が変わります。
迷ったら、写真や公式サイトを見ながら、「ここに立っている自分」を想像してみてください。鳥居をくぐってまっすぐ伸びる参道を歩きたいのか、石段を上りながら山の空気を吸いたいのか。最初は直感的な「なんとなく好き」で選んでも問題ありません。行く前に、神社なら二礼二拍手一礼、お寺なら合掌して一礼するなど、基本的な作法だけ軽く確認しておけば、当日慌てることも少なくなります。
第2章 エリア別・山梨で厄払いに訪れたい主な寺社
甲府・湯村温泉エリアで足を運びやすい厄除けスポット
甲府駅からバスやタクシーで北へ向かうと、湯村温泉を中心とした一帯に、厄除けで知られる寺社が集まっています。その代表格が、湯村温泉の入り口近くにある塩澤寺(えんたくじ)です。ここには「厄除地蔵尊」がまつられており、毎年2月に開かれる大祭は、正午から翌日の正午まで24時間続くことで有名です。この日だけは、地蔵さまが人々の願いを特によく聞いてくださると伝えられており、県内外から多くの参拝者が訪れます。年の数だけ丸いものを供える風習など、昔ながらの素朴な信仰の形が今も残っています。
塩澤寺の良さは、祈祷を受けたあとすぐに温泉街へ足を運べるところにもあります。湯村温泉は、弘法大師が杖で地面を突いた場所から湯が湧いたという伝承がある温泉地で、武田信玄の隠し湯としても語り継がれています。宿の庭からは、甲府の街並みと山々が一望できるところも多く、日帰りでも宿泊でも、厄払いの後に心と体をゆっくりほぐすにはぴったりです。
甲府駅周辺では、戦国武将・武田信玄公をまつる武田神社も人気のスポットです。勝運や仕事運のイメージが強い神社ですが、人生の節目として厄除けの祈願に訪れる人も少なくありません。甲府城址や信玄公ゆかりの史跡も近く、歴史好きなら一日かけて歩き回りたくなるエリアです。モデルとしては、午前中に塩澤寺で祈祷を受け、午後は武田神社と城址を散策してから温泉宿へ、という流れが組みやすいでしょう。
甲府盆地北側〜昇仙峡エリアで自然と一緒に祈る旅
甲府盆地の北側に広がる昇仙峡エリアは、「渓谷美」と「祈りの場」がセットになったような場所です。花崗岩の奇岩がそそり立つ渓谷を川沿いに歩いていくと、マイナスイオンという言葉がこれ以上ないくらいぴったりの景色が続きます。季節によって表情が変わり、新緑の時期は淡い緑に包まれ、秋には紅葉と岩肌のコントラストが見事です。歩きやすい遊歩道が整備されているので、体力に合わせて途中で引き返すこともできます。
渓谷の奥にある金櫻神社は、金運と厄除けのご利益で知られる神社です。ここには「金の成る木」とも呼ばれる御神木・鬱金桜(うこんざくら)があり、桜が咲く頃に参拝して、この木を拝みながら水晶のお守り「生涯守り」を授かると、一生お金に困らないという言い伝えがあります。もちろん、これはあくまで昔から語り継がれてきた言葉であり、宝くじが必ず当たるといった話ではありませんが、「これからも仕事をがんばろう」と気持ちを新たにするきっかけにはなります。
昇仙峡エリアには、ロープウェイや展望台もあり、天気の良い日には富士山や南アルプスを一望できます。厄払いを済ませたあと、高い場所から甲府盆地全体を見渡すと、「自分の悩みも、この景色の中の小さな点なんだな」と少しだけ気が楽になるかもしれません。車で行く場合は、山道にカーブが多いので、特に冬場はスタッドレスタイヤやチェーンの準備を忘れずに。公共交通機関を使うなら、バスの本数と最終時間を事前に確認しておけば安心です。
富士吉田・河口湖エリアで富士山とともに参拝できる場所
富士山の北側に広がる富士吉田・河口湖エリアは、「厄払いと絶景」を同時に楽しみたい人にぴったりです。富士急行線の富士山駅からもほど近い北口本宮冨士浅間神社は、富士山北口登山道の起点として古くから信仰を集めてきました。杉の大木に囲まれた参道や、重厚な本殿は、一歩足を踏み入れるだけで空気が変わったように感じられます。ここでは、人生儀礼の一つとして厄除けのご祈祷も行われており、神職による祝詞とともに、静かな時間を過ごすことができます。
この神社のご祈祷は、通常は祭典や挙式の時間帯を除き、当日受付で随時行われています。ただし、土日や連休、七五三の時期などは混雑することもあり、行事によって受付時間が前後する場合もあります。そのため、遠方から訪れるときは、事前に公式サイトを確認したり、電話で祈祷時間を尋ねておくと安心です。「予約はいらないけれど、念のため確認してから行く」というスタンスがちょうど良いでしょう。
同じエリアで「金運の神社」として知られる新屋山神社は、近年テレビや雑誌に取り上げられたことで全国的に名前が広まりました。観光記事などでは「日本三大金運神社の一つ」と紹介されることもありますが、これは公式な格付けではなく、あくまで俗称です。お社自体はこぢんまりとしながらも、山の斜面に沿って社が並び、静かな雰囲気が漂います。富士吉田市街からアクセスしやすい本宮と、富士山の中腹に位置する奥宮があり、奥宮は冬季閉鎖されることもあるので注意が必要です。
身延・南部エリアでじっくり祈りたいお寺と温泉街
山梨県の南部、身延町にある身延山久遠寺は、日蓮宗の総本山として全国的に知られています。山全体が信仰の場になっているようなスケール感で、本堂へ続く急な石段「菩提梯」は、上りきるころには息が上がるほどの運動量です。ロープウェイで山頂の奥之院へ上がれば、富士川や南アルプス方面の眺めも楽しめます。久遠寺では、無病息災や家内安全を願う人が多く訪れ、節目の年に合わせて厄除けの祈願を受ける人も少なくありません。
身延の良さは、時間の流れがゆっくりしていることです。参道沿いには宿坊や小さな旅館が建ち並び、宿泊すると早朝のお勤め(読経)に参加できるところもあります。朝もやの中で響くお経の声を聞いていると、自分の悩みごとも、長い歴史の中の小さな波に思えてくるから不思議です。厄払いをきっかけに、信仰の深い世界に触れてみたい人には、とても相性の良いエリアといえます。
少し足を延ばすと、下部温泉などの温泉地もあります。ここは、古くから湯治場として知られ、武田信玄が戦で負った傷を癒やしたという伝承も残っています。川沿いにこぢんまりとした宿が並び、派手さはないものの、「静かに体を休める」ことに集中できる雰囲気があります。身延山で祈りの時間を持ち、下部温泉で体をじっくり温める一泊二日の組み合わせは、「心と体の両方の厄払い」として、とてもおすすめです。
車で巡りたい差出磯大嶽山神社と周辺ドライブコース
山梨市方面へ視線を向けると、車で巡るのに適した神社もいくつかあります。富士川のほとりに鎮座する差出磯大嶽山神社は、渓谷と岩場に囲まれた独特の景観が印象的な神社です。昔から火難除けや厄除けの信仰を集めてきた場所で、鳥居の向こうには清流が流れ、日常の喧騒から切り離されたような静けさがあります。社殿の背後にそびえる岩肌は迫力があり、自然そのものがご神体のように感じられる空間です。
もう一つ、山あいにある大嶽山那賀都神社も、車で訪れたいスポットです。標高の高い位置にあるため、道中はカーブが多い山道になりますが、そのぶん、たどり着いたときの達成感はひとしおです。ここも火防や厄除けの神として信仰されており、山の空気を胸いっぱい吸い込んで手を合わせると、「余計なものを置いてきた」ような気持ちになります。
このエリアを巡るなら、レンタカーか自家用車がほぼ必須です。移動の途中には、道の駅やフルーツ農園、温泉施設などが点在しているので、休憩を兼ねて立ち寄るとよいでしょう。運転中は、「厄年だからこそ安全運転」を合言葉に、スピードを控えめにしてカーブやトンネルに注意することが大切です。帰り道に甲府盆地の夜景が見下ろせる高台に寄れば、昼とは違う景色の中で、今日一日のことを静かに振り返ることができます。
第3章 山梨での厄払いの準備と当日の流れ
予約が必要な寺社と当日受付できる場所の調べ方
山梨で厄払いを受けようと決めたら、まず確認したいのが「予約の有無」です。寺社によって、完全予約制のところもあれば、原則当日受付のところもあり、祭典の日だけ特別に整理券制にしているケースもあります。公式サイトがある神社やお寺なら、「ご祈祷」「祈願」「年中行事」といったページに、受付時間や人数制限、予約の要不要が書かれていることが多いので、最初にそこをチェックするとよいでしょう。
特に人気の高い神社では、「予約不要だが、行事によっては待ち時間が長くなることがある」といった書き方をしているところもあります。北口本宮冨士浅間神社のように、基本的には祭典と挙式中以外は随時受付というスタイルの神社でも、大きな祭りの日には一般の祈祷が一時中断されることがあります。遠方から訪れる場合は、「この日しか行けない」という日程になることも多いので、事前に電話で「その日に個人の厄除け祈祷を受けられるか」「何時ごろが比較的空いているか」を聞いておくと安心です。
当日受付の場合でも、受付終了時間に注意が必要です。「16時まで」と書いてあると、16時ちょうどに着けば間に合うイメージがありますが、実際にはその前に受付を締め切ることもあります。余裕を持って、少なくとも受付終了の30分〜1時間前に到着するつもりでスケジュールを立てておきましょう。土日や連休は、さらに早めに行くと安心度が上がります。
服装と持ち物:季節ごとに気をつけたいポイント
厄払いの日の服装は、「きれいめで動きやすく、派手すぎない」が基本です。スーツでなければいけない、という決まりがあるわけではありませんが、神さまや仏さまの前に出る場なので、あまりラフすぎる服装は避けたいところです。男性なら、襟付きシャツにジャケットと落ち着いた色のパンツ、女性なら、シンプルなワンピースやブラウスとスカート、パンツスタイルなどが無難です。ジーンズでも、色が濃くてダメージ加工が目立たないものであれば許容されることが多いですが、ビーチサンダルや派手なロゴ入りTシャツなどは控えた方がよいでしょう。
季節ごとの注意点もあります。冬の甲府盆地はかなり冷え込み、境内で待っている間に体の芯まで冷えてしまうことがあります。コートの下に薄手のインナーを重ねたり、首元を守るマフラーやストール、貼るカイロなどを準備しておくと、祈祷の最中に震えてしまう心配が減ります。足元も、女性はタイツと靴下を二重にするなど、防寒を意識すると安心です。逆に夏は、強い日差しと暑さで体力を奪われがちです。薄手の長袖シャツや日傘、帽子などで直射日光を避け、水分補給のためにペットボトルを一本持っておくと、熱中症の予防になります。
持ち物としては、御祈祷料を納めるための現金が必須です。クレジットカードに対応していない寺社も多いので、あらかじめ必要額を現金で用意しておきましょう。そのほか、小さなメモ帳とペンがあると便利です。受付で家族の生年月日や住所を書く場面があるほか、お願いしたい内容を事前に箇条書きしておくと、緊張して頭が真っ白になってしまうことも防げます。ハンカチやティッシュ、健康保険証、スマホの充電など、外出の基本セットも忘れずに準備しましょう。
初穂料・お布施・御祈祷料の目安とお金の包み方
厄払いにかかる費用は、神社では「初穂料」、お寺では「お布施」や「御祈祷料」といった呼ばれ方をします。金額は寺社ごとに設定されていますが、多くの場合は5,000円〜1万円前後が一つの目安です。中には、「5,000円・7,000円・1万円」といった形で何段階かに分かれているところもあり、その金額によって授与されるお札の大きさや種類が変わることがあります。家族全員分をまとめて祈祷してもらう場合は、その人数に応じて少し高めの設定になることもあります。
お金の包み方については、難しく考えなくて大丈夫です。コンビニでも購入できる白いのし袋や、紅白の水引が印刷されたご祝儀袋を用意し、表面の中央に「初穂料」または「お布施」と書き、その下に自分の名前を記入します。中に入れるお札は、新札である必要はありませんが、できるだけ折れや汚れの少ないものを選びましょう。向きは、人物の顔が上になるように揃えて入れるのが一般的です。
家族の厄をまとめてお願いする場合は、「代表者名+外一同」と書くか、受付で渡す申込用紙に一人ずつ名前と数え年を書き込む形が多いです。どう書けばよいか迷ったら、受付で「家族全員分をお願いしたいのですが、どのように書けば良いですか?」とひと言相談すれば、その寺社のルールに沿って教えてもらえます。大切なのは、形式よりも気持ちです。無理のない範囲で、「このくらいなら心から納められる」と感じる金額を選びましょう。
受付から祈祷、お札を受け取るまでのおおまかな流れ
当日の流れは寺社によって細かい違いはありますが、おおまかには次のようなステップになります。まず、境内に着いたら手水舎で手と口を清めてから本殿の方へ向かい、その近くにある社務所や寺務所で厄払いを受けたい旨を伝えます。ここで、申込用紙に名前・住所・生年月日(数え年)などを書き込み、初穂料やお布施を納めます。その後、番号札や待合室を案内され、一定人数がそろうまで待機することが多いです。
ご祈祷が始まる時間になると、係の人が本殿や本堂へ案内してくれます。神社では、神職の方が祝詞を奏上し、太鼓や鈴の音が響く中で、玉串を神前にささげたり、お神酒をいただいたりします。お寺では、僧侶の読経が続き、護摩木を焚く様子が見られる場合もあります。どちらの場合も、作法が分からなくても周りの人の動きをよく見ていれば大丈夫です。玉串の向きや頭を下げるタイミングなど、細かい点は多少違っても、真剣な気持ちで手を合わせていれば、それがいちばん大切です。
祈祷の時間は、おおむね15〜30分ほど。長時間の正座が難しい人向けに椅子席を用意している寺社も多いので、心配な場合は事前に尋ねてみましょう。祈祷が終わると、名前を呼ばれてお札やお守りが手渡されます。その場で、「このお札は家でどのようにおまつりすればよいですか?」「方角に決まりはありますか?」と聞いておくと、帰ってから迷わずに済みます。最後に、あらためて本殿や本堂の前で一礼し、「ありがとうございました」と心の中でつぶやいてから境内を後にすると、気持ちの区切りがつきやすくなります。
受け取ったお札やお守りを家でどうまつるか
厄払いで授かったお札やお守りは、家に持ち帰ってからが本番ともいえます。神社のお札は、できれば神棚におまつりするのが理想ですが、最近は神棚がない家庭も多いので、清潔な棚の上や、リビングの目線よりやや高い位置のラックなどに専用のスペースを作る人も増えています。向きについては、南向きか東向きが良いとされますが、部屋の構造上難しい場合は、「家族が日常的に目にしやすい場所」「落ち着いて手を合わせられる場所」を優先して問題ありません。
お寺のお札や掛け軸なども、同じように静かな場所におまつりします。テレビのすぐ横や、物が山積みになった棚の一角などは避け、なるべく落ち着いたコーナーを用意してあげましょう。毎日きっちり祈らなければならないわけではありませんが、朝出かける前や夜寝る前など、思い出したときに短く手を合わせる習慣を持つと、気持ちが整いやすくなります。
お守りは、財布の中や通勤バッグ、車のダッシュボードなど、「日常で自分と一緒に過ごす場所」に入れておくと良いでしょう。肌身離さず持つことで、ふとしたときに目に入り、「あ、山梨で厄払いをしてもらったんだ」と思い出すきっかけになります。年が変わったら、古いお札やお守りは、できれば授かった寺社に返納し、新しいものを受けましょう。遠方で難しいときは、近くの神社やお寺の古札納め所におさめても構いません。その際には、「これまで守ってくださってありがとうございました」と心の中で感謝を伝えることを忘れないようにしたいですね。
第4章 厄払いと一緒に楽しむ山梨の温泉・グルメ・観光
厄払いと相性のよい湯村・石和・下部などの温泉地
山梨は、富士山や南アルプスだけでなく、豊富な温泉にも恵まれた県です。厄払いのあとに温泉で体を温めると、緊張していた心と体がふっとゆるみ、「ああ、来てよかったな」としみじみ感じる瞬間が訪れます。甲府市の湯村温泉は、弘法大師による開湯伝説や、戦国武将・武田信玄の隠し湯という物語を持つ歴史ある温泉地です。文豪たちが逗留した宿も残っており、館内には当時の写真や資料が展示されていることもあります。塩澤寺や武田神社と組み合わせやすく、「厄払い+一泊」の定番コースと言えるでしょう。
笛吹市の石和温泉は、山梨の中でも特に宿泊施設の数が多い巨大な温泉街です。大規模なホテルから、落ち着いた雰囲気の旅館、リーズナブルなビジネスホテルまで、目的や予算に合わせて宿を選びやすいのが魅力です。露天風呂付き客室や、サウナ・岩盤浴・エステなどを備えた施設もあり、「厄払いのついでに、日頃の疲れも徹底的に癒やしたい」という願いをかなえてくれます。甲府や山梨市方面の神社と組み合わせるなら、移動距離もそれほど長くないので、公共交通機関でも十分回れます。
身延エリアと合わせやすい下部温泉は、静かな湯治場の雰囲気が残る温泉地です。川のせせらぎを聞きながら入る露天風呂や、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる浴槽など、「派手さよりも落ち着き」を求める人にはぴったりです。連泊して湯治をする人もいるほどで、体調に不安がある厄年の人にとっては、無理なく体に優しい時間を過ごせる場所といえます。身延山久遠寺で祈りの時間を持ち、下部温泉で一日を締めくくる流れは、心身ともに深く整う組み合わせです。
参拝前後に立ち寄りたいカフェや和菓子・ほうとうの店
厄払いは厳かな儀式ですが、せっかく山梨まで来たなら、食の楽しみもぜひ味わいたいところです。甲府駅周辺には、山梨名物のほうとうを出す店がいくつもあります。味噌ベースの汁に太い麺とたっぷりの野菜が入り、寒い季節には体の芯まで温めてくれる一品です。参拝前に食べると眠くなってしまう人もいるので、どちらかと言えば祈祷を終えてから、ゆっくり噛みしめるように味わうのがおすすめです。
湯村温泉や甲府の中心街には、昔ながらの和菓子屋や老舗の喫茶店も点在しています。厄払いを終えたあと、地元の団子やまんじゅうを買って、宿の部屋や帰りの電車で味わうのもささやかな楽しみです。富士吉田・河口湖エリアには、富士山ビューのカフェや、季節のフルーツを使ったパフェが人気の店など、写真映えするスポットもたくさんあります。友だち同士なら、「どの店に行くか」を決めるところから旅の準備が始まり、計画する時間も含めて楽しくなってきます。
ポイントは、「甘いものやごちそうを“ごほうび”として楽しむ」ことです。厄払いの旅は、何か大きな我慢をするためではなく、「ここまで頑張ってきた自分たちをねぎらう場」と考えると、自然と食の時間も大切にできるようになります。ただし、アルコールを飲む場合は祈祷のあとにし、飲み過ぎに注意しましょう。胃腸に負担をかけすぎると、せっかくの旅なのに体調を崩してしまいます。
甲州ワインやフルーツを楽しむときのマナーと注意点
山梨といえば、ぶどうや桃、さくらんぼなどのフルーツと、甲州ワインを思い浮かべる人も多いはずです。厄払いの旅の中で、これらをどう楽しむかを考えておくと、スケジュールが組みやすくなります。まず、ワイナリー巡りをする場合は、運転と飲酒のルールをきちんと決めておくことが大切です。自分で運転する人は試飲を控えるか、ノンアルコールやジュースを楽しみ、ワインは土産として持ち帰る形にしましょう。グループで行くなら、運転担当と試飲担当を分ける方法もあります。
フルーツ狩りは、家族連れや友だち同士の旅にもおすすめです。ぶどうなら夏〜秋、桃なら初夏〜真夏にかけてが主なシーズンで、農園によっては食べ放題コースや、持ち帰り用のコースを用意しているところもあります。ただし、「元を取ろう」と無理に食べすぎると、その後の移動や温泉が苦しくなってしまいます。「お腹八分目くらいで、いちばんおいしいところでやめる」と心に決めておくと、最後まで気持ちよく旅を続けられます。
ワインやフルーツを家族や友人へのお土産にするのも良いアイデアです。ラベルや箱に、「○○神社で厄払いをしてきた帰りに買いました」と一言メモを添えると、単なる旅行のお土産ではなく、「節目の旅を一緒に分かち合う贈り物」になります。自分用には、厄払いをした日の夜に少しだけ飲むためのワインを一本選び、「この一年も落ち着いて過ごせますように」と願いを込めて乾杯するのも素敵です。
富士山ビュー&夜景スポットで気持ちをリセットする方法
厄払いを終えたあと、「もう少しだけ景色を眺めてから帰りたい」と感じる人も多いでしょう。富士吉田・河口湖エリアなら、湖畔の遊歩道や展望デッキから、富士山と湖の組み合わせを楽しめます。天気が良ければ、夕方には山の輪郭がオレンジ色に染まり、夜になると街の灯りが水面に映る幻想的な景色が広がります。甲府盆地側では、フルーツ公園周辺や、峠道の途中にある展望スペースから、盆地全体の夜景を見下ろすことができます。宝石をばらまいたような光の広がりに、「ここで暮らしている人達も、それぞれの悩みを抱えながら頑張っているんだな」と思いを馳せる人も多いはずです。
こうした景色の前で、おすすめしたいのが「頭の中の整理タイム」です。特別な道具は必要ありません。スマホのメモアプリか、小さなノートを取り出して、「これから一年のうちにやりたいこと」「やめてもいいかもしれない習慣」を、思いつくままに書き出してみてください。「健康診断を先延ばしにしない」「夜更かしを週に一回までにする」「休日にスマホを見ない時間を一時間作る」など、具体的なものほど行動に移しやすくなります。
注意したいのは、夜の山道の運転です。景色がきれいな場所ほど、街灯が少なく、カーブや急な下り坂が多いことがあります。写真を撮りたいときは、安全な駐車スペースに車を止めてからにしましょう。歩いて展望台に行く場合も、懐中電灯やスマホのライトを活用し、足元に気をつけてください。厄払いの旅は、安全に家に帰るところまでが一連の流れだと考え、無理をしない判断を心がけたいものです。
日帰り・一泊二日モデルコース(甲府発/河口湖発)
最後に、旅のイメージをふくらませるために、日帰りと一泊二日のモデルコースを紹介します。あくまで一例なので、自分の体力や興味に合わせて、自由にアレンジしてください。
日帰り(甲府駅発・公共交通機関メイン)
| 時間の目安 | 行動内容 |
|---|---|
| 8:30 | 甲府駅着。駅構内のカフェで軽く朝食 |
| 9:00 | バスで湯村温泉方面へ移動 |
| 9:30 | 塩澤寺に到着。受付をして厄払いの祈祷 |
| 11:00 | 湯村温泉の日帰り入浴施設でひと休み |
| 12:30 | 甲府駅周辺に戻り、ほうとうや鳥もつ煮の昼食 |
| 14:00 | 武田神社を参拝し、境内をゆっくり散策 |
| 16:00 | お土産を購入して、甲府駅から帰路へ |
このコースは、移動距離を抑えつつ「厄払い+温泉+歴史散歩」をぎゅっと詰め込んだ形です。午前中に祈祷を終えてしまうので、午後は時間に追われずに過ごせます。歩く時間はそれほど長くありませんが、階段や坂道もあるので、履き慣れた靴で行くと安心です。
一泊二日(新宿発・河口湖泊)
1日目
・朝 新宿から高速バスで河口湖へ移動
・午前 富士吉田市内の新屋山神社本宮を参拝(混雑を避けるため早めの時間がおすすめ)
・昼 吉田うどんの店で昼食。コシの強い麺でお腹を満たす
・午後 河口湖畔を散策し、富士山ビューのカフェで休憩
・夕方 富士山を望む温泉宿にチェックイン。温泉と夕食でゆっくり過ごす
2日目
・朝 北口本宮冨士浅間神社へ移動し、厄払いのご祈祷を受ける
・昼 富士山を眺めながらランチ。時間に余裕があれば、富士山パノラマロープウェイなどにも立ち寄る
・午後 土産物店でワインやお菓子を選び、湖畔で少しぼんやりする時間を確保
・夕方 高速バスで新宿へ戻る
この一泊二日コースは、初日のうちに金運で知られる神社を訪れ、二日目に本格的な厄払いを受ける流れです。温泉宿でしっかり休むことで、移動の疲れも残りにくく、帰宅後の仕事や学校にも影響が少なくなります。天候に左右されやすいエリアなので、雨の日用のプラン(博物館や屋内施設など)も、頭の片隅に用意しておくと安心です。
第5章 厄払いをきっかけに一年を整える山梨スタイル
厄年の一年を穏やかに過ごすための日常の整え方
山梨で厄払いを受けたからといって、その瞬間から何もかも順調になるわけではありません。それでも、多くの人が「気持ちが軽くなった」「背中を押してもらえた」と感じるのは、祈祷を通して「これから一年を丁寧に過ごそう」と心に決めるからです。厄年を穏やかに乗り切るために、まず意識したいのは日常生活のリズムです。派手な目標を掲げる必要はなく、「よく眠り、よく食べ、少しだけ体を動かす」という基本を整えることが、結果的に大きな安心につながります。
眠りについては、「布団に入る時刻を一定にする」だけでも効果があります。毎日同じ時間に寝ることで体内時計が安定し、朝の目覚めが楽になります。食事は、コンビニや外食が中心でも、汁物や野菜を一品足すだけで、体の調子が変わってきます。運動も、特別なスポーツを始めるのではなく、「エレベーターではなく階段を使う」「一駅分歩く」など、小さな積み重ねで十分です。
厄年は、体だけでなく心の揺れも大きくなりやすいと言われます。仕事や家庭での役割が増え、人間関係で悩む場面も増えがちです。そんなとき、山梨で過ごした時間を思い出し、「あのとき深呼吸をした山の空気を、今ここで吸っている」とイメージしてみてください。目を閉じて数回ゆっくり呼吸をするだけでも、心拍数が落ち着き、感情に飲み込まれにくくなります。厄払いは、単なる儀式ではなく、「慌ただしい日々の中で、一度立ち止まるためのスイッチ」だと捉えると、その後の一年が少しずつ変わっていきます。
お金・健康・仕事を見直すための簡単チェックリスト
厄年を機に、「お金・健康・仕事」の三つを見直しておくと、その後の数年間がぐっと安定しやすくなります。難しい家計簿や専門書は必要ありません。ノート一枚、もしくはスマホのメモに、次のような項目を書き出し、○か△か×で自分なりにチェックしてみましょう。
【お金】
・緊急時に使える貯金が、生活費何か月分くらいあるか
・毎月の固定費(家賃・通信費・サブスクなど)を把握しているか
・クレジットカードや電子マネーの明細を、月に一度は確認しているか
【健康】
・年に一度の健康診断や人間ドックを受けているか
・気になる症状(肩こり、頭痛、眠れないなど)を放置していないか
・アルコールやタバコ、甘い飲み物の量を把握しているか
【仕事・人間関係】
・一人で抱え込みすぎている仕事がないか
・困ったときに相談できる人が少なくとも一人はいるか
・「もう手放してもいいかもしれない」と感じている習慣や付き合いがないか
全部に○をつける必要はありません。△や×がついた項目のうち、「今の自分でも少しなら変えられそう」と感じるものを一つだけ選び、具体的な行動に落とし込んでみましょう。「明細を紙で印刷してマーカーでチェックする」「半年に一度は歯医者に行く」といった小さな一歩で十分です。完璧を目指すより、「去年より少しだけ整った」と感じられれば、それが厄年を意味ある時間に変えることにつながります。
毎月の「ミニ参拝」や散歩を続けるアイデア
山梨までしょっちゅう行くのは難しくても、厄払いで得た感覚を日常の中で思い出すことはできます。その一つが、毎月一度の「ミニ参拝」です。自宅や職場の近くにある神社やお寺で構いません。買い物や通勤のついでにふらっと立ち寄り、鳥居をくぐったら一礼し、手水で手と口を清めてから、静かに手を合わせる時間を持ちます。お願いごとを並べるというより、「今月もなんとかやっています」「また来月もよろしくお願いします」と、報告と感謝を伝えるイメージです。
もし近くに寺社が少なければ、散歩でも構いません。公園や川沿い、住宅街の裏道など、自分なりの「落ち着くルート」を決めておき、月に一度その道を歩きます。そのとき、「山梨で歩いた参道と同じ気持ちで歩いてみよう」と意識してみてください。スマホをポケットにしまい、歩くリズムと呼吸に意識を向けるだけで、頭の中のざわざわが少し静かになっていくのが分かるはずです。
大切なのは、「完璧に続けよう」と思いすぎないことです。忙しい月があってもかまいません。三か月に一度でも、半年に一度でも、思い出したときにふらっと足を運べれば、それで十分意味があります。ミニ参拝や散歩のルールをゆるくしておけばおくほど、「続いている」という小さな自信が積み重なり、厄年が終わったあとも自然と続けられる習慣になります。
ノートやスマホで感謝や気づきを残すコツ
厄年の一年は、不安なニュースや仕事のプレッシャーなど、どうしてもマイナスに目が行きやすい時期かもしれません。だからこそ、「良かったこと」「ありがたかったこと」を意識的に拾い上げる習慣を持つと、心のバランスが取りやすくなります。おすすめは、ノートかスマホのメモアプリを使って、毎日一行だけ「今日のありがとう」を書き残すことです。
例えば、「朝、いつもより少し早く起きられた」「満員電車で席を譲ってもらえた」「仕事で助けてくれた同僚がいた」「家族のご飯がおいしかった」など、本当にささいなことで構いません。最初はなかなか思い浮かばないかもしれませんが、続けているうちに、「あ、これは今日の一行に書けそうだ」と自然に探すようになります。すると、同じ一日でも「嫌なこと」より「良かったこと」に少しずつ意識が向かうようになっていきます。
特に落ち込んだ日や、失敗してしまった日ほど、「今日のありがとう」をひねり出す作業が意味を持ちます。「雨がやんだ」「夕方の空がきれいだった」でも立派な一行です。山梨で撮った写真を見返しながら書くと、「あのときの空気」を思い出しやすくなります。厄払いの旅は一度きりでも、こうした記録を続けることで、その効果は一年中じわじわと広がっていきます。
次に山梨へお参りしたくなるタイミングの考え方
「厄払いは一度行けば終わり?」という疑問を持つ人も多いでしょう。一般的には、前厄・本厄・後厄の三年間、毎年祈祷を受ける人もいれば、本厄の一年だけしっかり受ける人もいます。どちらが正しいというわけではなく、自分の気持ちや、時間・お金の余裕に合わせて選んで構いません。「毎年山梨に行くのは大変だけれど、本厄の年だけは遠出をして、前後の年は地元の神社でお願いしよう」といった組み合わせ方もありです。
厄年以外にも、山梨を再訪したくなるタイミングはいくつかあります。例えば、転職や引っ越し、結婚、出産など、大きな環境の変化がある前後は、「これからの生活がうまく回りますように」と祈りに行く良いきっかけです。また、身近な人との別れを経験したときに、静かなお寺で手を合わせたいと感じることもあるかもしれません。そうしたとき、山梨で過ごした記憶があると、「次もあそこに行こう」と自然に足が向きます。
忙しくて何年も行けない時期があっても、後ろめたく感じる必要はありません。むしろ、「五年に一度」「十年に一度」とざっくり決めておくくらいのほうが、金銭的にも体力的にも無理がなく、行けたときの喜びも大きくなります。大切なのは、「行けなかった年を数える」のではなく、「行けた年の記憶を大事にする」ことです。山梨の山や川、温泉街は、あなたの生活リズムとは関係なく、そこにあり続けます。ふと「また行きたいな」と思えた瞬間こそが、次の旅のベストタイミングなのかもしれません。
まとめ
山梨での厄払いは、単に「悪いものをはらうための儀式」ではなく、自分や家族の節目を静かに祝う時間でもあります。富士山を仰ぐ神社、渓谷の奥にひっそりとたたずむお寺、湯気立ちのぼる温泉街、四季ごとに表情を変える山々と果樹園。そうした風景の中で手を合わせると、日常の忙しさに押し流されていた気持ちが、少しずつ元の場所に戻ってくるように感じられます。
厄年そのものは、決して恐れるべきものではありません。体や環境が変化しやすい時期だからこそ、ペースを落として、自分と周りの人を大切にするきっかけにできます。山梨での厄払いをきっかけに、睡眠や食事、仕事の仕方、お金の使い方、人との付き合い方を少しずつ見直していけば、「厄年だから不安」という気持ちは、「この一年を丁寧に過ごそう」という前向きなエネルギーに変わっていきます。
一度山梨に足を運べば、その景色や空気は、きっと心のどこかに残り続けます。つらいとき、迷ったとき、ふとその記憶を呼び起こし、「またあの山の近くへ行って、深呼吸をしてこよう」と思えたなら、それだけで厄払いの旅は大きな役割を果たしていると言えるでしょう。


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